2004年9月23日(木)「しんぶん赤旗」
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「繰越金というのは、ブラックボックスのようなものだよ」
自民党旧橋本派(平成研究会)の議員秘書が、漏らしました。
旧橋本派の「繰越金」をめぐる疑惑を初めて指摘したのは本紙八月二十九日付でした。
同派が提出した政治資金収支報告書によると、二〇〇三年でも十八億五千万円の繰越金があることになっています。しかし、これは同派議員に支出される盆暮れの手当「氷代」「もち代」を一九九九年まで記載していないなどウソの報告を積み重ねた結果の架空の繰越金でした。
本紙報道後、同派前事務総長の久間章生氏は会計責任者の滝川俊行被告から「(繰越金は)ありません」と説明を受けたことを認めました。繰越金はウソで、金庫の中は空っぽだというのです。
繰越金のウソ。そして日本歯科医師連盟(日歯連)からの一億円献金を収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反事件…。それだけではありません。
同派関係者がいいます。
「実は、選挙資金の一部も収支報告書に記載しませんでした。表向きは全候補者、同一金額となっているんです。しかし情勢が厳しいところは、当然、特別に資金のテコ入れする。でも、これは収支報告書には載せられない金だった」
つまり、政治資金収支報告書はデタラメだったということになります。
収支報告書のウソを上塗りするウソが日歯連献金受領にかかわる事実についてでした。
問題の一億円は二〇〇一年七月二日、都内の高級料亭で同派前会長の橋本龍太郎元首相、青木幹雄参院幹事長(当時、現参院議員会長)、野中広務元幹事長が日歯連前会長の臼田貞夫被告らから小切手で受け取ったもの。
しかし、青木氏は「記憶にない」、野中氏は否定。肝心の橋本氏も「記憶にない」などというだけです。わずか三年前の一億円授受なのにこの“記憶喪失”ぶり。
東京地検は、一億円小切手授受の席には、橋本氏のほか青木、野中両氏も同席していたことを確認しました。三氏の責任は重大です。
政治資金収支報告書の虚偽記載、不記載などの政治資金規正法違反にたいする刑事責任の追及は結局、甘いものでした。
平成研の代表者である橋本氏の刑事責任は、監督責任をふくめて問わず、日歯連からの献金を記載しなかった政治家もいっさい罪を問いませんでした。これらの政治家には、五千三百万円を記載しなかった自民党前衆院議員の吉田幸弘被告や、木村義雄・自民党衆院議員など十をこえる議員・派閥にのぼります。
東京地検特捜部は、法違反で「一回一億円」を立件の一つの「基準」にしたといいます。その結果、旧橋本派以外のヤミ献金は不問に付されました。
一回一億円未満ならウソ報告でも罪にならない――。そんなやり方が国民の納得を得られるはずがありません。政治資金規正法の改正・強化をふくめ今後に大きな課題をのこしています。(つづく)