2004年10月7日(木)「しんぶん赤旗」
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二〇〇二年十月、山口県で起きた三菱自動車製大型車のクラッチ系統部品の欠陥による死亡事故で業務上過失致死罪に問われた、同社元社長・河添克彦被告(68)ら四人の被告に対する初公判が六日、横浜地裁(山崎学裁判長)で開かれました。検察側は冒頭陳述で、事故を招く危険性を認識しながら、安全対策を放置し続けてきた会社ぐるみの欠陥隠ぺい体質を明らかにしました。
起訴事実を河添被告と三菱ふそう前会長・宇佐美隆被告(64)は否認。三菱自元取締役でトラック・バス部門の最高責任者だった村田有造被告(67)と同元副社長同品質・技術本部副本部長・中神達郎被告(62)は「不具合を承知していた」と認めたものの、「起訴事実はそのまま認められない」としました。
冒頭陳述によると、三菱自は一九七七年以降、市場の不具合情報を二重管理。イメージ低下回避や費用軽減のためリコールせずヤミ改修を指示しました。河添被告は九七年、部下の副社長から不正行為中止を進言されましたが、「いっぺんにはいかない。だんだんと時間をかけて…」と答えました。この一方で、クラッチハウジングなどの不具合情報は「週報」「月報」という内部文書で確認していました。
同部品の不具合は九二年以降増加。車両火災やブレーキパイプ切断事故につながりました。九四年には首都高速上で運転手が負傷する事故も起きました。
宇佐美被告は同年八月、三菱自品質保証担当社員から防止策検討の必要性の訴えを受けましたが、「そんな古い話を持ち出すな」と一喝しました。
九六年五月の「リコール検討会」では、対策の必要性が報告されたものの、対象車が「約九万二千台」、対策費用が「約九十億円」と莫大(ばくだい)なものになるとの理由から、リコール(回収・無償修理)が見送られ、国土交通省に届け出をしないで欠陥部品をヤミ改修する違法な「指示改修」の実施が決定されました。
その結果、二〇〇〇年まで四年間の「指示改修」実施率は、わずか「1%にも満たない」ものでした。
同年七月に、二十年以上にもおよぶ「リコール隠し事件」が発覚。同社は、国交省への届け出項目を削減するため、独自に「多発性の基準」を設け選別、クラッチハウジングの欠陥はリコールから除外されました。
この選別結果は、河添被告のほか、全被告に順次報告され了承されたとしています。
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三菱欠陥裁判 三菱自動車、三菱ふそうの長年にわたる欠陥隠しでは、三事件で八人の幹部と一法人が起訴されました。車軸部品ハブの欠陥による横浜市の母子死傷事故では、ふそう前会長の宇佐美隆被告ら三被告と法人としての三菱自動車が道路運送車両法の虚偽報告罪で、同社元部長の村川洋被告ら二被告が業務上過失致死傷罪でそれぞれ起訴されました。
クラッチ系統部品の欠陥による山口県周南市のトラック運転手死亡事故では、同社元社長河添克彦被告、宇佐美被告ら四被告が業務上過失致死罪に問われています。