日本共産党

2004年9月6日(月)「しんぶん赤旗」

“新たなテロ対策とる”

プーチン大統領が表明

チェチェン解決に触れず


 【モスクワ=田川実】ロシア南部の北オセチア共和国ベスランでの学校占拠・人質事件の終結を受けプーチン大統領は五日夕、国民向けのテレビ・ラジオ演説を行いました。事件の背景にあるチェチェン共和国をめぐる紛争問題には触れないまま、「ロシアが国際テロの直接干渉を受けている」として、治安機関の強化など新たな対策をとる方針を示しました。

 大統領は、「テロリストが自由と社会を破壊し、ロシアを引き裂こうとしている」「残忍で全面的な戦争が繰り返し同胞の命を奪っている」と、大統領として初めて「戦争」という言葉を使い現状への危機感を表しました。

 「こうした状況では以前のような安心できる生活はない」として、「共通の危険に対する国民の動員・立ち上がり」を呼びかけました。

 政府としては、(1)国の一体性を強化する複合的な策(2)(北オセチアやチェチェンがある)北カフカス地方の状況を管理する新たな仕組みの確立(3)治安機関の新たな対応を含む効果的な危機管理システムの創設―を行うと表明しました。

 演説はチェチェンへの直接の言及を避け、「戦争」の言葉と治安、国土の統治システムの強化を前面に出しました。今回の事件を含め一連のテロの背景にあるチェチェン問題そのものの解決への姿勢を示さずに弾圧の強化など力の政策に訴えるならば、暴力の応酬の悪循環の継続、新たなテロを呼ぶ懸念もあります。 プーチン氏は新たな対策の具体的な中身については近く明らかにするとしましたが、「新たな現代的、現実的な防護策の確立には、長い年月と何十億ルーブルもが必要となる」と述べました。

 大統領は、ソ連崩壊後のロシアが「国防と治安問題に必要な関心を向けず、腐敗が司法と治安分野を侵すのを放置した」と指摘しました。テロの続発を許し、犯人の検挙もおぼつかない現状は深刻で、立て直しが急務との認識は内外の専門家に共通します。

 大統領が強調するのは、ソ連を引き継いだ大国ロシアを維持するという至上命令です。「われわれは巨大で偉大な国家の崩壊後の複雑な条件の下で暮らしている。しかし、巨人ソ連の中核であるロシアの保持には成功した」と述べました。しかし、国の維持のための司法、治安の立て直しを言うなら、チェチェンでの二度の大規模紛争やその前後での、政府、軍自身による住民への人権侵害の救済も不可欠でしょう。



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