2004年9月2日(木)「しんぶん赤旗」
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寅 なんか、おかしくねえか。
八 どうした。
寅 大企業は空前の大もうけだって騒いでるじゃねえか。なのに、おいらのフトコロは、なんでこんなに寒いんだ。
八 なんだ、おこぼれを期待していたのか。そりゃ、やめた方がいいな。
寅 なんでだ。企業がもうけるってえことは、労働者がよく働いたってえことだろ。労働者のフトコロが温かになって当たり前。そうなりゃ、商売人ももうかるようになるじゃねえか。
八 ところが、そうならないのが、いまの大企業のもうけ方なんだ。
寅 だから、なんでなんだ。
八 いいか。史上空前のもうけを更新し続けているトヨタ自動車だって、国内での売り上げは伸びていないんだ。それで、なんでもうけられるかわかるか。
寅 国内がだめなら、海外でもうけているということか。
八 それもある。北米で稼ぎだしているからな。だけど、それだけじゃない。コストを徹底して削減して、収益をあげているんだ。
寅 なんだ、そのコストというのは。
八 人件費や部品単価などだな。
寅 なにか、人を減らしたり、賃金を抑えたり、単価を切り下げたりして、安くあげようってわけか。
八 そう。労働者や下請け業者をいじめて、もうけをはじき出している。
寅 それじゃあ、労働者や業者のフトコロが豊かになるわけねえな。
八 イラク戦争の影響もあって、原油が急騰しているほか、原材料の値上がりが目立ってきた。それも、中小企業にしわ寄せされている。
寅 どういうことだ。
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八 大企業は単価の切り下げや据え置きを下請けや取引業者に迫る。だから、業者は原材料が上がっても、その分を自分でかぶらなくてはならなくなってしまう。
寅 それでか。おいらの知ってる中小企業の社長さんは、忙しそうに飛び回っているのに、「仕事はあっても、もうけにならない」と嘆いていた。
八 こういうやり方が、いつまでも続くはずがない。
寅 そういえば、日本の経済成長が「減速」とか、新聞の見出しに出ていたな。
八 四―六月期の国内総生産(GDP)は前期と比べ、実質ではわずかにプラスになった。いまみたいに物価が下落しているもとでは、より実感に近い名目では、五期ぶりにマイナスだ。
寅 やっと、おいらたちの実感に近づいてきたというわけか。
八 外需といって、米国や中国などへの輸出でようやく「成長」が支えられている。個人消費などの内需は足踏み状態だ。
寅 海外の景気頼みってえわけだな。
八 その頼みの米国経済がイラク戦争の影響による原油高や財政赤字の拡大もあって、雲行きが怪しい。やはり、国内の景気を大切にしないと危うさがぬぐえない。
寅 労働者や中小企業を大切にしない「成長」に未来はないってえことだな。
八 おっ、寅、きょうは、さえてるじゃねえか。
寅 あたぼうよ、こちとら、庶民の味方よ。