2004年10月13日(水)「しんぶん赤旗」
韓国の市民団体である米軍基地返還運動連帯と環境保護団体の緑色連合は十二日、ソウル市内で記者会見し「全国米軍基地調査報告書」を発表し、これまで全容が明らかでなかった韓国の各基地・施設の面積、機能、基地被害の実態を詳しく明らかにしました。
調査は二〇〇三年十一月から〇四年八月にかけ、九十四の基地・施設のうち現地調査ができなかった十七カ所を除くすべての基地を対象に行われました。
約二百五十ページの報告書は、既存の資料に加え、韓国国防省と米国防総省への情報公開請求で得た資料、独自の現地調査結果の成果。米軍基地・施設の位置、面積、返還計画の有無、所属部隊、主要機能、基地被害の例、所属兵員数などを、詳細に記述しています。
緑色連合は「韓国全土の米軍の実態がまとめて明らかにされるのは初めてだ。米軍基地の実態は『軍事機密』だという理由で、韓国国防省が明らかにしようとしない。地方自治体も情報がなく対策を立てようがない。基地問題解決に役立ててほしい」としています。
報告書によると、五十八の米軍基地・施設がソウルと周辺の京畿道(キョンギド)地域に集中しています。ソウル中心部の龍山(ヨンサン)基地(在韓米軍、在韓国連軍、米韓連合の各司令部)では二〇〇〇年代に入り、土壌汚染、燃料油流出、毒物の垂れ流しなどが相次いで判明しました。
京畿道平沢(ピョンテク)市の烏山(オサン)空軍基地は、九二年に一日あたり五千トンの廃水を無断で周辺の河川に放流、二〇〇〇年には航空機燃料を河川に流出。航空機の騒音は測定の結果、七十―百四・九デシベルに達しました。
また、報告書によると、在韓米軍基地・施設の数と面積が、韓国政府と米国防総省の資料で食い違っています。さらに、当局の情報提供拒否のため、位置すら確認できなかった基地・演習場が十七カ所に達しました。
緑色連合は「韓国国防省が国会に提出する資料でさえ、毎回内容に食い違いがある。国会や政府ですら正確な情報を持っているのか疑問だ」と指摘。「在韓米軍が朝鮮半島と北東アジアと世界の平和のために存在するのか、障害物なのか、その評価はいずれ歴史が下すだろう」と強調しました。
一九四五年八月十五日に第二次世界大戦で日本が無条件降伏した後、日本の植民地支配から解放された朝鮮半島の北半部をソ連軍、南半部を米軍が占領。四九年に米軍は撤退しますが、五〇年に朝鮮戦争が発生すると韓国支援のために「国連軍」の主力として参戦。五三年の休戦協定締結直後に米韓相互防衛条約を締結し、現在、約三万五千人が駐留しています。条約は米国が軍部隊を韓国の「領土内とその付近に配置する権利」を明記。在韓米軍司令官は戦時の韓国軍作戦指揮権を持ちます。