2004年10月13日(水)「しんぶん赤旗」
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東日本に上陸した台風としては過去最強の勢力だった台風22号で、突然、局地的に襲う強い風のすさまじさがあらためてクローズアップされました。
横浜市金沢区の駐車場では、駐車してあった二トントラックなど三十八台が折り重なるように横倒しになったり、トラックが乗り上げるように積み重なる被害が発生しました。
横浜地方気象台と東京管区気象台は、積乱雲の下で発生する強い下降気流がもたらす「ダウンバースト」の可能性があるとみて、ただちに現地調査に入り、十二日までに災害調査速報をまとめました。
速報によると、トラックを下からまき上げるようなきわめて強い風は、台風の中心が災害発生地域の近くを通過していた九日午後五時十分に発生。北に十数キロメートル離れた横浜地方気象台では当時、最大風速三九・九メートルを観測していました。
首都高速道路公団によると、東京湾のレインボーブリッジの通行規制は、風速一七メートルの強い風を観測した場合に、警視庁と速度規制や通行止めなどを協議することになっているといいます。
今回の横浜の突風災害はきわめて限られた範囲で発生。同気象台は、現場に「たつまき」や「ダウンバースト」などの発生を裏付ける物的証拠や、聞き取り情報も少なかったとして、ダウンバーストという断定は避けています。
今回の横浜市金沢区の被害は駐車場という限られた範囲だったことから、東京管区気象台は「ダウンバーストではなく、台風通過に伴う突風だった可能性もある」と説明します。
一九九六年七月十五日午後に栃木県小山市の鬼怒川河川敷で発生したダウンバースト災害では、周辺の木々が引き抜かれるように倒れました。河川敷に設置されていた格納庫もろともグライダー・えい航機計八機が五十―二百五十メートルも一気に吹き飛ばされ大・中破しました。とくに滑走路近くなどで発生すると、航空機墜落事故にもつながるため警戒が必要とされています。
強い勢力のまま上陸したことしの台風21号でも九月二十九日午後、静岡県菊川町と相良町の南北約一キロメートル幅約五十メートルの狭い範囲で、屋根が約二百メートル吹き飛ばされたり、樹木が倒れる突風被害が発生しました。静岡地方気象台は、突風発生時に活発な積乱雲が近くにあり、たつまきやダウンバーストが原因なのか、台風21号にともなう強風の影響なのか物的証拠が少なく区別がむずかしいという報告書をまとめていました。
ダウンバーストや台風の突風がどのような気象条件や、その地形や建物の状況で発生するのかも不明で、予測はむずかしいのが実態です。東京管区気象台などは「強い勢力のまま通過する台風はこうした突風がともなう」と、警戒を呼びかけます。宇野龍彦記者
雷雲(積乱雲)の発達にともなって発生します。雲の下部から冷たい空気が下降。この下降気流が、地面をたたきつけてできる強い横風の突風は、周辺の建物や樹木をなぎ倒す威力を持ちます。ダウンバーストは、強風域が直径四キロ以上のものをマクロバースト、四キロ未満のものをマイクロバーストと区別されます。