2004年10月22日(金)「しんぶん赤旗」
えさ不足のクマにドングリを贈ろう―。自然保護団体「日本熊森協会」(兵庫県西宮市、森山まり子会長)の呼び掛けが、思わぬ波紋を呼んでいます。全国から四トンもの善意のドングリが集まった半面、ほかの地域産のドングリを山中に置いてくることについて、研究者から「生態系を乱す」「自然に干渉しすぎ」との批判も寄せられました。
同会は、クマのエサが不足している北陸の山に都会のドングリを贈り、クマの保護にもつなげようと、全国に呼び掛け。
これまでに約五百人から、段ボール箱などに詰められたドングリが寄せられました。同会の電話はひっきりなしに鳴り、ドングリが事務所に入り切らない状況で、同会は募集をいったん中止しました。
研究者からの批判にたいして同会は「ドングリをゆでたり水に漬けるなどして、発芽や虫を防ぐ。集まったドングリは予定通り山に運びたい」としています。
全国から集めたドングリを山中に置いてくる試みにたいしては、専門家から、クマ対策としては効果が少なく、生態系を乱す可能性があるとして、批判的な意見が出されています。
その理由としてあげられているのは、(1)ドングリをまいても、クマが食べるのはごくわずかで、大半はネズミなどの小型動物のえさになり、その地域のネズミが急増する恐れがある(2)他地域からドングリを持ち込むことによって、ドングリの病害虫などが持ち込まれたり、その地域のドングリの遺伝的独自性が失われる―など。
神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏主任研究員は「全国のドングリが芽を出して交雑すると、生態系が乱れる。実についている虫や菌が入り込む可能性も」と批判。
福井大教育学部の保科英人助教授も「クマは人が飼っているのではない。えさをやるのは干渉しすぎ。ドングリがクマの腹に入らずネズミなどのえさになり、農業被害が出る危険もある」と指摘しています。