2004年10月7日(木)「しんぶん赤旗」
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政府税制調査会(首相の諮問機関・石弘光会長)は九月二十一日、来年度の税制「改正」に向けた議論を開始しました。
冒頭、谷垣禎一財務相は「個人所得課税、消費税を中心に税制改革の具体化を」と提起。質疑の中で委員の一人は、消費税増税について「大いに議論を」とのべてきた小泉首相の発言をとりあげ、「今日はそのはじめだと思っている」と強調しました。なぜ今、消費税増税なのでしょうか。
谷垣財務相は九月十四日の記者会見で、財政再建について「歳出を削るだけでは(財政の)バランスが悪くなる」と発言、歳入拡大へ向け所得税、消費税などの本格的な増税が必要だとの考えを示しました。同二十一日の記者会見で政府税調の石会長は、社会保障財源の議論に絡み「消費税の議論は避けられない」と強調しています。
医療、年金、介護など社会保障財源の確保と財政危機の打開。この二つが消費税増税派の主張する根拠となっています。
この主張とその軌を一にするように日本経団連は、消費税増税をやらなければ財政の大破たんになるとした試算(九月十三日)を発表しました。
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二日、買い物客でにぎわう東京・新宿。サービス業の男性(41)は「国の借金があれだけ膨らむと、消費税増税も仕方がない。不満はあるけどね」と語り、派遣社員の男性(34)も「消費税増税で年金(保険料)とかが安くなるならいいと思う」とつぶやきました。
その一方で、年金暮らしの男性(77)は「年金は減っていくのに、これ以上負担が上がったら生活できない」と憤り、東京都内の大学に通う男性(29)は「バイト代も下がり、ただでさえ収入が少ないのに、出費がかさむと困る」と嘆きました。
消費税増税を「賛成」と明言する回答はごく少数。政府や財界の宣伝を反映した“社会保障財源のためには仕方がない”“財政再建のためには仕方がない”との声と、“消費税増税には反対”の声が拮抗(きっこう)しています。
消費税が導入された一九八九年以降、社会保障は充実させられるどころか、いっそう切り縮められてきました。さらに、政府はこの十月からの厚生年金保険料の引き上げを皮切りに、増税と社会保障改悪で年間約三兆円(二〇〇六年度時点)もの連続負担増を国民に押し付けます。
来年度税制「改正」では、庶民に増税を押し付ける所得税・住民税の定率減税の縮小・廃止も大きな焦点です。
一方、政府は〇五年度予算編成にむけて軍事費は温存。これまで国の借金を膨らませてきた公共投資関係費はコスト削減分の3%削減を見込むにすぎません。
“社会保障財源のため”“財政再建のため”という消費税増税の理由は、小泉内閣がすすめる来年度の税制「改正」や予算編成の中でも口実でしかないことが、浮き彫りになりつつあります。
日本経団連が、消費税増税とセットで法人課税のいっそうの引き下げや企業の社会保険料負担の軽減を求めているように、大企業の負担を軽くするための消費税増税というのが、政府・財界の本音です。
(つづく)