2004年10月30日(土)「しんぶん赤旗」
未来書房らが、北朝鮮問題を利用して日本共産党を誹謗(ひぼう)中傷する書籍を発行し、電車内への中づり広告を掲出したことに対し、日本共産党が未来書房、著者の稲山三夫こと柳原滋雄氏、JR東日本らを名誉棄損と著作権侵害で訴えていた「謀略本裁判」(東京地裁民事第47部・高部眞規子裁判長)は二十九日、裁判所の勧告をうけ、日本共産党と未来書房、著者らとの間で裁判上の和解が成立しました。
和解の内容は、未来書房、同代表取締役・海野安雄氏、著者が、「本件書籍における北朝鮮帰国事業及び北朝鮮による拉致事件に関する表現の一部に誤解を招くおそれがあったことにつき遺憾の意を表する」と明記したものです。
また被告らは、「本件書籍の巻末に資料集」として日本共産党の諸文献を「原告の許諾なく使用した」ことに「遺憾の意を表し、今後、本件書籍を印刷、製本、販売、又は頒布しない」と確認しました。
中づり広告を掲出したJR東日本とジェイアール東日本企画は、和解には参加しませんでしたが、同日の法廷で、「広告業務委託契約書」を守ると発言しました。同契約書は「特定の政治活動のためにするもの」「特定の個人又は団体等を誹謗し、名誉又は信用を傷つけるもの」などの広告を掲出してはならないとの条項があります。
日本共産党が訴えていた問題の書籍は『拉致被害者と日本人妻を返せ―北朝鮮問題と日本共産党の罪』(稲山三夫著)と題し、二〇〇二年末に未来書房から発行されたものです。
いっせい地方選挙をまえに、公明党・創価学会の北朝鮮問題での反共攻撃と符節をあわせ、創価学会ライターグループの柳原滋雄氏、海野安雄氏などが関与し、創価学会の出版・流通ルートに乗せて発行、発売、宣伝されました。二〇〇三年二月には、東京・首都圏のJR電車などにこの書籍の宣伝を名目に、日本共産党を誹謗(ひぼう)中傷する中づり広告がいっせいに掲出されました。
日本共産党は同年三月、東京地裁に提訴、被告らに対し、党の名誉を棄損した書籍の印刷、製本、発売、頒布の禁止、書店からの回収・廃棄、名誉棄損と著作権侵害について謝罪した中づり広告、新聞広告の掲出、損害賠償金の支払いなどを求めていました。
和解内容は、前文で日本共産党が、「同書籍が北朝鮮帰国事業や北朝鮮による拉致事件に関し、日本共産党の社会的評価を著しく低下させ、党の名誉を毀損し、あわせて著作権を侵害するものであると主張した」のにたいし、被告は「正当な論評で、著作権も侵害していない」と裁判の争点を示したうえで、被告側のみが争点のいずれについても遺憾の意を表明し、書籍の販売等をストップするということを明確に記しています。
このことは被告側が謀略本の不法性を認めざるをえなくなったことを明白に示したものです。JR東日本などは、和解には直接参加しないという態度をとりましたが、日本共産党を誹謗中傷した中づり広告を掲出したことに関連し、「広告業務委託契約書」を守ることを明言し、事実上、中づり広告の掲出が不適切だったことを認めるものとなっています。このように、謀略本裁判では日本共産党の主張が基本的に認められる結果となり、勝利をおさめました。