2004年9月30日(木)「しんぶん赤旗」
「巧妙悪質です」と、息子を装った「オレオレ詐欺」にあい百六十万円をとられた神奈川県横須賀市の五十七歳の男性Aさんからの訴えです。被害にあわないため、Aさんに体験を語ってもらいました。
Aさんが被害に遭ったのは八月二十四日のこと。最初に息子を装った電話にでたのは七十五歳になるAさんの義母でした。
「僕、ケンタ(仮名)だけど、人を殺した。子ども、死んじゃった」と電話口から泣き叫ぶ声が聞こえました。Aさんの義母は「孫」が泣きながら「子どもを殺した」と聞いただけでパニック状態になり、その場に泣き崩れました。
Aさんがビックリして代わると泣き叫ぶ「息子」の声で「おとうさん。人を殺してしまった」と短い単語をいって泣き続けました。
Aさんは、電話の相手の声の太さや高さが息子の声にそっくりで、「息子がひどいことをやらかしてしまった」と信じてしまったといいます。
そして、「弁護士の〇〇だけど」といって、電話を代わった男は「おたくのケンタさんが妊婦をひいた。おなかの子どもは即死。母親はひん死の状態で手術中。裁判所から電話しているが、保釈金を入れないと十八年は拘留されますよ。息子さんの生年月日は○年○月○日ですね」とたたみかけ、百六十万円の保釈金の振り込みを要求しました。
Aさんはいいます。
「息子の生年月日まで調べていて巧妙でした。最初に電話に出たお袋がパニックになっていて巻き込まれてしまい、私も頭は真っ白でした」と、その時を振り返ります。「冷静になればおかしいことはいっぱいありました。交通事故を起こしたとしても、現場検証、事故原因確定、過失の有無、責任の所在など逮捕されるまでには時間がかかるのに、いきなり電話一本でお金の請求。お金の問題は最後の問題ですから、本人にあってからでいい。慌てずに振り込まないことです」と悔やみます。
「それなりに事実確認をしたつもりですが、動転しているから本人かどうか確認していない。『(息子の携帯は)交通事故の際壊れて通じない』とにせの弁護士は言うんです。かんじんのところが抜けた。電話を一回切って、本人や家族に確認する。一人で判断せずに、冷静になるためにも警察や知人など第三者に相談すれば防げました」とAさん。
Aさんと対応した「〇〇弁護士」と名乗る男は、「銀行に着いたら私の携帯に電話をください」と金融機関へと誘導しました。
Aさんが、銀行について教えられた携帯電話に電話を入れると「紀陽銀行水間支店 キリタニ・エツオ」に振り込むように指示されました。
「振り込んでから自宅に戻り、念のために息子の携帯に電話を入れたらつながって本人がでて、詐欺にあったことが分かりました。銀行に電話したら引き落とされた後。警察に連絡もし、被害届も出しましたが、『八百九十万円もとられた人もいる』とつれない返事でした」とAさん。「オレオレ詐欺は知っていましたし、自分はだまされないと思い込んでいました」と反省しています。