日本共産党

2004年10月30日(土)「しんぶん赤旗」

和解した野村証券女性差別是正裁判

男女とも働きやすい差別のない職場に

女性に不利な人事制度見直して

元原告代表 棚尾 節子さんの手記


 野村証券で働く13人の女性が会社を相手に訴えた賃金・昇格差別裁判が和解しました。在職者全員(3人)が一般職から総合職に転換し課長代理に昇格します。原告代表を務めた棚尾節子さん(62)=大阪府在住=の手記を紹介します。



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うれしさが、じわじわと…

 十月十五日に和解が成立、十八日に東京で記者会見をしました。十九日には弁護士と原告で、原告団事務局長の重責を担い三月に病気で亡くなった大久保正子さんのお墓参りをしました。大阪に夜遅く戻ってきたら、支援してくださった方々から電話や電報、メールそして花束が。あまりピンときていなかったうれしさが、じわじわとわきあがってきました。

 職場からの声は「おめでとう」が大半ですが、「大変な出来事のはずなのに上司の説明もなく、あなたたちのがんばりが、野村証券に今後反映されるのか」という不安も届いています。男性からは「もっと早く解決すべきだったのでは。野村証券は世界と比べ十年は遅れている」と、今後の会社の変化に期待する声があがっています。

 裁判で野村証券の女性差別が明らかになり社会的な批判が強まるなかで、会社は“人権を尊重し、性別などを理由とする差別を一切しない”ことをうたった倫理規程を制定・公表しました(四月)。裁判官の和解勧告文も、倫理規程にそって働きやすい職場環境を維持発展させることを期待しています。いまこそ会社は、原告だけでなく職場の女性を昇格させ、男女ともに働きやすい職場になるようにすべきだと思います。

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「昇格を」の願いが実現し

 私の入社当時(一九六一年)は組合もありませんでした。証券ブームで残業につぐ残業で、東京ではキーパンチャーがビルから飛び降り自殺し、大阪では組合をつくろうとした友人が会社の執拗(しつよう)ないやがらせにあい、二十歳で命を絶ちました。

写真
野村証券女性差別裁判の画期的和解を喜ぶ原告と支援の人々

 なぜこんなことがおこるのか…。私の人生観をかえた出来事でした。

 こうした犠牲のうえに誕生したのが野村証券労働組合です。その後、管理職が中心になり従業員組合ができ、ほとんどの従業員はその組合に組織されました。労働組合は、会社の徹底した攻撃のなかでも従業員の要求実現めざし奮闘していました。私は従業員組合員でしたが、一九八八年、労働組合に変わりました。

 入社時、女性は結婚したら辞めるという念書を書かされていました。これに対し原告自ら、すさまじい結婚退職強要をはね返し、妊婦服の要求をし、女性にも家賃補助をと、働きやすい職場めざして組合活動をしてきました。女性はなぜ昇格しないのか部長に聞いても、まともに答えてもらえず、会社は団交でも昇格問題には一切応じません。

 やむを得ず一九九三年に裁判に訴えました。日本の裁判が長くかかることは覚悟していましたが、私は定年まであと九年あるのだから在職中に解決できるだろう、と思っていました。

 ところが、すでに私を含め原告十人が定年退職しています。現職で解決できていたらどんなにうれしかったことでしょう。私たちが望んだ総合職課長代理までの昇格要求が全員実現し、管理職への道につながっていけたのですから。また、裁判中に大久保さんが帰らぬ人となったことも、残念でたまりません。

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まだこれからもたたかいは続く

 提訴したとき、「私たちのためにたたかってくれているのだから」と、職場の女性たちは本当に快く、裁判のための休暇を取らせてくれました。

 支援してくれた女性のなかには、“野村にはまだまだ女性に機会均等のチャンスが与えられていない”と希望を失って退職し、弁護士めざし夢を実現した人もいます。均等法が施行され、野村証券もコース別人事制度を導入してきましたが、希望に燃えて入社した彼女たちは総合職でも活用されず、一般職で入って転換制度を受けても転換できず、矛盾を感じて退職した人がずいぶんいます。野村証券のコース別はいまだに一般職は女性だけです。

 日本一といわれた野村証券の男女賃金格差。会社の主張でコース別人事制度による男女差別を問う争いになりました。差別に苦しむ広範な女性たちのたたかいが連動して、コース別は、差別をごまかし女性に不利な結果をもたらす間接差別であるというところまで追い詰めてきています。この制度はもう見直される時期ではないでしょうか。

 まだまだこれからも女性たちのたたかいは続くことでしょう。でもたたかってきてよかったと思える日は必ず来るというのが今の心境です。最後に、私たちの裁判を支援していただきました多くの方々へ、あらためてお礼を申し上げます。



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