2004年9月15日(水)「しんぶん赤旗」
大規模テロ事件の続発を受けロシアのプーチン大統領が十三日に提案した制度改革は、「国家の強化、国の統一性こそ対テロ勝利の条件」との考えに基づく包括的なもの。選挙制度などソ連崩壊前後からの政治の仕組みを大きく変えるだけに、「九月革命」(イズベスチヤ十四日付)とも評されています。
しかし、北オセチア学校人質事件への悲しみを語っても、三百人以上の犠牲を出した結末の検証はなし。事件のあったロシア南部の貧困対策は打ち出したものの、テロ事件の背景にあるチェチェン共和国での紛争にも触れずじまいでした。
独立要求を掲げた同共和国に、「国の統一性維持」のためとしてロシア軍が介入して民間人に多大な犠牲を出し今も軍などによる人権侵害が指摘されていることへの反省はありません。そればかりか、対テロ先制攻撃・予防攻撃の必要性を大統領として確認しました。
選挙制度の改変には、「テロとのたたかいではなく異論者とのたたかいだ」(チーホノフ・イワノフ州知事)などの批判が出ています。比例代表・小選挙区並立の連邦下院選挙を比例代表への一本化は、5%の足切りや政党登録の制限の強化などを伴うため、「少数意見の切り捨て、大統領与党の肥大化につながる」と指摘されています。
チェチェンではすでに、プーチン大統領の後押しを受けた共和国内務相が大統領に就任。隣のイングーシ共和国の大統領も元連邦保安局の大佐です。今後、「事実上の首長任命制」(与党幹部)の下、全国で治安機関の出身者の首長が増えるとの見方もあります。(モスクワ=田川実)
敵側に攻撃を仕掛けられる差し迫った脅威があるとして、その攻撃に先駆けて攻撃するのが先制攻撃です。予防攻撃は、敵側に直ちに攻撃される脅威がなくても将来に攻撃される可能性に備え、予防のために攻撃するもの。どちらも、国連憲章が認める自衛反撃には該当せず、国際法違反の軍事行動です。