2004年9月19日(日)「しんぶん赤旗」
各地の球場がわく週末に球音が消えました。日本プロ野球70年の歴史で、初めてのストライキが18日、決行されました。労働組合・日本プロ野球選手会が下した決断は、球界発展を考えた苦渋の末のものでした。
栗原千鶴記者
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十時間以上におよんだ十七日の交渉を終えた古田選手会長は、各テレビに生出演。ファンからの激励のメッセージに思わず目頭を抑える姿には、決断の重さを感じさせました。
しかし、多くのファンは選手会の今回の行動を支持しています。あるスポーツ紙がインターネット上で行った世論調査では、79%のファンがストに賛成しています。実際、ヤクルト―阪神戦が予定されていた神宮球場に足を運ぶと、「スト支持」の横断幕を掲げる人や、「選手会がんばれ」と大声で叫ぶ人など、多くのファンが激励にかけつけていました。
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スト前夜、球団側と選手会の会見は、あまりにも対照的でした。
古田会長は、自らの言葉でファンへのメッセージ、ストライキを決意した思いを真っすぐ前を見つめて語りました。
「(両球団の)合併反対の署名をしてくださったみなさんの期待に応えられませんでした。申し訳ありません。(新規参入について)ファンの大きな関心事になっているわけですから、もう、あいまいな表現で妥結することはできなかった」
一方、瀬戸山隆三・協議交渉委員長(ロッテ球団代表)は書面を読み上げました。「ファンのために最善を尽くす」「謙虚な気持ちと真摯(しんし)な姿勢で折衝を重ねた」。これまで選手やファンの声を無視して合併を強行してきた経営者側の言葉は、むなしく響きました。
新規参入球団を二〇〇五年から受け入れられない理由に、球団側は「新球団を公平、平等に審査するには準備に時間がかかる」としてきました。しかし、野球協約には三十日以内で審査することが明記されています。その整合性を問われた瀬戸山委員長は「こうしたケースは、しょっちゅうあるわけではない。(準備期間は)見当がつかない」。無責任な答えに、周囲の記者からは思わず失笑がもれました。
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選手会が交渉で最後まで貫いたこと。それは“ファンの思い”と“球界の未来”です。
合併が公になった六月十三日以降、選手会は粘り強く話し合いの場を求めてきました。しかし、選手会に説明する以前に球団側はパ・リーグ理事会や実行委員会、オーナー会議などで次々と短期間で合併承認の既成事実を積み上げてきました。
そこに怒りを持って立ちあがったのが、ファンでした。合併反対の署名行動やデモ行進が全国で行われました。選手も独自の署名行動を行い、ファンの声を球団に届けようと努力してきました。
そして八月、選手会がスト権を確立したことで球団側はやっと話し合いのテーブルにつきましたが、球団を減らすことに最後まで固執しました。
「十年先、二十年先を考えて話しあわないと。方向性が見えないまま、納得するわけにはいかない」(巨人・高橋由伸選手会長)。選手会が踏み出した歴史的な一歩が、新しい球界づくりの土台になってほしい。