2004年10月7日(木)「しんぶん赤旗」
所定外労働時間(残業時間)にはどんな違いが見られるのでしょうか。東芝の所定外労働時間の上限は月四十時間です。しかし、東芝の労働協約では、「業務上必要あるときは、会社は支部との協定により、組合員に所定労働時間を超えて時間外労働をさせる」ことができる、とされています。具体的には、一カ月六十時間を限度として連続三カ月については百八十時間を超えないものとするとされています。月六十時間以内なら残業はお構いなしということで、事実上、年間七百二十時間の残業が可能になる仕組みです。
東芝労働者の所定外労働時間は、全体平均で年間三百二・四時間になっています。
東芝の子会社である東芝セミコンダクタ・ドイツ社(以下、ドイツ社)で、日本と大きく異なるのは、所定外労働についての基本的な考え方です。ドイツ社の労働協約には「所定外労働を新規採用の代替として利用してはならない。所定外の量は可能な限り少なくする」ことが明記されています。ドイツ社では、所定外労働は本当に例外的なものとされているのです。
ドイツ社の実際の所定外労働時間については、ドイツ全体の所定外労働と近似しているとみて間違いありません。ドイツの所定外労働時間は、最新の統計では年間五十七時間です。
ドイツ社の所定外労働時間をドイツ平均と仮定すると、東芝の労働者は、所定外労働時間でもドイツ社と比べて二百四十五時間以上も長く働いていることになります。
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東芝の年次有給休暇は、勤続一年以上で前年度の出勤率が八割以上の労働者にたいして年間二十四日付与されます。ドイツ社は勤続六カ月以上の労働者に三十日付与です。
しかし、年休取得にかかわっての権利は天と地ほどの違いがあります。
東芝では、年休取得を申請しても会社の都合で変更することができると労働協約で明記されています。それにたいして、ドイツ社では、十五日以上の年休請求の場合は、会社都合で分割しなければならないときでも最低連続する十週日(ウイークデー)付与しなければならないとされています。週二日の休みを含めると、十六日の連続休暇が可能になる計算です。
加えて、決定的な違いは、年休付与日数を東芝では完全消化できないようになっていることです。東芝の平均取得日数は二十・二日で、平均取得率は84・2%でしかありません。ドイツ社は年休完全取得が常識です。
所定労働時間、所定外労働時間、年休あわせて、年間労働時間がどうなっているかをみると、ドイツ社の所定労働時間は千四百四十九時間、所定外は五十七時間、合計で千五百六時間となります。東芝はどうでしょう。所定労働時間千八百六十・三時間から年休取得分二十・二日×七・七五時間=百五十六・六時間を差し引き(千七百三・七時間)、これに所定外労働時間三百二・四時間を加えて、二千六・一時間です。
東芝の労働者は年間五百時間もドイツ社の労働者より長く働いている計算です。しかも、このなかには、職場で横行しているサービス残業は含まれていません。
東芝の労働者は同じグループ企業の子会社であるドイツ社の労働者より、ドイツ社流の週三十五時間労働にもとづいて計算するとほぼ年間百日、日本の東芝の週三十八・七五時間で計算しても、年間九十日も余計に働いていることになります。親会社である日本の東芝に働く労働者が、子会社であるドイツ社と比較していかに過酷な長時間労働を強要されているかが分かります。
ヨーロッパ並みの働くルールを確立することは急務といえます。
(おわり)