2004年10月20日(水)「しんぶん赤旗」
トレーラーのエンジン不具合を指摘された三菱ふそう(昨年一月、三菱自動車より分社)が昨年六月、実際にはサンプリング調査を実施しなかったのにもかかわらず、国土交通省に対して「調査したが不具合はなかった」などと報告していたことが十九日、関係者の証言で分かりました。
同日、横浜地裁で開かれた、タイヤ脱落母子死傷事故損害賠償訴訟(増田陽子原告)の口頭弁論で、この事実を指摘する準備書面が提出されました。
同省幹部は「調査が実際されていなければ、道義的に非常に悪質だ」と話している。
関係者によると、静岡県の運送会社所有大型トレーラーが二○○一年八月二十二日未明、同県道で一時停止した後、突然エンジンが動かなくなりました。販売会社は運送会社に「エンジン部品『スラストメタル』の表裏が逆に組み立てられ焼きついた」と原因を説明したといいます。
しかし、三菱側が運送会社に何の連絡もなく事故車のエンジンを新しいエンジンに交換したためトラブルとなりました。
三菱側は○一年十一月「同様の誤組み立てがなかったどうかを調べたい」として、同省にサンプリング調査を申請し許可されました。
作年六月、三菱側は「十台をサンプリングし八台のエンジンを調べたが誤組み立てはなかった」と結果を同省に報告しました。
しかし、運送会社が情報公開請求で同省からこの報告書を入手。同社が兵庫や福島県などでサンプリング対象の車を調べたところ、三菱の調査を受けた車は一台もなかったといいます。
準備書面は、国土交通省についても、報告書記載のサンプリング対象十名に確認をとれば、たやすく虚偽報告を見抜けたのに「確認作業を何もしなかった」とメーカーいいなりの姿勢を批判しています。
三菱ふそう広報部は「販売会社では実施したとの報告がある。最終的な確認をしている」とコメントしました。
十九日午後零時二十五分ごろ、静岡県浜松市和地町の東名高速で、同県焼津市五ケ堀之内、トラック運転手良知伸明さん(31)の三菱自動車(三菱ふそうトラック・バスに分社)製大型トラックのプロペラシャフトが脱落。後続の軽自動車が乗り上げ、左前輪が破裂しました。けが人はいませんでした。県警高速道路交通警察隊が原因を調べています。
調べによると、トラックは二○○一年式の「スーパーグレード」。良知さんによると、走行不能になったため、路肩に停車したといいます。
三菱ふそうによると、脱落したプロペラシャフトは動力をエンジンから後輪に伝える部品。同社は同車種のプロペラシャフトに欠陥があるとして七日、リコールを届け出て部品の修理や交換を始めていました。