日本共産党

2004年10月4日(月)「しんぶん赤旗」

風疹患者5年間で最多

厚労省が緊急提言

“妊婦は特に注意必要”


 風疹(ふうしん)の患者が約三千八百人(八月時点)にのぼり、過去五年間で最大規模の流行になったことを受けて、厚生労働省の研究班が緊急提言をまとめました。風疹の発生を抑えるため、予防接種を積極的に受けるよう呼びかけています。

 風疹の大きな流行はこれまでほぼ五年ごとに繰り返されてきましたが、一九九四年以降は全国的な流行は見られなくなっています。二〇〇〇年以降の患者報告数は年間三千人前後でした。今年はそれをすでに八百人程度上回っています。

 注意が必要なのは、妊娠初期の女性がかかることです。母体から胎児に風疹ウイルスが感染し、生まれる子どもに難聴、心臓病、白内障などの症状が出る危険性があるためです。「先天性風疹症候群」と呼ばれるものです。

 国がこの症候群の全数調査を始めた九九年以来、報告があったのは年に〇―一件でした。しかし今年はすでに五件が報告されています。

 研究班の緊急提言は、風疹と先天性風疹症候群の発生状況は「このまま放置すれば危機的状況に至る」と警告。先天性風疹症候群の対策として、妊婦の夫や同居家族への予防接種の推進を提言しました。

 ほかにもワクチン接種が勧められる人として、定期接種の対象年齢の子ども、十代後半から四十代で特に妊娠を希望している女性、定期接種を受けていない学生、小児科や産婦人科などの医療従事者、保育園や学校の職員などをあげています。

 さらに、▽妊婦全員の抗体検査と、必要に応じたカウンセリングの実施▽麻疹(ましん)と風疹の混合ワクチンの早期導入や、免疫を高める二回接種の実施―なども提案しています。厚労省は九月に、予防接種の推進を求める通知を全国の自治体に出しました。四月に続いて今年二回目です。


 風疹(ふうしん) 発熱や発疹、リンパ節がはれるなどの症状が特徴のウイルス性の病気。春から初夏にかけて多く発生します。風疹ウイルスが空気中に飛んだつばなどに運ばれて、人から人に感染します。潜伏期間は二―三週間。三日程度でおさまることから「三日はしか」とも呼ばれます。

 ワクチン 予防接種のときに使う液剤。風疹の予防接種に使われるのは、必要最小限の生きたウイルスが入っている生ワクチンです。接種されると体の中で増殖し、次に病原菌が体に入っても病気にかかりにくいように免疫をつくります。


解説 制度変更で未接種者が存在

 今年の風疹の流行は小規模で、すでにほぼおさまったとみられますが、過去のパターンから判断すると流行は数年間続くため、引き続き警戒が必要です。

 風疹そのものは子どもがかかりやすい病気ですが、今回の流行はおとなの患者の占める割合が例年よりも高いという特徴があります。二十歳以上の感染者の割合が全体の約二割で、昨年の二倍近くになっています。現在は患者の発生報告を小児科から受けているため、実際にはおとなの患者がさらに多い可能性があります。

 増加の一因として考えられているのが、ワクチンを接種していない人の存在です。子育て世代の二十―三十代で免疫がない人は五百三十万人、そのうち女性が七十八万人と推計されています。

 風疹の予防接種は七七年に始まりました。当初は、法律に基づく定期接種の対象が女子中学生に限られていました。九五年四月からは、対象が一歳―七歳半の男女に変更されました。この変更で、七九年四月二日から八七年十月一日の間に生まれた人(現在十七―二十五歳)は、乳幼児期に接種を受けないまま、学校での集団接種の機会もなくなりました。

 このため、政府はこの年齢層の人が原則として無料で予防接種を受けられる経過措置をとりましたが、昨年九月末で終了しました。秋野幸子記者



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp