日本共産党

2004年9月20日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

“公共の宿” 過疎地に元気

仕入れも雇用も地元優先


 “公共の宿”をじょうずに運営し、高い稼働率を維持して、過疎の町で自治体が雇用の場を確保、地域の活性化にも役立っているところがあります。“温泉に混ぜもの”で注目されているなか、元気な公共の温泉をみてみました。


黒字分は地域の振興に

長野・高遠町 

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 全国的なサクラの名所・高遠城址公園のある長野県高遠(たかとお)町。この城址公園を湖越しに見渡せる場所に「高遠さくらホテル」があります。公園の反対側は南アルプスが展望できます。

 このホテルは町が建設し振興公社が運営しています。観光客目的の「絵島ホテル」の老朽化に伴い一九九五年七月に移転・新築オープン。ホテルの稼働率は八月が最高で60―70%。次はあでやかな紅葉の十月が60%強で、黒字分を「地域振興費」として町に納めています。昨年度は二百五十万円納めました。

 同町振興公社の赤羽潔事務局長は、ホテル運営は「大きな事業。温泉もあります。混ぜ物なしですよ。正社員・臨時職員は町民が主ですし、出入り業者もできる限り町内。お金が町内で回り、雇用・経済効果がある」と語ります。正社員二十人は全員町民(結婚転出を含む)、約十五人の臨時職員も同じ条件なら町民優先の雇用です。

郡市内から28%

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 同ホテルの運営はユニークな二本立て。横山浩之総支配人は「振興公社のホテルとして地域のみなさんのつどいの場を提供し、そして観光客の方々にゆっくりしてもらえるホテル」と語ります。振興公社と協力しての観光客誘致と同じに、地元向けに格安な一泊宴会企画を提供。年間宿泊のうち約9%が町民、同町を含む上伊那郡・市で28%を占めます。七百円で入浴でき、宿泊は一人一泊二食付きで一万二千円から。七千円から素泊まりできます。

 友人と温泉に入りにきた女性(67)は、「何かあったら(ホテルを)使うよ。法事も段取りしてくれるしね」と語ります。

 横山総支配人は「町民の方から『こんどは何をやるの?』と企画の問い合わせもあるんですよ。うれしいですね」と目を細めます。

 「地元の方と観光客の方では、ホテルに求めるものが違います。例えば料理。地元の方が食べたい刺し身を、観光客の方には郷土料理に差し替えるなど、もっと商品に磨きをかけたい」

旅の思いも深く

 同町の造り酒屋の伊藤好専務(株式会社・仙醸)は、「地元を優先して扱っていただけることはありがたいことです。地元の酒、地元の焼酎のほうが旅に来たという思いも深いんじゃないですか。これからの地方経済は、地域業者が横のつながりを持って発展するっていうものがないといかんと思うのです。お互いに協力し合いたいですね」と語っています。

 十月三十日から十一月四日に「高遠城址の秋まつり」が始まり、忙しくなります。

 長野県・原広美記者


鉄道廃止の町にぎわい

北海道・枝幸町 

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 日本最北の地、稚内市から百二十キロ、オホーツク沿岸を南下すると、人口約八千人の漁業と農業の町、枝幸(えさし)町があります。ホタテ、毛がに、サケ、マスを中心にした漁業と、約百戸の酪農業が町を支えています。

 一九八五年には鉄道が廃止され、八〇年に一万人あった人口が八千人を切る状況となりました。

 この町を見下ろす高台にホテルニュー幸林(部屋数五十九)があり、雇用創出など町の活性化に一役かっています。

 二十年ほど前からあった、林業関係者の保養施設・幸林荘を、九八年に新たに温泉を掘り、増築してホテルニュー幸林としてデビューしたものです。町が建て、運営は枝幸町振興公社があたっています。

食事は道内1位

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 じつは、このホテルの稼働率は年間平均80%近い高さを維持しています。安い(一泊二食八千五百円)だけでなく、宿泊客に十分満足していただけるものがあるからです。

 ニュー幸林の自慢は、毛がにの水揚げ日本一の枝幸町にふさわしく、夕食に一人一杯の毛がにがつくことです。ほかにもオホーツクでとれる魚介を中心に、豪華なものです。今年度の雑誌のアンケート調査では、道内の公共の温泉・食事部門で一位になりました。風呂(ふろ)部門や施設、清掃感、接客サービスなどの総合でも三位にランクされました。

 こうした点で人気を集め、宿泊客のほとんどがビジネス客で、観光客は夏のわずかな時期だけです。「ビジネス客をしっかりつかんでいることが高稼働率を維持している秘けつではないか」と、関係者はいっています。

50人の雇用創出

 雇用の点でも、町の職員を二人派遣し、公社の正職員六人に、臨時職員を合わせると三十人が働いています。ほかに清掃などの業者関係者二十人の雇用の場にもなっています。

 毛がにをはじめ食材はできるだけ地元でとれるものを使うなど、地域経済にも貢献しています。

 町民にとっても、日帰り温泉(おとな五百円、子ども二百四十円)があり、関節の痛みやこわばり、冷え性、疲労回復などで大変評判がよく、若者からお年寄りまでの憩いの場になっています。中心街の人たちが徒歩で行けるうえ、町の配慮で路線バスを玄関先まで運行しています。

 オホーツク沿岸は一月に流氷が接岸して大変寒くなりますが、三月初旬に離岸する流氷の、水面下のコバルト色の美しさは格別です。

 野口良子町議



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