日本共産党

2004年8月29日(日)「しんぶん赤旗」

自分のせい? 雇用−若者の模索(5)

あきらめと格闘して


写真
人間らしく生き働ける社会をと開かれた青年大集会で訴える働く青年サポート委員会の人たち=6月13日、横浜市

 この連載の取材中だけでも、耳を疑うような実態にたくさん出会いました。

 ――ある財団に勤めている青年は、結婚三カ月たつが、出張と残業と泊まりが続き、まだ妻と二回しか一緒に食事をしていない。

 ――ダイエット食品を売る会社に勤める二十四歳の女性。給料が期日通り支払われない。催促すると、そのたびに社長がポケットから五千円、二万円と払うが、明細書はない(後日、会社は倒産)。

 ――二十九歳の男性。「三カ月頑張れば正社員にする」といわれて働いてきたが、期限が来るたびに「あと三カ月」と先延ばしにされ、一年近くも不安定な状態におかれた。

 多くの場合、青年たちは、働く者に「権利」があることに気づいていません。「会社も大変だから」「どこも同じ」などとあきらめさせられています。「自分に能力がないから」「就職するときに確認しなかったのが悪かった」など、自分の「責任」ばかりに目を向けさせられています。

サポート委

 そうではないことを、若者自身の言葉と運動でひろげる動きが、各地で生まれています。その一つが、神奈川・横浜北東地域の民青同盟のメンバーでつくる「働く青年サポート委員会」です。

 以前から、仲間うちでは職場の現状が交流されていましたが、「うちの会社は中小だから、サービス残業は仕方がない」「組合もないし、職場を変えられるとは思えない」など、あきらめムードが根強くありました。

 しかし、一日の大半を過ごす場がそんな状態では息苦しい。その現状を変えることが、社会を変えることにもつながっていくのではないか。そんな議論から、京都の民青同盟が先駆的にとりくんでいたサポート委員会を、この地域でも結成しました。昨年六月のことです。

 活動の中心は、月一回の学習・交流会です。労働組合の役員を講師に招いたり、資料を持ち寄ったりして働く権利を学び、職場の状況を語りあっています。

 昨年九月末、十時間に及ぶ街頭宣伝にとりくみました。のべ二十五人が参加して、正午から夕方までは新横浜駅、その後夜十時まで鶴見駅前で、アンケートと署名を集めました。

 「帰りはいつも午前様。休みもとれない」「営業で毎日夜十時、十一時まで働いている。残業代は出ず、ノルマもある」――実態が次つぎ明らかになり、対話が弾みました。この日、百五十人が署名し、民青同盟に五人が加盟しました。

 集まった署名を持ち、約一カ月後の十月十九日の青年雇用集会(東京・渋谷)に三十人以上で参加。各地でがんばる青年たちの発言に勇気がわき、日本共産党の志位和夫委員長の「人間はモノではない」というあいさつに運動への確信を深めました。

活動で成長

 委員会メンバーの岡崎裕さん(26)=組合書記=は、「この活動のなかで、僕も含めみんなが成長してきた」といいます。「仕事のできないやつもいる。会社ばかり責めるのはおかしい」といっていた人が、青年の苦しみの背景に大企業の横暴があると気づき、青年雇用集会に有給休暇をとって参加しました。上司にかけあって残業代を払わせた人も生まれました。「運動がひろがっているのがうれしい」――メンバーは手ごたえを感じています。

 学び、交流しながら、自分たち自身のあきらめと格闘している青年たち。そのなかから少しずつ、でも確実に、現状を変える力が育っています。(おわり)

 坂井希記者



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