2004年9月1日(水)「しんぶん赤旗」
求人雑誌などをみると、「派遣」「業務請負」「委託(個人事業主)」という契約形態が目に付くのですが、それぞれどういう働き方で、どんな違いがありますか。 |
「派遣」は、派遣会社(派遣元企業)が雇った労働者を、一般の企業(派遣先企業)に「貸し出す」しくみです。
労働者は、派遣先企業から指揮命令をうけて働きますが、雇用主は派遣元企業です。いいかえれば、派遣とは、派遣先企業が雇用責任を負わずに労働者を使う制度です。
通常の正社員やパート労働者、アルバイトでは、使用主と雇用主が同一の直接雇用なのに対し、派遣労働者は、使用主(派遣先企業)との間に雇用主(派遣元企業)が介在する間接雇用です。
この違いは重要で、派遣という働き方にトラブルが多い要因となっています。労働者の差し替え要求や、契約の途中打ち切りなど、派遣先企業による横暴が増えているのは、契約を打ち切っても雇用責任を負わずにすむからです。
派遣元企業が顧客である派遣先企業に対し、契約不履行による損害賠償などを求めることはまずありません。そのしわ寄せは派遣労働者にいくことが通例です。
派遣労働者は派遣元企業に対し、残りの契約期間分の雇用(同等以上の仕事)保障を要求でき、それが行われない場合、休業手当などを請求することができます。しかし、多くの労働者が何の保障もなしに失業させられているのが実情です。
派遣元企業は長期の仕事でも、派遣労働者とは一―二カ月程度の短期契約を繰り返し、契約打ち切りに備えています。休業補償を請求されても最小限ですませるためです。派遣労働者は極めて不安定な雇用状況に置かれています。
派遣には、仕事が入ったときだけ派遣元企業と雇用関係を結ぶ「登録型」と、派遣元企業に常時雇用される形態があります。通常いう「派遣」は、約九割を占める「登録型」です。
「業務請負」は、仕事の完成を目的に、発注元企業から業務の一部を請け負うことです。「仕事の完成」が目的なので、請け負った企業は労務管理の全面的な責任を負う必要があり、発注元企業が労働者を指揮命令することはできません。
事業者に対するルールを派遣法で定めている派遣に対し、請負には特別の法はなく、監督官庁もありません。そのため、「製造業務の派遣は一年以内」など、派遣法の規制を免れようと、実際は発注企業が労働者を指揮命令する派遣なのに、請負を装って労働者を「貸し出す」違法な「偽装請負」が横行しています。
「委託(個人事業主)」は、請け負うのが会社でなく個人になります。労働者とはみなされないので、残業代や有給休暇、雇用保険など、労働法の保護は受けられません。
企業が雇用主責任を逃れるため、実態は労働者なのに、「委託契約(請負契約)」を労働者に結ばせるケースが増えています。実態が労働者かどうかは次のような項目で総合的に判断されます。
(1)仕事の依頼を断ることができず、(2)業務内容や業務方法の指揮命令を受け、(3)就業場所や就業時間が拘束され、(4)報酬の支払い形態が賃金と同質か―。
雇用形態による違いをあらかじめ踏まえて、それぞれの働き方の法的権利を知っておくことは、不利益を受けたときに泣き寝入りしないためにも大切です。