2004年10月29日(金)「しんぶん赤旗」
国際労働機関(ILO、本部ジュネーブ)がこのほど公表した報告書によると、労働者のうち週五十時間以上働く人の比率は、英国を除く西欧諸国で10%以下であるのに対し、米国、オーストラリア、ニュージーランドと日本で20%を超えていることが明らかになりました。日本では28・1%で、調査対象になった工業国の中で最高でした。
ILOの「労働雇用条件計画」というプロジェクトでまとめた報告書『工業諸国での労働時間と労働者の選択―均衡を求めて』によると、一九九〇年代末の時点で米国とオーストラリアでは週五十時間以上働く労働者の比率は20%にまで増加しています。調査対象となった国の間で、この比率が両国を上回るのは日本とニュージーランド(21・3%)だけでした。
これに対して欧州連合(EU)諸国ではこの比率は低く、オランダではわずか1・4%、ギリシャ、アイルランドでは6・2%。英国だけが群を抜いて15・5%でした。
また報告書は、労働者が実際に労働している時間と働きたいと望んでいる時間の間に大きな格差があることを指摘しています。それによると、EU諸国では週二十時間以下しか労働しないパートタイム労働者の46%が労働時間延長を望んでいますが、五十時間以上働く労働者の81%は労働時間の短縮を望んでいます。
報告書は、米国、英国、オーストラリアなど法的な労働時間規制が貧弱な諸国で長時間労働の事例が多いことを指摘。また、パートタイム労働で十分な時間働くことが困難な労働者が増え、その中にはフルタイムの雇用を望みながらパートタイムを余儀なくされ、健康保険や年金などがない劣悪な条件で働く労働者がいると分析しています。
報告はさらに、均衡のとれた労働時間政策には五つの要素が必要だとして、(1)保健・安全措置の強化(2)労働者が家庭の責務を果たすことができるよう援助する(3)男女格差の是正(4)労働生産性の向上(5)労働時間決定に際する労働者の選択・決定権の拡大―をあげています。
ILOは同報告書発表にあたって、今年十一月から同機関のウェブサイト上で、世界の百以上の国々での労働時間法制にかんする包括的な情報を提供するデータベースを公開することを明らかにしました。