2004年8月31日(火)「しんぶん赤旗」
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寅 わかんねえな。さっぱりわかんねえ。
八 こんどは、なんだ。
寅 いやな、大手の銀行は、統合だとかいって、ますます大きくなろうとしてる。ところが、郵便貯金は大きすぎるからと解体しようとする。いったい、どうなってるんだ。
八 そのことか。たしかにおかしな話だよな。まず、銀行だけど、ちょっと前まで都市銀行など大手の銀行は二十行以上あった。それが、いまや四大グループになり、三大グループになろうとしている。
寅 これだけ変わると銀行の名前も覚えられねぇや。
八 それで、何か便利になったことあったか。
寅 駅前の銀行の支店もどんどん減って、おいらの金を預けている銀行を探すのが大変だ。ほかの銀行だと手数料が余計にとられるからな。
八 二つや三つの銀行がいっしょになると、必ず、「効率化」の名でリストラが行われる。支店や行員が減らされる。
寅 融資も厳しくなるって聞いたな。
八 身ぎれいにして統合ということになると「不良債権」をできるだけ、減らそうということになる。狙われるのは中小企業だ。統合したら、したで、「収益性」優先で、また融資が厳しく選別される。
寅 統合をめぐって、大手の流通会社など大口の融資先も問題になっているな。
八 産業再生機構をつかって、おいしいところだけ残そうというわけだ。
寅 切り売りみたいになるのかねぇ。切り捨てられる方は、たまんないな。それにしても、それほどまでの犠牲を払って、なぜ大きくなろうとするんだ。
八 大きくならないと、国際競争に打ち勝てないという。だけど、その国際競争というのは、もっぱら企業の合併・買収(M&A)や投機だ。そのために、個人や中小業者向けのサービスがおざなりになろうとしている。
寅 それじゃ、本末転倒じゃないのかい。
八 銀行というのは、庶民から預金を集めて、企業に貸す。その金利差で稼ぐのが、本来のあり方だ。企業を育てる役割もあり、「土砂降りの雨のときに傘を差し出すのが銀行の役割だ」といった地方銀行の頭取もいた。
寅 そんな理念はどこへいっちゃったのかねえ。金融庁はいったい何をやっているんだか。
八 その金融庁が銀行の統合・再編を促しているんだから、始末におえないんだ。
寅 えっ、そうなのかい。
八 その一方で、小泉内閣は、郵政民営化をやろうとしている。郵便貯金や簡易保険はでかすぎて民間の銀行や生命保険会社を圧迫しているというんだ。
寅 なんだ、銀行や生保の代弁かい。
八 じゃまになるものは、解体してしまおうというわけだ。郵貯・簡保の約三百五十兆円の資金量も魅力で、奪えないかと狙っている。
寅 どんな田舎にいっても、離島にいっても郵便局はたいていある。住民だけじゃなくて、旅人にも便利なのにな。
八 まあ、庶民のことなど、そっちのけ銀行再編や郵政民営化論議ということだ。
寅 世も末だね。