日本共産党

2004年9月28日(火)「しんぶん赤旗」

長野の独居老人殺害事件 遺族を犯人扱い

“警察は謝罪もしない”

日本共産党県議に胸の内語る


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びぜん県議(右)に、犯人扱いされた時の心境を訴える(左から)奨さん、好子さん、由紀子さん=24日、長野県飯田市

 愛知、長野両県で独り暮らしのお年寄り四人が殺害された事件で被害者の一人、長野県飯田市の島中実恵さん=当時(77)=の長女・桜井好子さん(51)が、長野県警から犯人扱いされたと訴えています。二十四日には事態を重視した日本共産党長野県議団・びぜん光正議員が桜井さん宅を訪ね、家族から事態や胸の内を聞きました。

 殺人事件で大切な家族を失い悲しみにある遺族は、警察からどのような扱いを受けたのでしょうか―。

 事件が起きたのは今年四月。第一発見者の好子さんは当初、警察の捜査にも協力していました。様子が変わったのは六月十日でした。この日、好子さんへの“聴取”は午前九時から夜十二時すぎまで及びました。ポリグラフ(うそ発見器)を受けさせられたのです。

 「ポリグラフとは言われず『ちょっとした検査』と言われて承諾の署名をしました。検査する時になって、白衣を着た人から『いわゆるうそ発見器です』と言われたので、何でかなとは思いました。家族だから協力しなくてはいけないと、そのときは思いました」と好子さん。

うそついて捜査

 聴取はその後も週一回のペースで七月まで続いたといいます。

 ―おまえが犯人だったらいいのになあ。

 「狭い取調室で、何回も言われましたよ。数え切れないほど。なんてこと言うのかと思いました」

 母親が殺害された事実を受け入れられず苦しむ好子さんに県警は、夫の奨(すすむ)さん(53)が屋根リフォームの自営業を始めた際の銀行からの借金が残っていることに付け込み、自首を迫ったこともありました。

 ―親せきは、好子が犯人だったら、借金を払うといってる。その証文まで取ってきてある。安心して自首してほしい。

 しかし、証文の事実はなく警察のうそだったと好子さんは言います。

 好子さん以外の家族にも長野県警の働きかけがありました。

 六月二十三日、好子さんの長女の由紀子さん(28)は、高森町の交番に呼び出され、警官から「お母さんを救ってあげられるのはおれだけだ」などと言われ、母に自首するよう説得を勧められました。

 「家の借金も肩がわりするし、お母さんが逮捕されても何もかも大丈夫といわれました。父の発言と母の発言が食い違うよう仕向けられ、わなにはまっていると思いました」。しかも、自首を勧めた警官に「会わなかったことにしてくれ」とクギを刺されたといいます。

 二男(20)は「家族の中に犯人がいる」などといわれました。好子さんは精神的にまいってしまい、家族の間に疑心暗鬼が広がり夫婦関係がぎくしゃくしたといいます。

 奨さんは「おれたちは貧乏してたって、仕事に誇りもってますよ。あいつらは、誇りも恥もなんにもない」と怒ります。

公権力の名で

 好子さんら一家の勇気ある発言で事態が明らかになると、慌てた県警は九月二十日、桜井さん宅を訪ねました。しかし、「謝罪はしませんでした。警察も『謝罪じゃない』と言っていました。『申し訳ない』と一言あれば許すつもりでしたが、いまだにありません」と好子さん。

 一九九四年の松本サリン事件で被害者を犯人扱いし大問題となった長野県警。十年たっても変わらない体質に怒りが広がっています。びぜん県議は二十八日の県議会で県警の姿勢をただすことにしています。

 家族の「生の声」を県議会で紹介したいという、びぜん県議に好子さんは訴えます。「こういうことがなくなってほしいと思います。真実は一つなら、本当に真実を求めてほしい。間違ったことは間違ったと認めてほしい。うそついてまで捜査はしてほしくない」

 びぜん県議は「松本サリン事件の教訓が生かされず、またも県警の腐敗した体質を見ました。公権力の名で家族関係を破壊することは許せない。議会の場で県警の責任を問いたい」と話していました。

 東海北陸信越総局

    唐沢俊治記者



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