2004年9月21日(火)「しんぶん赤旗」
「読売」社説が、三日連続でプロ野球スト問題を取り上げ、「ファン裏切る“億万長者”のスト」(十八日付)、「選手会の弁護士と一握りの選手によって、(交渉の)議論は振り出しに戻った」(十九日付)、「不毛なストの代償は、極めて大きい」(二十日付)などと、選手会を一方的に非難しています。
そもそも年俸問題でのストではないのに、「“億万長者”のスト」などと言うこと自体、筋違いです。「不毛なスト」という問答無用の批判や、「一握りの選手」などと事実をゆがめて選手会の分断を狙う書き方など、選手会攻撃の意図が露骨にあらわれています。
こういう異常な社説を書いているのは「読売」だけです。
他の全国紙の場合、「プロ野球 このストを生かせ」(「朝日」十八日付)、「プロ野球スト突入 責任はNPBの怠慢にある」(「毎日」十八日付)、「来季からの新規参入を認めるべきだ」(「日経」十九日付)、「球界再編 今からでも間に合うはず」(「産経」十八日付)などの見出しに表れているように、球団経営者側のかたくなな態度をいさめています。
球団経営者でつくる日本プロ野球組織(NPB)と選手会との交渉が決裂したのは、NPB側が、来シーズンに向けての「新規参入球団の積極的受け入れ」さえ拒否したためです。この点での、「毎日」の次のような指摘は当然のものです。
「『公正な審査をするには、時間がない』というNPB側の言い分には協約上、説得力はない。時間があるのに1年後回しにするのは、NPB側の職務怠慢である。その結果、ストが行われるのだから…ストの責任はNPB側にある」。
中日新聞社説も「選手会側に、『最大限の努力』さえ約束できないプロ野球組織側の姿勢は、ファンの目にも奇異に映るはずである」(十八日付)と書いています。
これにたいし「読売」は、「ストの責任を経営側に転嫁する声がある。そうだろうか」と反論していますが、「『審査』は、慎重の上にも慎重を期す必要がある」などと、経営側のいい分を繰り返しています。選手側に責任を転嫁する議論です。
しかし、プロ野球の「野球協約」は、「申請を受理した日から三十日以内」に「決定」することを定めており、名乗りを上げている企業もあるのに、「最大限の努力」さえ約束しない経営側の態度こそ非常識です。結局、球団数削減を自己目的化しているとしか見ることはできません。それでは、プロ野球が先細りになるだけです。
選手会側が、プロ野球の将来を考え、球団合併の影響を十分に検討することや、球団数を維持するための「最大限の努力」を求めるのは当然です。
これにたいし、「そもそも球団の経営事項に関すること」だから選手会は口を出すなというのが「読売」の立場です。ストライキなどせず、黙ってプレーせよと。当事者である選手にたいしてすらこうなのですから、“ファンは余計な口出しするな”ということになります。
選手やファンを無視しては、プロ野球の発展はありません。選手やファンの気持ちを踏みにじって球団削減に狂奔するのは、経営努力の放棄です。新規参入問題での「職務怠慢」と合わせ、態度が問われているのは経営側です。選手会に矛先を向け、経営側の「職務怠慢」を擁護する「読売」の姿勢は、まさに、ファンを裏切るものです。庄子正二郎記者