日本共産党

2004年8月31日(火)「しんぶん赤旗」

アテネ五輪閉幕

平和と友情 北京にバトン


 【アテネ五輪取材団】第二十八回夏季五輪・アテネ大会は二十九日、五輪スタジアムで閉会式が行われ、十七日間にわたって二十八競技、三百一種目で繰り広げた熱戦の幕を閉じました。一八九六年第一回近代オリンピックを開催したアテネに戻った五輪は、国際オリンピック委員会(IOC)加盟の全二百二の国と地域から一万人を超える選手が集いました。閉会式では、アテネのドーラ・バコヤンニ市長から二〇〇八年の次回開催都市・北京の王岐山市長に五輪旗が手渡されました。今大会は、ドーピング(禁止薬物使用)に絡んだメダルはく奪が相次ぎました。陸上男子ハンマー投げでも、優勝したアドリアン・アヌシュ選手(ハンガリー)がドーピング規定違反で失格となり、二位の室伏広治選手が金メダルに繰り上がりました。


アテネ発―鼓動

たたえ合う笑顔の空間 世界に広がれ

 百八年の時を経て発祥の地に戻った回帰五輪。言葉も文化も違う選手たちが競技を通じ、理解を深めた十七日間でした。

 目に焼き付いている、一つの光景があります。

 陸上の男子千五百メートル決勝。二人が競り合い、エルゲルージ選手(モロッコ)が先にゴールしたときのことです。2位のラガト選手(ケニア)が、ひざまずく彼に駆け寄り抱きしめました。二人の目には涙がありました。

 「僕はラストで百パーセントの力を出せた。でもエルゲルージは百一パーセントの力を出していたんだ」。ラガト選手の言葉です。

 力を出し切り、競り合った後はたたえ合う。スポーツの持つ美しさが凝縮された場面でした。

 スポーツは人々を結び付ける――。スタンドの「国境」も取り払われました。

 女子サッカーの最終日。試合を終えて表彰式を待つ少しの間、米国、ブラジル、ドイツ、ギリシャの国旗を持った人々が入り交じり、音楽に合わせて踊り始めました。勝敗をこえ、選手のがんばりをたたえる笑顔が、そこにありました。

 五輪期間中、スタンドの多くは「平和で和やかな空間」でした。これが世界に広がっていけばと、何度思ったことか。

 「ここで生まれた『五輪休戦』の精神のもと、大会が平和のうちに開かれますように」。開会式で国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長が語ったように、「五輪休戦」がかつてなく注目された大会でした。

 ドーラ・バコヤンニ・アテネ市長は、大会前からこれを世界に呼びかけ、日本のスポーツマンも呼応しました。

 ギリシャ政府も「五輪休戦」の署名を各国に求め、ポーランドの首相やローマ法王らがサイン。しかしブッシュ米大統領と小泉首相は署名せず、イラクで戦火がやむことはありませんでした。

 大事なことは「スポーツを通じ平和でよりよい社会をつくる」という五輪の「理想」に向かう努力を続けることです。その原点を確認できたことが、21世紀初の夏季五輪アテネ大会の最大の成果だったと思います。

 和泉民郎記者



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp