2004年10月23日(土)「しんぶん赤旗」
西武鉄道(埼玉県所沢市)が親会社で大株主のコクド(所沢市)などの持ち株比率を有価証券報告書に虚偽記載していた問題は、インサイダー取引疑惑も発覚、西武鉄道グループの中枢を直撃しています。堤義明氏の役職辞任程度で、ことは済みそうもありません。
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西武鉄道が今年六月末に関東財務局に提出した有価証券報告書(二〇〇四年三月期)によると、上位十社の持ち株比率は63・68%と記載されていますが、実際は88・57%でした。筆頭株主のコクドは64・83%なのに、43・16%、プリンスホテルは4・2%なのに、0・98%と虚偽の記載をしていました。実質的にコクドが保有する九千四百万株を千百人の個人名義にしていたことが総会屋事件後の総点検でわかったというのです。
コクドは十三日、三百ページ近い訂正報告書や変更報告書を関東財務局に提出、大量保有報告書を訂正するとともに、同社の堤義明会長が記者会見し、グループ企業のすべての役職を退くと発表しました。
東京証券取引所はこの問題で「上場廃止基準にある虚偽記載に当たる」として、西武鉄道の上場廃止審査を始めました。
証券取引等監視委員会も西武鉄道やコクドの関係者が証券取引法に違反した可能性があるとして調査に乗り出しました。
国土交通省も西武鉄道から、鉄道事業法に基づき経緯や事実関係を調査する方針です。
東京証券取引所の規則では、十位までの大株主と役員らの持ち株をあわせた比率が80%を超えると上場廃止になります。
堤氏は記者会見で、「株式実務や法の手続きには疎く、ノータッチで参りました」と逃げました。しかし、堤氏が非上場会社コクドの株の四割を所有し、百社近い西武鉄道グループを「株支配」してきたのは周知の事実であり、「株に疎い」はずはありません。
コクドは虚偽記載公表直前の八月十七日―九月二十九日にかけ一株千百円から千二百六十円で七千万株という大量の株を売却していました。
十三日の虚偽記載公表後、株価は急落。二十日には五百四十八円と半値にまで下がりました。
コクドから株購入を持ちかけられ、株を購入したサントリーやキリンビール、サッポロビールなど十数社のほとんどは、虚偽記載問題を知らされずに購入しています。「インサイダー取引」の可能性が濃厚です。ばばぬきのばばを引かされた企業が損害賠償請求する動きもあります。
購入企業のうち、サントリーは堤氏に九月上旬に直接依頼され、九月末に二百六十万株を三十億円弱で買ったといいます。
堤氏といえば、ゴルフ場やスキー場の開発で知られ、バブル真っ最中の一九八〇年代後半、米経済誌で三年連続世界の長者番付の一位にランキングされました。その一方、支配下にある西武鉄道グループの中核企業・国土計画(現コクド)が六百六十億円もの営業収益を上げながら、銀行金利と相殺、法人税・地方税を八百万円程度しか払っていないことが報道されたこともあります。
政界とのパイプも太く、中曽根後継をめぐる自民党総裁争いで「中曽根首相の意向は宮沢指名」説を流し、竹下派をあわてさせたり、八八年三月に設立された竹下首相(当時)を囲む財界人の会である「清水会」の世話人でした。
赤坂プリンスホテル内に、先代の堤康次郎氏(元衆院議長)以来の因縁か、旧福田派(現清和政策研究会)の派閥事務所をずっと置いているのは有名です。
橋本伸記者