2004年10月5日(火)「しんぶん赤旗」
NTTの退職強要に応じなかったため、みせしめの異職種と遠隔地への配転を強行された通信労組の組合員五十人がリストラの違法性と配転の無効を訴えて全国六地裁でたたかっている「NTTリストラ全国裁判」。東京地裁では、証人主尋問が行われ、岩崎俊委員長が証言しました(九月二十九日)。法廷の外まであふれる百四十人がつめかけた傍聴席は新たな怒りに包まれました。
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岩崎氏は、NTTが五十一歳以上の社員を賃金が20―30%カットとなるアウトソーシング(外注化)会社に再雇用するために退職強要し、事実上の「五十歳定年制」となっていると指摘。雇用問題であるのに、労組との協議もなく、広域配転は本人同意をと申し入れると「『ごね得』は許さない」と答えた(後にこの発言は撤回)と団体交渉の記録を示しました。
愛媛県でNTTに残りたいと「通知書」をだした社員に、課長は「これなんぞぉ、会社なめとんか」と声を荒らげ、NTTに残れば四国に残れないとして、「あんた一人何で(地元に)置いてくれるんぞな」「100%みんなそっち(退職・再雇用)を選んどる」と脅し、あげくは「NTTの自殺率高いん知っとるんか」とまでのべました。
福島支部の組合員は、NTTに残りたいと希望していました。妻は「残った人は全員配転でしょう。離れ離れはいや」といいました。「その時、奥さんはがんを患い、末期の状態で余命いくばくもありませんでした」と岩崎氏は声をつまらせて告発しました。「八カ月後に奥さんは亡くなりました。妻を介抱したいという願いが、NTTの退職と引き換えでなければ実現できなかった」
札幌市の組合員は「要介護3」で障害者手帳を持つ父親と、ひざに障害を持つ母親を介護しなければなりませんでした。会社はそのことを知りながら、組合員に東京への配転を命令。一カ月足らずで父親が入院したため、組合員は配転撤回の仮処分を札幌地裁に申請しました。ところが会社は、両親の自宅を二十四時間体制で監視。母親が不自由な体で買い物にでたところを三回にわたって隠し撮りし、写真を証拠として裁判に提出。組合員や兄弟が両親宅に何回立ち寄り、どのくらい滞在したかまで調べていました。岩崎氏は、NTTに残るといっただけで行われた人権じゅうりんのケースだと告発しました。
岩崎氏はさらに、NTT前社長が「進路に横たわっている大きな石、すなわち『人の問題』を構造改革によって退けた」と自慢していることにふれ、社員を「大きな石」としか思わないNTTの態度を批判しました。