日本共産党

2004年10月30日(土)「しんぶん赤旗」

選手会に賠償責任なし

プロ野球スト 山口議員に厚労省


選手会誕生までの足どり

 1980年8月15日 社団法人日本プロ野球選手会の設立が認可される
 83年1月11日 選手会の総会で、ロッテ・高橋博選手の不当解雇撤回のため支援活動を行うこととなり、組合結成の気運も高まる
 同年7月23日 選手会の臨時総会で組合結成の方針を決定。事務局で規約立案をすることに
 84年7月21日 臨時総会で規約承認。とりあえず法外組合として発足
 85年7月20日 組合大会で、東京都地方労働委員会に組合資格審査請求を行い、正式の組合とすることを決定
 同年9月30日 都労委に組合資格審査請求を提出
 同年11月5日 都労委が選手会を労働組合として認定

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質問する山口富男議員=29日、衆院厚生労働委

 労働組合・日本プロ野球選手会が9月に実施したストライキに対し、経営者側が「損害賠償を請求する」などと発言していることについて、日本共産党の山口富男議員は29日、その不当性を衆院厚生労働委員会で追及しました。厚生労働省は、「ストライキについては(労働組合に)民事上の責任が免責されている」と答弁し、選手会に損害賠償の責任が生じないことを明言しました。

 山口議員がストの賠償責任について「憲法に保障された権利に基づく労働組合の正当な行動に損害賠償を請求することなどできない」と迫ったのに対し、厚労省の太田俊明政策統括官は「労働組合法八条で民事上の責任は免責されている」と答弁しました。

経営者発言「適当でない」 厚労省

 この問題に先立ち、山口議員は選手会が労働組合として認定されていることを政府に認めさせた上で質問を展開。今年7月、選手会の古田敦也会長がオーナー側との話し合いを求めたと記者に問われた際に、巨人・渡辺恒雄オーナー(当時)が「たかが選手」「オーナー側と対等に話をするなんて協約上、根拠は一つもない」と発言したことを取り上げ、「労働者が使用者との交渉において対等の立場にたつことを促進する」と定める労働組合法一条に反する、と迫りました。

 これにたいし、太田政策統括官は「労働組合法に照らして適当でない」と認め、尾辻秀久厚生労働相も「労使が対等に話し合うという基本精神に照らして、ふさわしい発言ではなかった」と述べました。

 山口議員は「(球団の)オーナーは名だたる大企業だ。しかも『企業の社会的責任』や『法令順守義務』などを論議しているなかで暴言が繰り返されるのは重大だ。厳しく指導すべきだ」と強調しました。

 ストライキに関する損害賠償については、現在も球団経営側は「今後、検討する」との姿勢を崩していません。

たかが選手が/労組か疑問だ

経営者側の発言録

 7月8日 古田敦也・選手会長がオーナー側と直接話し合いを求めたという記者の質問に対して「分をわきまえなきゃいかん。たかが選手が。オーナーと対等に話をするなんて協約上の根拠は一つもない」(渡辺恒雄・巨人オーナー=当時)
 7月12日 「(年俸)1000万円を超える選手に労働者性があるのか。歌手も役者もみな個人事業主。野球の選手会の任意団体が労働組合なのか疑義を感じる」(峰岸進・横浜球団社長)

 8月12日 「実行委員会は選手会を労働組合とは認知していない。ストが決行されれば、興行の実害が生じる。それに対する損害賠償の要求をすべき、との声が12球団の幹部からも届けられている」(伊藤修・実行委員会選手会担当顧問)
 9月8日 「雇用を維持するということをいちばん最初に決めました。それについて選手会が統合を反対するというのは労働組合としては非常に不思議なストライキだなと。何を要求するのか」(宮内義彦・オリックスオーナー)
 9月17日 「選手会が労働組合であったとしても、球団統合および球団の新規参入自体は経営事項であり、義務的団体交渉事項ではなく、これを理由にストライキを行うというのは、違法かつ極めて不当なものであるとも考えております」(選手会のストライキにあたって発表した日本プロ野球組織=NPB=文書)



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性急な球団合併に立ち上がった選手会のたたかいをファンも球場の内外で後押ししました

たたかう選手会

 選手会は02年3月、選手会と十分な話し合いをせずに、決定していくNPB側の姿勢を不誠実だとし、東京都地方労働委員会に労働組合法に基づく不当労働行為救済の申し立てを行いました。結局、今年3月に選手会が労働者であることを前提とした「団体交渉のルール」をつくることで合意し、和解しました。

 オリックスと近鉄の球団合併問題をめぐっては選手会がNPBとの団体交渉権の確認を求めた仮処分申請を東京高裁に提出。東京高裁は9月8日、NPBに対し「団体交渉で誠実交渉義務を尽くさねば不当労働行為にもなる」との見解を示しましたが、仮処分は棄却されました。

 選手会は9月18日、19日の2日間にわたりストライキを決行しました。



日本共産党の国会質問

78年に“労働者”と政府認める

 1978年3月2日の参議院法務委員会で、日本共産党の内藤功議員は「プロ野球選手は労働者である」ことを政府側に認めさせました。当時、ドラフト制度が人権の面から大きな社会問題に。内藤議員は、プロ野球選手の権利を守る立場から選手を「労働者として扱うのか」という問題を提起しました。

 内藤議員は憲法や労働組合法、労働基準法を引用し、労働者の要素を(1)自分の労働力を提供する(2)使用者の使用従属下、指揮命令下に入る(3)その労働力の対償として収入を得る―の3点をあげました。また、プロ野球選手と似た立場にある放送会社の管弦楽団員が、組合をつくり労働条件で交渉してもいいという最高裁判決(76年)も示し、見解を求めました。

 政府側はこれを事実上認め、プロ野球選手は労働者であることが初めて公的に認知されました。

 2000年11月8日、衆院労働委員会で日本共産党の大森猛議員が、巨人の渡辺恒雄オーナーが「代理人を連れてきたら給料カット」などと発言した問題を取り上げ、「不当労働行為ではないか」とただしました。これに対して、労政局長は労働協約が結ばれていないので不当労働行為とはいえないとしながらも、「契約については当事者に履行義務が生じる。穏当ではない」と渡辺発言を批判。吉川芳男労相も「合意は当事者において誠実に実行されるべきだ」と答えました。





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