日本共産党

2004年10月23日(土)「しんぶん赤旗」

米国が欧州で続ける核配備 

貯蔵庫 13カ所に215基

米情報誌報告


地図

 米核兵器問題情報誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』十一・十二月号に掲載された米シンクタンク「天然資源防衛評議会」(NRDC)の報告「NRDCニュークリア・ノートブック 欧州における米国の核兵器 一九五四―二〇〇四」は次の二つのことを明らかにしています。

 第一は、ソ連崩壊後、外国の国土に核兵器を置く唯一の核保有国となった米国がいまなお欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国六カ国の八基地に約四百八十発の核爆弾を配備・蓄積していることです。同報告によると、欧州に現在蓄積されている核爆弾はB61―3、B61―4、B61―10の三つのタイプのものとされます。

 第二には、欧州七カ国の十三カ所の海外軍事基地に総計二百十五基の核爆弾貯蔵庫が九八年までに建設され、八百六十発の核爆弾を貯蔵・管理できる態勢、「兵器貯蔵安全システム」(WS3)を整えていることです。

核爆弾4発貯蔵できる

 WS3はB61型爆弾を航空機格納庫の床の下に地下貯蔵庫をつくり、常時貯蔵またはいつでも持ち込み保管できるようにしておくという仕組み。各貯蔵庫にはそれぞれ四発の核爆弾を貯蔵できます。

 同報告によると、九五年以降にドイツの一基地は閉鎖され、他の四つの基地からは核兵器は撤去されましたが、貯蔵庫そのものは保持しています。

 米国の欧州核配備は五四年に英国の基地に投下型核爆弾を配備したのに始まり、六〇年代には西ドイツ(当時)、イタリア、フランス(その後、NATO軍事機構から脱退)、トルコ、オランダ、ギリシャ、ベルギーにも配備されました。配備総数は七一年には最大の約七千三百発に達しました。その後、パーシングIIなど中距離ミサイルの撤去などを経て、クリントン大統領時代の九四年に現在の水準まで削減されました。

 報告は、クリントン大統領が二〇〇〇年十一月に欧州に四百八十発の核爆弾を残すという大統領令NSC―74に署名したとし、ブッシュ政権下でも、この水準は変わっていないと述べています。

核兵器撤去求める動き

表

 ソ連崩壊後に欧州で軍事同盟不要論とともに核兵器撤去を求める動きが浮上してきていますが、米国は世界全体の核戦略態勢維持政策の中で欧州での配備を続けています。同報告は、こうした米核兵器の欧州諸国への配備について、「欧州諸国はこれまでNATO共通防衛に核兵器の自国内配備を認めることを含む『負担分担』で貢献してきた」と指摘しています。

 米軍準機関紙スターズ・アンド・ストライプス欧州版八月三十日付は、ドイツ・シュツットガルトにある米軍欧州司令部(EUCOM)スポークスマンの発言として、「NATOは核兵器を“欧州と北米の同盟国間の不可欠な政治的軍事的連結器”と考えている」と強調。また同紙ではリック・ハウプト米海軍少佐が「NATO同盟は適切な核戦力を欧州に維持する」と述べています。核戦略体制、核戦力保持をNATOの存続条件にしようという立場です。

加盟国の考え方変化

 その一方で、同報告は、フランスのNATO軍事機構離脱、七〇、八〇年代の中距離ミサイル欧州配備をめぐる反対世論の高揚、ソ連崩壊に続く国際情勢の中で、こうした「負担分担」についての加盟国の考え方に変化が起きていることに触れています。

 米国は〇一年春にギリシャのアラクソス空軍基地からB61型核爆弾二十発を撤去し、四十年以上にわたる同国における核兵器配備に終止符を打ちました。同報告は、ギリシャが「核兵器の義務を放棄した」理由は不明だとしながらも、「核兵器貯蔵に資金を使いつづけることが東からの明確な脅威がない状態では失費に値しないと判断したのだろう」「他の同盟国がこれに続く可能性がある」と述べています。

 同報告はまた、配備された核兵器を基地提供国が使用する態勢が確立していることも指摘しています。

 ドイツ平和協会・戦争抵抗者同盟のギド・グルネバルト氏は「ドイツのフィッシャー外相は就任の年の九八年にNATOの会議で先制核使用政策を放棄すると発言したが、核兵器に反対する政策をとっていない。そればかりか、南部のビュッヘル空軍基地ではドイツ空軍が米国の核爆弾を使用する訓練を行っている」と、欧州からの核兵器撤去、核兵器廃絶のたたかいの重要性を強調しています。国際情勢の変化とともに反核運動が欧州における米国の核戦略にも影響を与えることがこの間の経過は示しています。

日本である可能性も

 報告は、WS3システムの貯蔵庫について、「八六年に韓国を含む九カ国の二十六カ所の基地に千七百四十八発の核爆弾を貯蔵できる四百三十七基が計画された」としています。欧州七カ国を除く残りの一カ国については同報告は国名をあげていません。それが日本である可能性も排除できません。

 このWS3システムは、核爆弾を常時保有せず、いつでも再配備する(持ち込む)態勢を地球規模で維持していることを示すものです。このことは全世界的規模での核兵器廃絶をめざす運動の重要性を浮き彫りにしています。

 夏目雅至記者


カット

 B61核爆弾 米軍が現有する戦術核爆弾。爆発威力はTNT火薬換算〇・三キロトンから五百キロトンといわれます。一九九六年に配備が始まった最新型のB61―11は、強固な地下目標の攻撃に使用する地下貫通核爆弾です。



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