2004年10月18日(月)「しんぶん赤旗」
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今年三月の別海町定例議会で、保守系議員が「矢臼別演習場が在沖縄米軍移転の候補地に名を連ねている」として佐野力三町長の見解をただしました。町長は、「正式協議の段階ではないので見解を述べるのは控える」と応じました。
六月に朝日新聞が「米国、在沖縄米海兵隊の矢臼別移転案を日本政府に打診」と報道し、にわかに移転問題が現実味を帯びました。
北海道にある陸上自衛隊矢臼別演習場は日本最大の演習場です。演習場のある根釧原野は、大草原と森と湿原からなり、日本を代表する牛乳生産基地、一大酪農地帯です。世界自然遺産登録に向け動いている知床半島も近くにあり、北海道が誇る大自然がそこにあります。そんな所に米軍はいりません。
矢臼別平和委員会や日本共産党別海町議団はただちに町長に申し入れをし、町議会一般質問でもとりあげ、町民の安全と地域の基幹産業である酪農・漁業発展のため、移転反対の態度を表明すべきだと迫りました。
ところが町長は「正式な話はない。仮定の話に見解を述べることはできない」との発言をくりかえしました。同じく矢臼別演習場をかかえる浜中町や厚岸町の町長が明確に反対の態度表明をしているのとは異質な態度をとり続けました。さらに「私は国の国防政策に一度も反対したことはないし、これからもない」と言い放っています。
海兵隊の矢臼別移転問題は、夏の米海兵隊実弾射撃訓練をへて、九月以降新たな展開を見せています。
米陸軍心理戦部隊の日本アナリスト、ジェフ・クリント・ヒルと名乗る米国人男性が九月九日、演習場周辺の農家を訪問し、「沖縄海兵隊の移転駐留について調査している。海兵隊が矢臼別演習場に毎年来ているが何か問題はあったか」などと聞き回っていたことがわかりました。明らかな海兵隊駐留に対する意識調査です。しかも米軍自身の手によってそれが行われたわけです。
八月下旬、米軍再編強化についての日米局長級会談が行われ、そして、十月一日には小泉首相が沖縄米軍基地の「本土移転」を明言しました。矢臼別を含めた移転・駐留の構想も一気に具体化する可能性が出てきたと私たちは受け止めています。
米軍再編強化に伴うこうした動きは、地球的規模での日米の軍事行動を迅速に行うために、米軍と自衛隊の基地共有、演習と運用の一体化を進めることを意味します。
そういう意図があっても、基地や演習場誘致にこれまで使われてきた口実は「経済的にうるおう」ということです。しかし、沖縄の実情はその逆をはっきり示しています。現に別海町においても、米海兵隊砲撃訓練が始まったとたん、演習場周辺の農家はどんどん離農し、地域の経済に何の利益ももたらさないばかりか崩壊の手助けをしているのが実態です。
「沖縄米海兵隊は矢臼別に来るのではなく、本国に帰るべきだ!」。この運動を全国の皆さんと連帯して進める決意を表明して、現地からの報告とします。
中村忠士・日本共産党別海町議(矢臼別平和委員会副会長)
海兵隊移転反対別海町連絡会ホームページ http://www.aurens.or.jp/hp/kaihei/kaihei.htm
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東富士演習場の地元二市一町(御殿場市、裾野市、小山町)と地権者団体・東富士演習場地域農民再建連盟(約四千六百人)、静岡県は“受け入れ拒否”で結束しています。三者は七月、国に対して“断固拒否の姿勢を堅持せよ”と要請。御殿場市議会は十四日、国に移転を受け入れるなの決議を全会一致で可決しました。
民公有地が全体の六割を占める東富士演習場。二市一町と再建連盟は一九五九年以来、県を仲立ちにして国側と使用協定を八次にわたり締結、国側が「キャンプ富士全面返還に最大限努力し日米共同演習場化しない」ことを確認してきました。こうした経緯から、地元は、使用協定そのものをゆるがす沖縄米海兵隊の東富士への一部移転に反対しています。
御殿場市議会の議会運営委員会で決議を提案した横山竹利市議(無所属)は、「104訓練の受け入れ(沖縄県道104号線越え実弾砲撃演習の分散実施)は、沖縄の痛み分けとして応じたが今回だけは阻止したい。私の地元はキャンプ富士周辺の玉穂地区で、治安や防犯面での強い要望もあり、市民代表の議会としての意思を明確に示したかった。私たちの願いは、治外法権にある土地を陸上自衛隊の管理下におくこと。ここは共産党とは違う所ですがね」。
勝間田祐一再建連盟幹事長は、「米軍の規模が今以上に大きくなれば、宜野湾市でのヘリコプター墜落のような事件が起きたとき、国内法が及ばなくなる危険性があります。日本の領土では日本の法律、憲法が適用されなければならないと考えています」。
御殿場の長田開蔵市長(再建連盟委員長)は九月議会で、日本共産党の高木理文市議の質問に対し「返還が終わらなければ私たちにとって戦後は終わらない」と答弁し、国に対しキャンプ富士全面返還を求めていく立場を表明しました。
日本共産党も参加する「米軍は東富士に来るな!出ていけ!静岡県民の会」は、移転反対の世論づくりを急ぐことにしています。
東富士演習場使用協定 防衛庁と再建連盟との間に締結され、地権者を当事者とする「権利協定」と市町自治体を当事者とする「行政協定」によって成立。東富士四原則(1)キャンプ富士全面返還(2)東富士演習場地域の民有諸権利の保全(3)演習場関係住民の生活安定―などが柱。
「沖縄米海兵隊のキャンプ富士(静岡)移駐を許すな」の声は、山梨県でもあがっています。
山梨県の北富士演習場とキャンプ富士のある東富士演習場は隣接しています。「米軍演習の北富士移転に反対する山梨の会」の常任世話人の岡猛氏(79)は「移駐は、北富士演習場使用協定が禁じた、北富士の日米共同演習場化につながります。米兵による犯罪など、山梨県民への影響は大きい」と強調します。
「山梨の会」は十月八日に、県と北富士演習場対策協議会(演対協)に、移駐に反対するよう要請しました。
山本栄彦知事は十四日の会見で「すでに米軍演習を受け入れており、今以上の負担はできない。基地を抱える自治体と連携し、国に情報提供を求める」と語りました。
北富士演習場では、イラクに派兵された自衛隊が襲撃を受けたことを想定した交戦訓練をおこなうために、サマワ宿営地の模擬施設が五月につくられ、すでに二回、訓練が強行されました。
県平和委員会の小林正巳代表理事は「アメリカの先制攻撃・侵略戦争に自衛隊が協力することを許さないため、静岡のみなさんとも力を合わせ、移駐反対運動をすすめたい」と話しています。山梨県 清水英知記者