日本共産党

2004年10月20日(水)「しんぶん赤旗」

平等へのかけ橋できた

野村証券 男女差別裁判和解後の初出勤

職場の女性が「おめでとう」


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和解を喜ぶ野村証券女性差別裁判原告の女性たち=18日、東京

 「すっごいですねー。おめでとうございます」。細縁の眼鏡をかけた若い女性社員が、目をまん丸にして言います。十三人の女性が野村証券の男女差別是正を求めた裁判で、現職三人の昇格を認める和解が成立しました。原告団が記者会見した翌十九日、名古屋駅前支店前では、昇格が決まった堀好子さん(58)と玉置好子さん(58)に、「ニュース見たよ」「お疲れさま」と、女性社員が声をかけました。

 玉置さんは前日夜の報告集会で、こう語りました。「平等へのかけ橋ができた。この橋を、同僚の女性たちと手をつないで渡っていきたい」

 二人はそぼ降る雨のなか、午前八時前から支店前に立ちました。「男女差別の不透明な仕組みをなくせ」と書かれた新聞を手に、「和解しました。課長代理になります」と同僚に声をかけます。

 「ニュース見ました」と声をかけた女性は、「長かったですね。よくがんばられましたね」と、何度も頭を下げます。

 「本当? 良かったねー」と足を止めたのは、午後八時すぎまで残業することも珍しくないという女性。「総合職の男性とそんなに給料の差があるなんて、知らんかった。野村の壁に風穴を開けたんやね。穴を広げないとね」といいます。

 堀さんのもとには、別の支店で働く社員から、「和解成立おめでとうございます。女性の地位向上に道ができましたね」とメールが届きました。

結婚女性は退職迫られる

 裁判に踏み切ったのは十一年前の一九九三年。その前には、労働組合として十九年にわたり、男女差別の是正を求めてきました。野村証券には、女性が結婚、出産し、働き続けること自体、前例がありませんでした。

 原告の多くが結婚した一九六〇―七〇年代には、結婚届には「妻」の名前を書く欄しかなく、「夫」と書き換えて提出しました。男性社員が結婚すると社内広報に載るのに、女性の名は載ることはありませんでした。

 支店で初めて結婚した竹市香代子さん(60)は連日、課長に呼び出されて退職を迫られました。産休中のボーナスカット、育児時間の賃金カットに耐え、働いてきました。

 がんとたたかう小西京子さん(59)は、人手が足りず、退職者の補充もされない職場で、退院直後から残業を強いられました。夫と相談の末、「この裁判が解決するまで、会社を辞めずに生きてがんばろう」と決意し、今度の和解で課長代理に昇格が決まりました。

「人生楽しかった」いい残し

 和解にいたるまでの活動は、「年齢を顧みず、本当によくがんばった」(原告代表・棚尾節子さん=六十二歳)というほどでした。今年に入ってから、全国各地で配布したビラは六十万枚を超えます。午前七時から支店前に立ち、悪天候で配布しきれなかったビラを、近所に配布したこともありました。

 沖和子さん(63)は、旅行先でも必ず支店に足を運び、夫とともにビラを配りました。雪の降る青森では、退社する社員を待って何時間も立ちました。

娘の花束

 十八日の記者会見後に開いた報告集会。原告代表の棚尾さんは、「お礼を言いたい人がたくさんいるんです」と語り、職場の仲間、弁護団、傍聴にきてくれた学生たち…と、次々に名前をあげました。続いて「自分たちのことも、ほめてあげたいと思います」との言葉に、だれもが惜しみない拍手を送りました。

 花束を持って駆けつけたのは、沖さんの娘の尚子さん(28)です。「働き出してから差別も感じ、それとたたかってきた母のすごさを理解しました。私も、子どもを産んで、働き続けたい。母には、『力の限り、衰えることなく、より良い社会のために一緒にがんばりましょう』と伝えたい」。笑顔が輝きました。

働く喜び

 原告が口をそろえて、「一緒に和解を迎えたかった」という人がいます。原告団の事務局長として仲間を励まし続け、今年三月に亡くなった大久保正子さんです。記者は、二〇〇二年の東京地裁判決前に取材しました。

 職場の信頼が厚く、退職するときには、有志で開いた送別会には、同僚のほとんどが出席したといいます。異例でした。

 当時の取材メモには、こんな言葉が残っています。「悲壮感だけじゃない。働くことは楽しかったし、仲間とはね返してきたことは、本当に良かった。人生を総括したら、楽しかったなぁ、やってきて良かったなぁと言えるんじゃないかな」

 丸山聡子記者


野村証券女性差別争議和解

 野村証券で働く十三人の女性が、男性を「総合職」、女性を「一般職」とするコース別人事制度による賃金・昇格差別の是正を求めていた裁判は、東京高裁で和解が成立しました(十五日)。

 会社側は原告のうち現職三人全員を総合職の課長代理に昇格させ、原告全員に一括して解決金を支払うという、二〇〇二年二月の一審判決を大きく上回る内容です。原告の女性たちが十八日に東京都内で記者会見し、発表しました。

 同様のコース別人事制度を採用している多くの大企業に根本的な転換を迫るものです。



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