2004年10月11日(月)「しんぶん赤旗」
四国の名流・四万十(しまんと)川では、最盛時には年間二千トンを超すアユの漁獲量がありました。ところが、ここ数年漁獲量が激減し、二〇〇三年は六十四トンにすぎませんでした。“最後の機会になる”と、高知県の漁師らのアユ復活へのとりくみが始まっています。中国・四国総局 尾崎吉彦記者
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「今年は、全滅いうていいくらい厳しかった」「本流はまったくだめで、釣りになるのは限られた支流くらいだった」と漁師や釣り人からは深い嘆きの声が聞かれました。
この事態に危機感を持ったのが、四万十川中央漁協(岡山静夫代表理事、中村市)などの漁師たちです。八月には、「四万十川にアユをとりもどすシンポジウム」を開き、アユの保護策を学びました。
九月九日の理事会で、産卵に川を下ってくるアユをとる「落ちアユ漁」の自主規制を半月早めて、十月一日から実施することを決定。流域全体にひろげようと四万十川漁協連合会に提案し、各漁協の賛同をえました。
四万十川中央漁協の窪田幸専務理事(70)は「落ちアユ漁でずいぶん恩恵を受けてきました。アユが激減しているのは漁師自身よく知っており、みんな、自主規制しかないと受け入れています」といいます。
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中村市議会でも九月十四日、「四万十川のアユが減少している。思いきった対策を」と求める日本共産党の稲田勇市議に、中屋和男農林水産課長は「漁協と市で対策を協議している」とアユ保護対策にとりくむことを明らかにしました。
四万十川のアユ激減の理由は、さまざまあげられています。ダムのため川が汚れた、川砂利採取(現在は禁止)、海に下りたアユの稚魚が海水温上昇で死んだ、釣り人・漁師が多い、漁の道具が発達しアユを取り尽くしている…。それらが絡み合っていると関係者の多くがいいます。
いよいよこれから産卵シーズン。河口から十キロの中村市の通称“赤鉄橋”付近の瀬が主要な産卵場所になります。同漁協は、県の内水面漁業センターや市農林水産課の協力もえて、産卵場の整備やどれくらい稚魚がかえったかなどの調査をすることも計画しています。
市農林水産課の宮本昌博さんは「上流と下流の漁協が足並みをそろえた意義は大きいですよ。落ちアユ漁の規制が一年で済むのか、二、三年になるのか分かりませんが、アユがもどってくれば」といいます。
この四万十川のアユ復活にむけたとりくみの参考になっているのが、高知県東部の物部(ものべ)川での経験です。物部川漁協は、源流部の森林整備や産卵場の整備などにとりくんできました。そうしたとりくみが実を結び、今年は元気なアユの姿がたくさん見られました。
アユ研究家で、物部川漁協とアユ復活に一緒にとりくんできた高橋勇夫さん(47)は、「親アユに十分な卵を産ませて、海に送り出す、それが基本です。短期的には産卵場を造ることや漁期の制限で親アユを保護すること。長期的には、川を守ることです。四万十川流域の各市町村は、四万十川保全条例をそれぞれ作成して、環境保全にとりくんでいます。こうしたことが大切です」とアユの保護プログラムを語ります。
また、高橋さんは、「なんでもアユの放流ですまされ、天然資源の保全などがなおざりにされてしまった」と指摘し、「放流万能主義からの脱却」を説きます。
四万十川中央漁協の窪田さんはいいます。「昔の四万十川は、アユがコケを食(は)み、岩陰で休むような大きな石もごろごろしていたし、産卵場も足が少しもぐるくらいの適当なバラスがあった。現在の川の状態から出発して、どうすればアユを残せるか。これが最後のチャンスと思うとります」