日本共産党

2004年10月8日(金)「しんぶん赤旗」

一方的解雇を許せるか

工場に泊まり労働者が監視

「仕事をさせろ」 埼玉のJMIU東日本鉄工支部


 雨が多い十月。さいたま市にある橋りょう鉄骨メーカーの東日本鉄工(従業員百二十八人)の工場正門横に張られたテントに薄い緑色の作業服姿の労働者が立っています。会社は九月二十八日、突然破産を宣告し、労働者全員に解雇を通告。「一方的な破産攻撃・解雇は許さない」と職場のJMIU(金属情報機器労組)東日本鉄工支部は二十四時間の泊まり込み体制をとり、企業再建へたたかっています。 内野健太郎記者


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一方的な破産と解雇は許さないと泊まり込みでたたかうJMIU東日本鉄工支 部の組合員たち=さいたま市

 その日午後四時すぎ、構内で作業をしていた労働者が食堂に集められました。社長や専務の姿はなく、いたのは破産管財人でした。紙切れ一枚の解雇通知を一人ひとりに手渡し、「私物をまとめて、自宅待機しなさい」と命令しました。

 寝耳に水の話に、「頭の中が真っ白になった」と三十年近く勤続してきた四十七歳のベテラン労働者はいいます。

 「こんなもの受けとれるか」と拒否しました。時がたつにつれ、悔しさがこみあげてきました。自己破産申請が東京地裁に提出されたのは、二十七日。破産宣告前に破産管財人が工場内に入り、翌日の午後三時すぎには全員の解雇通知が用意されていました。あまりの手際のよさでした。

■周到な準備

 「破産は、周到に準備されていた」と憤る労働者たち。社長は“おわび”の文書を残して、姿を隠したままです。

 東日本鉄工には、労働者に大きな影響を与える経営施策については、組合と十分に協議するという労資協定があります。

 JMIU支部の佐藤繁委員長は「労資の約束も守らず、経営責任を放棄している。民事再生による企業の存続もはからないのは極めて異常です。資産売却で親会社の伊藤忠丸紅鉄鋼や銀行が優先的に債権回収をねらっているが、一般債権者や労働者を犠牲にする勝手なやり方は断じて認められない」と批判します。

 JMIU支部の三十一人の組合員は、ただちに会議室を利用して監視と財産保全のための泊まり込みを開始。これに、他の支部や労組・民主団体が募金やカップめんなどの支援物資を持ち、続々と支援に来ています。一週間で二百人近くがかけつけました。

 クレーンの音や労働者の作業姿が消えた工場内には、製作途中の仕掛かり工事物件が五件もあります。なかにはペンキも塗り終わり、運びだすだけの製品も。このまま放棄し、スクラップにすれば“二束三文”にしかならないとJMIU支部の石山晋平副委員長は指摘します。「顧客に迷惑をかけるばかりでなく、公共事業に使われる橋りょうは、税金のむだ遣いにもなります。私たちの技術と汗がしみついたこれらの物件を、鉄くずにしたくありません」

 JMIU支部は、仕掛かり品を完成させ、賃金などの労働債権の財源にと、管理職や組合に加入していない労働者にも呼びかけてきました。

 ところが管財人は“労働組合に丸め込まれるな”と管理職に指示し、協力を拒否しました。

 JMIU支部は、仕掛かり品の完成を求めて裁判所に上申書を提出し、記者会見もおこなって世論に訴えています。

■夢が消えた

 「来年受験の中学生の娘に『お父さんの会社、倒産しちゃった。これから大変だけどがんばろうね』と話したときがつらかった。妻とマンションを買いたいねと言っていた矢先だった…。夢が本当にただの夢になってしまった」と三十八歳の組合員。「就職して勤続二十年になります。橋りょうをつくるという仕事に誇りを持っていました。12%の賃金カットにも耐えてきた。せめて退職金ぐらい払え。資産売却がうまくいけば退職金もでるなんて、いいかげんな説明では納得いかない」と語気を強めます。

 社長は、三期連続の赤字経営を続けていても、「従業員の仕事上のミスが赤字をつくっている」「経営者だけの責任ではない」といって一貫して経営責任を認めませんでした。これに対し、JMIU支部は「労資で再建計画を立案し、実行しよう。われわれも協力を惜しまない」と粘り強く呼びかけてきました。

 組合員を先頭に、労働者が協力し、工期短縮を条件に受注した工事をやりあげ、会社が立てた計画を上回る生産の実績をあげてきました。

 正門で監視する三十八歳の組合員は、唇をかみしめていいます。「労働者が支えてきたから、会社があったんじゃないか。会社は、私たちのがんばりにこたえる必要がある。仕事をさせるまで引き下がりません」

 激励先=JMIU東日本鉄工支部 さいたま市桜区道場2の1の1電話048(854)5187(ファクス兼用)



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