日本共産党

2004年8月28日(土)「しんぶん赤旗」

第二回中央委員会総会

志位委員長の幹部会報告


 日本共産党は二十六、二十七の両日、東京の党本部で第二回中央委員会総会を開きました。第一日に志位和夫委員長が幹部会報告をおこないました。その大要を紹介します。


 みなさん、おはようございます。衛星通信をご覧の全国のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。

 私は、幹部会を代表して、第二回中央委員会総会への報告をおこないます。

  参議院選挙の総括と教訓について

一、参議院選挙の結果について
写真
幹部会報告をする志位和夫委員長=26日、党本部

 報告の第一の主題は、参議院選挙の総括と教訓についてであります。

 参議院選挙で、日本共産党は、昨年の総選挙での後退をうけて、比例代表選挙では五議席の獲得、選挙区選挙では七つの現職区での議席確保への挑戦、そのために総選挙を起点として得票を133%以上にするという目標をもってたたかいました。選挙の結果は、比例代表選挙で四議席にとどまり、選挙区では現有議席を失うものとなりました。

 「こんどこそ勝ってほしい」という思いでご支持いただいた有権者のみなさん、「何としても勝ちたい」と猛暑のなかご奮闘いただいた支持者、後援会員、党員のみなさんの期待にこたえる結果が出せなかったことはたいへん残念であり、党中央を代表しておわびいたします。そして、みなさんのご支持・ご奮闘に、心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)

 わが党が獲得した得票と得票率は、比例代表で四百三十六万票(7・80%)、選挙区で五百五十二万票(9・84%)でした。わが党の国政選挙の比例得票(率)は、三年前の参議院選挙で四百三十三万票(7・91%)まで押し戻された後、昨年の総選挙での四百五十九万票(7・76%)につづいて、今年の参議院選挙と、三回連続して得票で四百万票台、得票率で8%弱という結果となっています。この現状をいかに前向きに打開して、新しい上げ潮をつくりだすかは、わが党が直面している大きな課題であります。

 この間、選挙結果について、党内外から多くの声がよせられました。私たちは、その一つひとつを真剣に受け止め、総括と教訓をひきだす作業をおこないました。党支部・党員や党機関から直接、経験や教訓、意見を聞き、総括に生かすとりくみもすすめてきました。それらをふまえ、幹部会報告では、この政治戦から何を教訓としてくみだすか、情勢を前向きに打開するために今後何がもとめられているか――についてのべたいと思います。

二、「二大政党制づくり」の動きにたいして効果的にたたかったか

(1)この動きにたいする主体的対応が的確だったか

 総括の第一の角度は、「自民か、民主か」の選択を国民におしつける「二大政党制づくり」の動きと効果的にたたかったか、という問題であります。

 「二大政党制づくり」の動きは、危機におちいった自民党政治を延命させるため、同じ自民党政治の土俵のうえで、政権の担い手だけを政党選択の焦点とし、すぐには政権の担い手とならない日本共産党をはじめから有権者の選択肢から排除する――わが党を政界から締め出す新しい仕組みとして作用するところに、重要な特徴がありました。

 この動きは、昨年の総選挙で、財界を後ろ盾にして本格的に開始されたものでしたが、今回の参議院選挙では、昨年以上の強い力で、有権者の動向に影響をあたえました。それは、わが党の前進をはばむ複雑で困難な客観的条件をつくりだしました。

 この動きにたいするわが党の主体的な対応が、的確で効果的なものだったか――総括で深めるべき中心点はここにあると考えます。

(2)わが党の政策的訴えは情勢と国民の利益にかなっていた

 まず、今回の選挙戦でのわが党の政策的訴えをふりかえってみますと、その内容は全体として、情勢と国民の利益にかなったものであり、それが伝わったところでわが党の政策への共感が広がったことは、ともに選挙戦をたたかった多くのみなさんが共通して実感していることだと思います。

 わが党が参議院選挙にあたって発表した政策は、「国政の六つの熱い焦点」と「日本改革――21世紀の早い時期に、こういう日本をめざします」という二段構えの組み立てのものでした。イラク、年金、消費税、雇用、憲法、北朝鮮の問題など、国民がいま解決をもとめている熱い問題についての解決策をしめしながら、その本格的な実現のためには日本の政治の流れの転換――「日本改革」にふみださざるをえないという組み立ての訴えにしたことは、今日の情勢にかなった適切なものでした。

 また、その内容の一つひとつが、先駆的意義をもっていたことは、選挙後のわずかな期間の情勢の展開でも証明されつつあります。わが党は、選挙戦をつうじて、消費税増税と憲法改定の動きを、「二大政党」の合作による反動的逆流としてきびしく告発・批判してきましたが、その的確さは、選挙後、自民、民主の両党首脳・幹部から、増税と改憲をもとめる声が、堰(せき)を切ったように語られはじめていることにも、しめされています。

 わが党が選挙戦で訴えた政策的内容は、国民の立場にたった正しいものであり、今後の情勢の展開のなかで、一つひとつが重要な意味をもってきます。まず、この点を全党の確信とし、公約の実現のために全力をつくすことが大切であります。

(3)政治論戦の最大の弱点――「二大政党」の動きとのかかわりでの党のおしだし

 問題は、わが党の政策的訴えが国民の共感をえたとしても、「二大政党」のキャンペーンのもとでは、それだけではわが党への一票――政党選択には直接にはつながっていかなかったということです。

 「二大政党づくり」の動きとのたたかいについて、私たちは、六月初旬におこなった幹部会で、昨年の「総選挙のときには、『二大政党制づくり』が、政治情勢の最大の主題」となったが、「この面では情勢は激変し、……『二大政党制』なるものも、色あせてきています」との政党状況の分析をおこないました。この分析そのものは、当時、自民、公明、民主などの諸政党がおちいっていた政策的な混迷を指摘したものであり、全党が立ち上がるうえで重要な役割をはたしました。この混迷は事実でしたが、その後の事態の進展のなかで、「二大政党づくり」の動きが有権者の投票行動におよぼした作用は、私たちの予想以上に強いものがありました。

 現在の「二大政党」の現状は、米国や英国のように固定した体制とはなっていませんし、この動きと国民の利益とのあいだには大きな矛盾が存在しますが、つぎのことを指摘する必要があります。すなわち、財界など日本の支配勢力が、「二大政党」論を前面におしだしてきた最大のねらいは、政権の「受け皿」なるものを用意することによって、国民の関心を、どの党が自民党政治の中身に本気で対決するかにではなく、どの党が自民党に取って代わる「政権交代」勢力になるかに向けることによって、自民党政治への批判が日本共産党支持に結びつくことを阻止しようとすることにありました。

 今回の選挙でも、「二大政党」論のこの作用は、きわめて強い力をもって働き、国民のあいだに自民党政治への批判が強まれば強まるほど、「政権交代」の当面の「受け皿」としておしだされた民主党に、自民党批判の票が集中するという流れが強まりました。

 この動きは、わが党の前進にとって大きな逆風となりました。今度の選挙ほど、「共産党はいいことをいうが力がない」という声に多くぶつかった選挙はありませんでしたが、これは「二大政党」論が、広い有権者をとらえていたことをしめすものでした。

 問題は、こうした「共産党に力がない」という声にたいして、わが党は、それに正面から答える論戦を本格的におこなったとはいえなかった――ここにありました。

 「党のおしだし」ということでは、パンフレット『こんにちは日本共産党です』の配布、これを活用した対話をはじめとして、わが党が積極的な努力を払ったことは事実であります。

 しかし、「『二大政党づくり』の動きとのかかわりでの党のおしだし」――自民・公明という与党勢力にたいして、民主党が政権をかけて「対抗」するという図式がつくられ、そのいずれかの「選択」が国民に迫られているもとで、日本共産党の議席と得票がどういう意義をもつかということを、選挙戦のなかで意識的に提起し、本格的論立てをもって、広く国民に訴える論戦にとりくんだとはいえませんでした。ここに政治論戦のうえでの最大の弱点がありました。

(4)わが党の議席のもつ役割――六つの大切なポイント

 この問題は、今回の参議院選挙の教訓ということにとどまらず、今後、「二大政党づくり」の動きとたたかう政治戦を展開するうえでも、きわめて重要な問題となってきます。

 「二大政党」との対比で、わが党の議席のもつかけがえのない役割をおしだすうえでの大切なポイントとして、つぎの六つの点を強調したいと思います。

第一 自公政治の実態を国民の立場で明らかにする議席

 第一に、日本共産党の議席は、自公政治の実態を国民の立場で明らかにする議席だということです。

 自民・公明による悪政への批判で、わが党が、国会全体を動かす先駆的で的確な批判をしてきたことは、年金問題でも、イラク問題でも、事実が証明しています。これはわが党が自民党政治のゆがみを土台からただす路線にたっているからこそ、できることであります。

 民主党も、政府・与党の「批判」をしますが、多くはわが党とはまったく異なる立場からのものであります。それは、悪政を正面からくいとめる立場からの批判ではなく、促進する立場からの「批判」であります。「構造改革」でも、「不良債権」問題でも、年金問題でも、民主党の政府・与党にたいする「批判」というのは、「これでは足りない」「スピードがおそい」「抜本改革ではない」という、“もっと徹底的にやれ”という立場からのものでした。だから「批判」そのものが本質的な力をもたず、逆に悪政を加速する役割をはたします。

 こうしたなかで、国民の立場にたって、自公政治への正面からの批判の論陣をはり、政治の実態を国民の前に明らかにできるのは、日本共産党の議席だけであります。

第二 「二大政党」が共同して進める悪政に反対する議席

 第二に強調したいのは、「二大政党」が共同して進める悪政に反対する議席であるということです。

 「二大政党」なるものが、共同して推進する悪政にたいして、日本共産党の議席は、国民の声を代弁してそれに反対をつらぬく、かけがえのない議席であります。

 昨年の有事法制と今年の有事関連法は、自公と民主の談合によって共同の法案がまとめられ国会におしつけられました。消費税増税をめぐっても、自公・民主の「三党合意」にもとづく協議で、共同で増税への道筋をつける動きがつよまっています。憲法九条改定でも、「二大政党」による改憲の競い合いのなかから、共同で憲法改定案を作成する動きが追求されています。

 日本共産党の議席は、「二大政党」が共同で推進する悪政にたいして、国民が反対の声をあげ、運動をすすめるさいに、国会での最もたしかなよりどころとなる議席であります。

第三 国民のための改良の実現をはじめ、国民の要求を国政に反映させる議席

 第三に、日本共産党の議席は、国民のための改良の実現をはじめ、国民の要求を国政に反映させるうえで、なくてはならない議席であります。

 わが党の議員団は、国民運動と共同して、国政を動かす多くの実績をかちとっていますが、これもわが党ならではの立場が根本にあります。たとえば「サービス残業」根絶をはじめ、大企業の無法・横暴から国民の暮らしと権利を守るとりくみも、わが党だからこそできることであります。労働法制の「規制緩和」と称して、人間らしく働くルールを壊すことを競い合ってきた、自公と民主には、どんなに議席が多くてもこうした仕事をすることはできません。

 介護保険制度の改善、無駄と浪費の公共事業の一掃などの要求の実現も、日本共産党ならではのものです。介護保険制度の国庫負担削減に賛成している自公と民主は、この問題での国民の要求にこたえる立場も力ももてません。地方政治で「オール与党」の陣営を構成している諸党には、公共事業の浪費の問題でも、具体的な各論になると民主的改革の立場にたてません。

第四 議会制民主主義を守る議席

 第四に、日本共産党の議席が、議会制民主主義を守る議席であることを強調したいと思います。

 「二大政党づくり」の動きは、議会制民主主義を形がい化し、破壊する動きと、一体のものであります。(イ)衆院比例定数削減、単純小選挙区制への策動など、民意をゆがめ、日本共産党を国会から排除し、国民の意思が反映されない国会をつくることを志向していること、(ロ)国会運営においても、少数政党の排除、多数を頼んでの強権的運営、「審議拒否」や「バリケード戦術」など、「審議をつうじて問題を明らかにする」という議会政治の土台を危うくしていること、(ハ)企業・団体献金を温存しつづけるだけでなく、日本経団連による“通信簿式”献金に象徴されるように、政治と政党を金で買収する政治をいっそうひどくしていること、(ニ)国民に「痛み」を強いながら、毎年三百億円をこえる憲法違反の政党助成金を山分けしていること、などがあげられます。

 日本共産党の議席は、こうした民主主義を破壊する動きに正面から立ちはだかり、国民主権の最大の制度的保障である議会制民主主義を守るうえで、かけがえのない役割を担っています。

第五 世界の諸国民と日本国民の平和の願いをつなぐ議席

 第五に、日本共産党の議席が、世界の諸国民と日本国民の平和の願いをつなぐ議席となっていることであります。

 わが党は、政権にはついていませんが、アジアと世界の諸国民・政府と積極的に交流し、彼らと日本国民の平和の願いをつなぐ政党として、大きな役割をはたしています。とりわけ、わが党の自主独立の伝統と、いっかんした反戦平和の歴史は、アジアと世界の諸国民・政府との友好と信頼の土台となっています。日本共産党が国会の衆参両院で議席をもっていることは、これらの野党外交をすすめるうえでも、欠くことのできない力となっています。

 この役割は、他党と対比しますと、その値打ちがきわだちます。「日米同盟」を憲法はおろか国連憲章のうえにおく異常な対米追随で、世界から孤立を深める政府・与党の外交姿勢との対比でも、また憲法を改定して海外での武力行使を可能にするという重大発言を訪米先でおこなって、相手側の歓心をかおうとする民主党の外交姿勢との対比でも、日本共産党の自主独立の平和外交こそ、日本国民に責任をもった外交であります。

第六 この議席を増やしてこそ、民主的政権の道が開ける

 第六に強調したいのは、日本共産党の議席を増やしてこそ、民主的政権の道が開けるということです。

 「二大政党」の動きは、「政権交代可能」が最大の売り物ですが、大企業優先、米国いいなりという古い政治の枠組みにいっさい手をつけない「政権交代」では、かりに実現したとしても、「政治を変えたい」という国民の願いを実現することは、けっしてできません。そして現実におこっていることが何かといえば、民主党が、政権につきたいがために、外交、内政などの政治の基本路線でいよいよ自民党と区別がつかない政党になり、そのことが危機におちいった自民党政治の延命を助けるという事態であります。

 日本共産党の議席を大きくすることこそ、自民党政治を土台から変える国民中心の民主的政権――民主連合政府の樹立にむけての、確実な力となるということを、確信をもって訴えていきたいと思います。

 以上、六つのポイントをのべました。「二大政党づくり」の動きに対抗する政治論戦をすすめるうえで、国民の利益にたった政策的訴えはもちろん大切であります。同時に、それだけでは足りません。そうした政策的訴えとともに、以上のべたような諸点での「『二大政党づくり』の動きとのかかわりでの日本共産党のおしだし」――これを政治論戦の太い柱にすえ、情勢の進展にそくしていっかんして追求・発展させることが重要であったし、今後いよいよ重要になります。このことを、今回の参議院選挙の政治論戦における最大の教訓として、今後に生かしたいと考えるものであります。

三、選挙活動のいくつかの総括と教訓について

 総括の第二の問題として、選挙戦の、政策、宣伝、組織活動にかかわる、いくつかの教訓について、報告します。

(1)政策的訴え――国民的共感と合意を広げるために改善すべきいくつかの問題

 まず政策的訴えについてです。全国からの感想では、「政策の中身はよかったが、訴え方に工夫がいる」という意見が、相当数よせられましたが、これは真剣に受け止めるべき声であります。さきにのべたように、今回の選挙戦での政策的訴えは、大筋として的確なものでした。同時に、それが国民的な共感と合意を広げるためには、なお改善すべきいくつかの問題があります。

大企業の横暴をおさえる経済改革の訴えについて

 一つは、大企業の横暴をおさえる経済改革の訴えについてです。この問題は、選挙戦でおおいに訴えたわけですが、大企業にたいする国民意識の変化にそくした、訴えの改善の努力が必要であります。

 七〇年代前半には、公害問題や物価問題などで、「大企業の横暴」が絵にかいたように明らかになり、直接に国民的批判の対象とされました。しかし、八〇年代、九〇年代をつうじた相手側の「民間は必死に努力している」式のキャンペーンのなかで、「大企業の横暴」の実態はいっそう深刻になっているにもかかわらず、それが国民に見えにくくなっているという状況があることも事実です。それだけに、大企業・財界が、日本の経済、政治、国民生活を、どのように横暴に支配しているかの実態を、生きた事実にそくして日常的に批判し、告発する活動がきわめて重要であります。

 いま一つ、「大企業が不振になったら、日本経済も沈没する」という国民意識にも留意した訴えが重要です。わが党が、「大企業打倒」「大企業敵視」の立場ではないこと、わが党が大企業に社会的責任と負担をもとめるときに、それは実態を無視した無理筋の要求ではなく、逆に大企業が社会的責任と応分の負担をはたしてこそ、日本経済も長い目で健全な発展が保障され、企業活動にとっても持続的発展をもたらすものであることなどを、大きな視野にたって訴えていく必要があります。

消費税増税に反対する訴えについて

 いま一つは、消費税増税に反対する訴えについてであります。この問題でも、国民意識にそくした訴えの改善が必要だと考えます。

 導入から十五年たった今日、支配体制側のさまざまな「消費税必要」論の氾濫(はんらん)ともあいまって、少なくない国民がこの税を「やむをえない」ものと考えるという面も生まれています。それだけに「消費税=悪」と頭から前提とする訴えでなく、逆進性を本性とする弱いものいじめの悪税ぶり、ほんらいの民主的税制とは直接税中心、累進・総合、生計費非課税を原則にすべきであることなど、“そもそも論”をていねいに訴える努力をつよめることが重要です。そうしてこそ、消費税に頼らなくとも安心できる社会保障制度が築けるというわが党の対案が生きた説得力をもつことができます。

さまざまな社会問題にたいする国民の関心にこたえる訴えについて

 さらにもう一点のべたいのは、さまざまな社会問題にたいする国民の関心にこたえる訴えについてであります。

 外交問題、経済問題とは別の分野として、少子化、少年犯罪、教育問題、男女平等の問題など、さまざまな社会問題にたいする国民の不安と関心はきわめて高いものがあります。わが党は、これらの問題に一番先駆的にとりくんできた政党であります。第二十二回党大会での教育問題での提案、第二十三回党大会での社会の道義的な危機の打開に関する提案など、政党のなかではどの党よりも先駆的に系統的な提言ととりくみをおこなってきました。

 しかし、これらは大づかみの問題提起にとどまっており、選挙戦の実際の論戦と対話のなかでは、十分に生かされないままに終わっていることも事実です。この間積みあげてきた問題提起を、政策的提起としてみんなが語れるところまで仕上げていくことも重要な課題であります。

(2)宣伝活動――「二大政党」の宣伝戦略に対抗して  改善・強化の探求を

 つぎに宣伝活動の総括と課題について報告します。この分野でのとりくみには、内外から多数の意見、批判、要望がよせられました。

 宣伝活動の内容面での最大の反省点は、政治論戦の弱点と不可分に結びついた問題ですが、「『二大政党づくり』の動きとのかかわりでの党のおしだし」が、党中央が発行した宣伝物のなかで、きわめて弱かったことであります。

 たとえば、政党ポスターは、送付時期がおくれたことや、国民感覚にマッチしたデザインの工夫が足りないことなども反省点ですが、最大の問題は、全体として政策ポスターが中心となり、「二大政党づくり」の動きにかみあってずばりと党をおしだすポスターが、作成できなかったことにありました。同じ弱点は、全戸配布の宣伝物にも、あらわれました。

 これらを教訓として、今後に生かしたいと思います。

 それにくわえて、今後の選挙戦における宣伝活動を考えたときに、真剣に考えなければならない問題があります。それは、自民、民主など「二大政党」による宣伝活動の規模が、政党助成金をふんだんにつかった新聞広告、テレビCMなど、ひじょうに大きな規模となっており、これに対抗する宣伝活動をどう強化していくかが、新しい課題となっていることです。党としてつぎのような諸点で宣伝活動の改善・強化を探求することが、もとめられています。

全戸配布網を築きあげる努力

 一つは、全戸配布網を築きあげる努力です。巨大に発達したマスメディアによる影響、相手側の大規模な宣伝戦略にたいして、わが党が対抗する基本は、やはり全戸配布の宣伝物の配布であります。ここでは手にとったら「読みたくなる」、配布するみなさんに「配りたくなる」と思っていただけるような、国民の心をとらえる宣伝物をつくるうえでの党中央のとりくみの改善と努力が必要ですが、同時に、全国津々浦々に全戸配布網を築きあげることに、正面からとりくむことがもとめられています。全国からの報告でも、全戸配布の宣伝物が配りきれない地域がふえ、配布活動に時間がかかるなどの問題が報告されています。根本の打開策は、党の力を強めることにありますが、いまある力をくみつくして全戸配布網を築きあげる努力も必要であります。職場支部、青年支部と協力し、後援会や読者、支持者の力も思い切って借り、配布体制の強化のために力をつくしたいと思います。

わが党ならではの「草の根の宣伝力」の強化

 二つ目は、わが党ならではの「草の根の宣伝力」の強化であります。参院選でも、党支部が発行する地域新聞、職場新聞や、後援会ニュース、読者ニュースなどが、住民や労働者に密着した身近な話題の提供や、わが党の立場を明らかにし、党への信頼を高めるうえで、たいへん大きな威力を発揮したことが、全国各地から報告されています。これらの活動は、ハンドマイク宣伝や掲示板活動などとともに、草の根で国民と結びつく組織をもっているわが党ならではのものであり、思い切った改善・強化をはかりたいと思います。

新しいメディアの効果的な活用

 三つ目は、新しいメディアの効果的な活用であります。インターネットの活用は、党中央のいっそうの努力とともに、地方党機関、議員、支部もおおいに重視してとりくむことが大切であります。中央としてもそれをサポートするとりくみを強めます。携帯電話を活用した対話、情報提供も、青年分野で成果をあげつつありますが、研究・発展させたいと考えます。

新聞広告、テレビCMについて

 四つ目は、新聞広告とテレビCMについてであります。財政的に制約があるなかで、これをいかに効果的に活用するかが課題であります。今回のとりくみでは、広告ということでいいますと、憲法記念日に掲載した憲法問題の広告、選挙中にスポーツ紙に掲載した広告などに積極的反応がよせられましたが、さらに力になる活用を検討したいと思います。今回の選挙でテレビCMをおこなったことは積極的意味をもちましたが、これをどの時期に、どういう内容と規模でおこなうかについて、あらかじめ十分に検討してのぞむべきでありました。これらを今後の教訓として生かしたいと思います。

(3)「比例を軸に」をつらぬく点での党中央のイニシアチブについて

 つぎに、比例代表選挙を軸にしたたたかいについてのべます。今回の選挙戦で、わが党は、比例代表選挙で五議席を「絶対確保議席」として目標にするとともに、比例代表選挙を選挙戦はもとより、あらゆる党活動の軸にすえ、ここでの執念をもったしのぎを削るたたかいにとりくみ、一票一票を積みあげることを、選挙戦の大方針としてのぞみました。

 このとりくみにかかわって、いくつかの県からの報告で、「事実上、選挙区中心のとりくみに流れ、比例独自のとりくみが弱かった」と率直にのべられていることは、中央自身の「比例を軸に」をつらぬくうえでの指導的イニシアチブの問題点として、受け止めなければならないと考えます。

 たとえば、この点で、「全国は一つ、比例代表は全国どこでも、すべてが日本共産党の議席につながる一票」「あらゆるつながりを生かして比例の支持を広げよう」という訴えを、「しんぶん赤旗」で正確に大きく打ちだしたのは、最終盤になってからでした。選挙闘争本部の日々の指導や援助、各県の宣伝物作成などへの助言でも、「比例を軸に」を名実ともにつらぬく点で、不徹底さがありました。

 非拘束名簿式のもとでの比例代表選挙の訴えは、今回の選挙では、「日本共産党名または候補者名で投票してください」とする、という方針でとりくみました。この方針は、「絶対確保議席」を追求するという点では、前回参議院選挙に比べれば改善された方針でしたが、「党名でも個人名でも」という方針が、訴えづらい、という声もよせられました。今回のたたかいをふまえ、さらに方針の検討をはかるようにします。

(4)選挙区――現有議席を失った痛恨の結果をどういう角度から総括するか

 つぎに、選挙区選挙のたたかいについてのべます。選挙区選挙について、わが党が四十七都道府県のすべてに公認・推薦候補をたててたたかったことは、有権者にたいする責任をはたすうえでも、比例代表選挙での得票の確保という点でも、積極的意義をもつものでした。

 このなかで、七現職区での議席確保に挑戦しましたが、わが党がすべての議席を失う結果となったことは痛恨の思いであります。

 政党間の力関係の差をくつがえして勝利をかちとるにはいたらなかった問題について、各選挙区からの報告では、党そのものへの支持の大きな波をつくることに成功しなかったことが率直にのべられています。選挙区のたたかいでも、勝利をかちとるためには、「二大政党づくり」の動きとのかかわりで日本共産党の議席がどんなに大切かというおしだしを、政治論戦のなかで太くつらぬくことが重要でありました。そこに弱点があったことが、選挙区でも議席を確保できなかった重大な問題点となりました。

 同時に、七現職区でのたたかいを総括するさいには、比例代表での前進を土台にしつつ、選挙区自体のたたかいで他党支持層や無党派層にも働きかけて、どれだけ支持の上積みをはかることができたかが、重要な観点になります。この点で、大会決定にもとづき、「過去にやったことのないとりくみに挑戦する」意気ごみで、中小都市での「網の目」的な演説会の開催などをふくめた積極果敢なとりくみをすすめ、三年前の参議院選挙に比べて得票や得票率を大きくのばし健闘した選挙区が生まれたことは重要であります。

 愛知選挙区では、衆議院選挙比で比例代表での得票と得票率をのばすとともに、その比例得票の一・八倍の選挙区得票を獲得し、三年前の選挙区得票の一・五倍、過去最高得票で当選した九八年参院選挙の得票にほぼ匹敵する結果をつくりました。これは、全国的に複雑で困難な流れがおこっても、選挙区のたたかいようによっては勝利にせまる条件をつくりうることをしめすものとして、重要であります。

四、党組織の実力という問題について

 総括の第三の問題は、どんな激動のもとでも揺るがず前進できる、強大な党を築きながら選挙をたたかうという点でどうだったかということです。

(1)“党を大きくして選挙をたたかう”運動への本格的挑戦は画期的意義をもつ

 まず全党の確信にすべきは、私たちがこの参議院選挙にむけて、“党を大きくして選挙をたたかう”運動に本格的に挑戦したことが、きわめて大きな積極的意義をもつものだったということであります。

 全党は、一月の党大会で決定した新しい党綱領と党大会決定を力にして、「しんぶん赤旗」の読者を一・三倍にする運動に、大志と情熱をかたむけてとりくみました。党大会から参議院選挙にむけて、全党的に五カ月連続の前進で約八万人の読者を増やし、ほぼ全都道府県とほとんどの地区委員会が五カ月連続の前進をかちとり、七割をこす党支部が読者拡大で成果をあげました。これは画期的意義をもつとりくみとなりました。

 何よりもこのとりくみは、総選挙での後退のショックをのりこえ、全党に新たな活力と自信をつくりだす力となりました。全国の多くの支部や機関から、選挙後、「党の自信をとりもどすとりくみとなった」「選挙活動全体に勢いをあたえた」との報告がよせられています。「しんぶん赤旗」の活動は、党活動の中心をなす活動であり、ここでの前進、後退は、党と国民との結びつきのバロメーターであるとともに、党の活力のバロメーターともなることを、この間のとりくみはしめしました。

 さらにいま一つのべたいのは、読者の三割増に正面から挑戦したからこそ、これまでの党活動の延長線上ではない、新しい創造的なとりくみが、さまざまな分野でおこなわれたということです。「全支部成果・全支部前進」をめざす意識的なとりくみ、「全国は一つ」の立場にたって党員のもつあらゆる結びつきを生かした働きかけの探求、「しんぶん赤旗」を広げた対面での対話・支持拡大のとりくみ、職場支部の活動の発展のための新たな努力がはらわれたことなどは、今後の党活動、党建設の前進に、発展的に生かすべき貴重な財産であります。

 全国からの多くの感想で、「このとりくみがあったからこそ、難しい条件のもとで、得票を維持することができた」という声がよせられていることは重要であります。私は、党大会決定にこたえて、困難にたじろがず、党勢拡大のための不屈のとりくみをすすめた、全国のみなさんに、心からの敬意を表明するものであります。(拍手)

 同時に、その到達そのものは、総選挙時比でわずかな前進にとどまったことも直視しなくてはなりません。七月一日時点の党勢拡大の到達点は、総選挙時比で、日刊紙99・7%、日曜版102・8%、党員拡大では大会現勢比で約九百人増にとどまりました。この参議院選挙が、大会決定でわが党の「根本的弱点」とした問題の抜本的改善がはかられないままの選挙となったことも事実であります。党大会決定では、「強大な党建設なくして、参議院選挙での目標達成はない。これは全党の大奮闘と探求を必要とする一大事業だが、それにかわる安易な道は他にない」と、党勢拡大の事業のもつ決定的意義を強調しましたが、参院選の結果は、党勢拡大の抜本的な前進なしに、選挙戦での党の前進の保証はないことをしめすものとなったことを、全党の教訓として銘記しなければなりません。

 今回の選挙結果をみても、比例代表の得票率が政党間で上位に位置している自治体をみると、それらのほとんどで、党員の人口比、読者の有権者比で、相対的にかなり高い水準の陣地を築いているのが、共通した特徴であります。

 参議院選挙にむけた党勢拡大の運動の成果を全党の確信にしつつ、その到達点をリアルに直視し、どんな激動の情勢のもとでも、選挙で勝てる強く大きな党を草の根からつくりあげる仕事に、新たな意気ごみでのぞみたいと思います。

(2)すべての党員の力を結集する党活動をいかにつくるか――すぐれた経験から学ぶ

 党組織の実力という問題にかかわって、いま一つ総括すべきことは、わが党がもてる力を発揮して選挙をたたかったかということです。

 各都道府県からの報告によりますと、今回の参議院選挙にとりくんだ支部は97・5%、党員は55・3%でした。とくに大会決定を全党に徹底する課題で、ハイライトビデオの大規模な活用など、積極的なとりくみもおこなわれましたが、読み始めた党員が48%、読了した党員が25%にとどまったことは、大きな反省点であります。

 わが党の活動が、国政選挙という重要な政治戦においても、半数をすこしこえる程度の党員によって担われ、党のもっている潜在的な力がひきだしきれていない現状をどう打開し、いかに全党員、全支部が、自覚的・自発的に党活動に参加する党をつくりあげていくか。ここに全党が探求すべき一つの大きな課題があることを、選挙戦のとりくみは痛感させるものとなりました。各都道府県・地区からも、この問題での真剣な自己分析の感想や意見がよせられました。党中央としても、この総会にむけて、すべての党員が参加する活動に現にとりくんでいる党支部では一体どんな活動をしているのか。その教訓を学ぶ努力をすすめました。そのために、今回も「すすんだ支部の経験を聞く会」をもちました。

 それらをつうじて私たちがまず、あらためて学ばされたことがあります。それは、これらのすすんだ支部では、一人ひとりの党員が多面的な国民との結びつきをもっていることに光をあて、また結びつきを広げることに力を入れていることであります。

 ――地域での近所づきあいや、職場での仲間のつきあいなどが重視され、支部と党員が、まわりの人々と政治問題での立場は違っても、何でも話し合い、親しくつきあっています。

 ――それは、党員自身のさまざまな要求や趣味や関心にそくした活動にもなっています。スポーツ、旅行、料理、絵手紙など、実に多彩な活動を、まわりの人々とともに党員がおおいに楽しんでいます。町内会や自治会などの世話役活動や、多様なボランティア活動にも参加しています。

 すすんだ支部の経験を聞きますと、こうした身近な国民との生きた結びつきを重視することが、あらゆる党活動を前進させる活力の源泉になり、土台となっています。この土台のうえに、すすんだ支部では、つぎのような多面的な活動にとりくんでいることが、共通していました。

 ――地域や職場の人々にとって、党支部が身近な相談相手になり、要求実現のかけがえないよりどころとして、なくてはならない役割をはたしていること。

 ――週一回の支部会議の定例化を中心にして、なんでも話し合える温かい支部――心の通った人間集団づくりへの努力がはらわれていること。

 ――後援会ニュースを軸に後援会員を増やし、後援会員や読者との日常的な結びつきを深め、ともに要求実現の活動にとりくみ、選挙をたたかう努力をはらっていること。

 ――活動の中で学習に大きな比重をおいていること。そのさい、難しくせずに「しんぶん赤旗」の紙面をつかった学習に力を入れるとともに、党の決定や綱領路線の学習に粘りづよくとりくんでいること。

 ――たえず新しい党員を迎え入れ、一人ひとりの成長のために心のこもった援助をしていることが、支部活動に新しい活力をもたらし、それぞれの党員が初心にたって結集する大きな力になっていること。

 ――支部の規模にふさわしい複数の指導部を確立していること、

などであります。

 すべての党員の力を結集する党活動とは、こうした多面的で豊かな活動に、地道に粘りづよくとりくむ努力のなかでこそ、築くことができることを、すすんだ支部のとりくみはしめしています。

 こうしたすすんだ支部を、一つひとつ広げ、いかに全党の大勢にしていくか。ここにいま党中央をはじめ全国の党機関が、じっくりと腰をすえ、知恵と力をつくしてとりくむべき、大きな課題があります。

(3)新しい世代への継承を着実にはかるとりくみを、どれだけ真剣に追求したか

 それぞれの世代の活力を生かしながら、新しい世代への継承を着実にはかるとりくみを、選挙戦のなかでどれだけ真剣に追求したか――ここにも総括で光をあてるべき重要な問題があります。

 選挙戦の感想と意見のなかで、わが党の党員の年齢構成の高まりのもとで、党の行動力が低下しているという声がよせられています。年配の党員の多くが、これまで蓄積してきた党活動の経験、長い人生経験を生かして、元気に活動し、大きな役割を担っていることは、わが党のかけがえのない財産であります。同時に、わが党の年齢構成をみるさい、現在は、三十代、四十代、五十代の「働き盛り」の世代が党員の六割をしめていますが、いまここで新しい世代を党に迎え入れる努力をしなければ、わが党の世代的継承が保障されないことになりかねないことも、直視すべき事実であります。

 もちろん新しい世代への継承という仕事は、一朝一夕(いっちょういっせき)になるものではありません。参院選の総括として重要なことは、党機関と党支部が、選挙戦のなかで、この仕事にどれだけ真剣にとりくんだかにあります。とくに党全体の世代的継承を考えたときに、青年・学生のなかでの活動と、職場支部の活動の強化は、二つの重要な柱となります。参議院選挙のたたかいのなかで、この双方の分野で、まだ部分ですが、積極的なとりくみが始まっていることに注目する必要があります。

 青年・学生の活動では、最終盤の三日間だけでも全国一千カ所以上でおこなわれた「お帰りなさい」宣伝、五十万枚にのぼる「青年ハガキ」、百五十万枚におよぶ青年むけビラの配布など、これまでにない規模で、青年・学生が先頭にたって若い世代に働きかける選挙戦が展開されたことは、全党を励まし、選挙戦全体の活力を高めました。このなかで青年支部が鍛えられ成長していること、今年に入って全国で七つの民青同盟の地区委員会が再建されていることも大変うれしいことであります。若い世代が新鮮なエネルギーを発揮しつつあることの土台に、平和や雇用などの問題で仲間とともにたたかいをおこしていること、新しい綱領の理論的魅力が青年・学生をとらえつつあることも、注目すべきであります。

 職場支部の活動では、全国各地で、「職場支部交流決起集会」が開かれ、職場での要求にもとづく結びつきと闘争に粘りづよくとりくみながら、「党を大きくして選挙に勝ち、政治を変え、職場を変えよう」という見地で、職場を基礎とした党勢拡大と選挙闘争の自覚的なとりくみが強まったことは、前進であります。とくに大企業・財界がリストラの嵐のなかで、労働者をバラバラにする攻撃をかけてくることに対抗して、職場支部と労働者党員が、すべてのつながり・結びつきを生かして働きかける運動を広げていることも、大きな発展性のあるとりくみです。

 党機関が、この選挙戦をつうじて、青年・学生のなかでの活動と、職場支部の活動という、党の現在とともに未来を左右する二つの重要な分野で、どういう前向きの変化がおこっているかをよくつかみ、それを励まし発展させ、全党に広げていく努力をはかることが、強くもとめられています。

 以上が、党の実力という問題にかかわって、参議院選挙からくみだすべき総括と課題の中心点であります。

 「二大政党づくり」の動きを打ち破って、国政選挙でわが党の前進をかちとるうえで、わが党の実力は足りません。情勢のもとめるものにてらして量質ともに立ち遅れています。どんな複雑で困難な情勢に直面しても、自らの力でそれを主導的に切り開くことができる実力を、われわれはつけなければならない――ここに参院選の結果から導くべき最大の教訓があることを銘記して、今後にのぞみたいと思います。

  国民中心の新しい政治の軸をつくるたたかい

一、財界主導の「二大政党制づくり」の動きに対抗する国民中心の新しい政治の軸を

(1)自民党政治の危機が深刻になるもとで、日本共産党の前進を阻む力も強力に働く

 報告の第二の主題は、「二大政党制づくり」の動きに対抗して、国民中心の新しい政治の軸をいかにしてつくり、強めるかという問題であります。

 このたたかいをすすめるうえで、「二大政党づくり」の動きがどのような政治的背景のもとに生み出されたものかをとらえることが重要です。

 この動きは、根本的には、自民党政治の支持基盤の衰退と崩壊の過程がすすみ、彼らが従来のやり方では支配を維持できない危機の時代に入ったために生み出されたものでありました。一九九三年は、その大きな転機となりました。この年に自民党は大分裂をおこし、いったん政権を失い、一年たらずで政権をとりもどしましたが、それ以降、自民党は単独では政権運営ができなくなり、はじめは社会党とさきがけ、つづいて自由党、さらに公明党との連立によって、ようやく政権を維持するという状態におちこみました。

 自民党政治のこうした危機の深まりに対応して、支配体制の側でも、古い体制を延命させる新たな政治戦略がとられました。それは、大企業優先、米国いいなりという、自民党政治の枠組みには手をつけずに、同じ基盤のうえで別の政権の「受け皿」を用意し、自民党がどうなろうと、支配体制そのものは守りとおすという戦略でした。

 その第一の具体化が、一九九三年から九四年の「非自民」政権でした。第二が、「小泉政治」という、自民党政権でありながら「自民党をぶっこわす」といういわば「非自民」的な主張をかかげる動きでした。そして第三が、今日の「二大政党づくり」の動きであります。

 これらに共通しているのは、政治の中身の改革を問題にせず、政権の担い手だけを問題にすることにありました。そしてこの動きは、政治制度のうえでも、小選挙区制の導入・実施という反民主主義の暴挙と一体にすすめられました。また、この時期には謀略的な反日本共産党攻撃など、わが党を政界から締め出すかつてない圧力がくわえられました。これらは、重なりあって作用しあい、党の前進にとって重大な障害をもたらすことになりました。

 こうして、自民党政治の危機がいよいよ深刻になるもとで、その正面からの対決者である日本共産党の前進を阻む力が一段と強力に働く――これがこの十年来の政治状況の大きな特徴となっています。

 同時に、同じ基盤のうえでの「受け皿」づくりという戦略は、古い政治体制と国民との矛盾を解決する力をもちません。古い体制の一時的な延命になっても、逆に大局的には矛盾と危機をいっそう深刻にします。そのことがわが党のたたかいと国民的体験をつうじて明らかになった時には、政治の前向きの激動的展開につながりうる――このことも、私たちが体験してきたことであります。「自民か、非自民か」の偽りの図式が崩壊したときには、この動きにくみせず、筋をつらぬいた政党として、日本共産党への支持と期待が広がり、一九九〇年代後半にはわが党は一連の大きな躍進を記録しました。こうした経験もふまえ、この動きは私たちのたたかいいかんで打ち破れるという大局的展望にたって、活動することが重要であります。

(2)この動きに対抗して新しい政治の軸をつくるたたかいを日常の政治活動の要に

 ただ同時に、今日私たちがたちむかっている「二大政党づくり」の動きは、これまでの「受け皿」づくりの動きとくらべても、はるかに根強い力をもった動きであるということを、正面からとらえる必要があります。

 とくにこの動きが、財界が直接のりだして政界を再編成し、政界を自らの直接の支配下におくという野望と結びついてつくりだされていることを、重視しなければなりません。「二大政党」の担い手である自民党や、民主党が、深刻な矛盾や混乱におちいっても、財界が主導している「二大政党」化をめざす動きが、それをのりこえて強力に作用することは、参議院選挙で私たちが体験したことでありました。

 またこの動きは、自民党政権が崩壊したさいに民主党を「受け皿」政党とするというだけでなく、日常的にも、自公勢力と民主党を競わせることで悪政を国民におしつけること、そして何よりも自民党への批判が高まったさいに民主党をその「受け皿」にして日本共産党の前進をおさえこむこと――こういう一連の特徴をもっています。したがってこの動きとのたたかいは、選挙のときだけの問題ではなくて、日常の政治活動の要にすえられるべき問題であります。

 「二大政党づくり」の動きにたいする政治的な対抗軸――国民中心の新しい政治の軸をつくりだす仕事に、ただちに本腰を入れてとりくみ、日常不断の系統的な活動をすすめることは、情勢がわが党に強くもとめている課題であります。

二、国民の苦難と要求にこたえた諸活動、二大反動政治を許さないたたかい

 つぎに国民の苦難と要求にこたえた諸活動、二大反動政治を許さないたたかいについて報告します。

(1)国政の緊急の諸課題で国民の要求にこたえるたたかいを

 まず直面する政治課題についてのべます。この秋から来春を展望して、国政の焦点となる緊急の諸課題で、わが党が国民の要求にこたえるたたかいを、おおいにすすめることがもとめられています。

「国民の苦難と要求のあるところ日本共産党あり」の原点にたった活動

 まず、「国民の苦難と要求のあるところ日本共産党あり」の原点にたった活動であります。このことをあらゆる活動の土台にすえてとりくむことを、まず強調したいと思います。

 参院選後の期間をふりかえってみましても、新潟・福島・福井をおそった豪雨災害、それにひきつづいて全国各地に被害をもたらした台風・大雨による災害の問題、関西電力・美浜原発でおこった大事故など、国民の命と安全を脅かす重大な問題があいつぎましたが、わが党は国会議員団と地元党組織が共同して、どの問題でも国民の苦しみと不安の解決を第一にした奮闘をおこないました。また、それぞれの問題の根底にある政治のゆがみと責任をただす立場で、政府に働きかけました。

 わが党は、どんな問題にさいしても、国民の命と安全を守り、暮らしを守るために献身するという、立党の原点にたった活動を、今後もいっかんして重視していくものであります。

年金問題をはじめとする社会保障制度改悪とのたたかい

 つぎに、年金問題をはじめとする社会保障制度改悪とのたたかいについてであります。

 改悪年金法の実施を中止させるたたかいは、この秋が重要なヤマ場となります。この間の特徴は、改悪年金法が、国民に負担増と給付減という激烈な「痛み」をおしつけるだけでなく、これを実施したとしても早晩、破たんすることがはっきりしたことにあります。この間明らかになった出生率、国民年金の納付率、厚生年金の赤字額などは、改悪年金法が約束する給付水準、負担水準ですら、虚構にもとづく机上の空論にすぎなかったことをしめしました。何よりも国民の八割が実施中止をもとめている制度が、立ち行くことはありえません。

 どのような年金制度をめざすにせよ、国民が安心できる制度をつくるうえで、改悪年金法を白紙にもどすことは不可欠の前提であります。わが党は、改悪年金法の実施を中止させるために、国民運動と共同して力をつくします。そして「いまも将来も安心できる年金制度を」という国民の切実な願いにこたえ、わが党が提案してきた最低保障年金制度の実現の必要性をひきつづき訴えていくものであります。

 社会保障をめぐっては、二〇〇六年度実施予定の介護保険の見直し、二〇〇五年度実施予定の生活保護の給付水準削減、二〇〇八年度実施予定の高齢者の負担増を中心とする医療制度見直しなど、各分野で改悪の計画が目白押しであります。それが生活保護削減に象徴されるように、憲法二五条が保障した生存権を乱暴にふみにじり、国民生活全体の最低限度をいっそう引き下げる攻撃となっていることは重大です。国民生活、とりわけ低所得者の生活は、ひじょうに深刻になっており、改善を願いながらなかなか声をあげられない人々が膨大に広がっています。わが党が、そうした人々の相談にのりながら、ともに制度の改悪に反対し、改善をもとめるたたかいを、国政の場でも、草の根でも、粘りづよくすすめることが、強くもとめられています。

自衛隊のイラクからの撤退をもとめるたたかい

 つぎに、自衛隊のイラクからの撤退をもとめるたたかいについてのべます。自衛隊がイラクに派兵されて半年以上になりますが、この派兵を継続することの矛盾はいよいよ深刻になっています。

 一つは、イラク国民との矛盾であります。六月末の暫定政権への「主権移譲」後も、米軍を中心とする膨大な外国軍が「多国籍軍」と名をかえて事実上の占領軍としていすわりをつづけ、「掃討作戦」と称してファルージャやナジャフでの無差別攻撃を拡大していることが、イラク情勢をいよいよ悪化させています。自衛隊がこの「多国籍軍」の一員として活動をつづけることは、イラク国民とのとりかえしのつかない衝突につながりかねない、きわめて危険な状態となっています。

 いま一つは、憲法との矛盾であります。「自衛隊を戦闘地域に送らないから憲法違反にあたらない」という政府の弁明は、サマワに展開するオランダ軍に死者が出たこと、自衛隊の陣地にたいして迫撃砲などでの攻撃がくりかえされていることをとってみても、いよいよなりたたなくなっています。くわえて自衛隊が武力行使を任務とする「多国籍軍」の一員となり、公然と米軍の指揮のもとに活動することになったことは、従来の政府の憲法解釈からも説明がつかないものであります。

 国際社会の動向をみても、イラクに派兵した三十六カ国のうち、すでにスペインをはじめ五カ国が撤退を完了させ、さらに四カ国が撤退を表明・開始しており、米軍主導の軍事力最優先のイラク支配は、国際的にも孤立を深めています。

 わが党は、自衛隊のすみやかな撤退をあらためて強くもとめるものであります。国際社会の対応としても、米国に米軍のすみやかな撤退にむけた措置をとらせることが、真に国連中心の枠組みのもとで、イラク国民が主人公になった国の再建をすすめるうえで、いよいよ重要となっています。

在日米軍基地をめぐるたたかい

 つぎに、在日米軍基地をめぐるたたかいについてのべます。

 沖縄・宜野湾市でおこった米軍ヘリ墜落事件は、その後の事故処理・現場検証における日本の主権侵害、原因究明をなおざりにしたままの米軍同型ヘリの飛行再開など、米国の横暴きわまる姿勢が、それに屈従する日本政府の姿勢ともあいまって、大きな怒りを広げ、普天間基地の無条件撤去をもとめる運動が広がっています。

 いま、ブッシュ政権のもとでおこなわれている地球的規模での米軍基地の再編の動きのなかで、在日米軍基地は、司令部機能の強化をはじめ地球的規模での戦力投入の拠点としての機動的役割と作戦地域をいっそう拡大しようとしています。また、日米共同での海外での軍事作戦を視野において、米軍と自衛隊の基地共有、演習と運用の一体化が、さらに強力にすすめられようとしています。全国各地で具体化されつつあるこうした基地強化の危険な動きに反対し、米軍基地の撤去をめざすたたかいは、いよいよ重要となっています。

教育基本法の改悪に反対するたたかい

 つぎに、教育基本法の改悪に反対するたたかいについてのべます。六月十六日、自民・公明両党が、教育基本法の「改正」の大筋の内容で合意し、来年一月からの通常国会に、「改正」案が提出される可能性が濃厚な情勢となっています。与党が合意した内容は、つぎのような点で、教育基本法の民主的原則の根幹を壊す、きわめて有害なものとなっています。

 ――一つは、教育基本法第一〇条が「教育は、不当な支配に服することなく」として、行政権力による教育の不当な支配を禁止した条文を、「教育行政は、不当な支配に服することなく」と、子どもや父母、国民による教育行政批判を封ずる中身に、百八十度改変しようとしていることであります。

 ――二つ目は、「政府は、教育の振興に関する基本的な計画を定めること」とし、政府が上から教育内容を教育現場におしつける根拠となる条文をもりこもうとしていることであります。

 ――三つ目に、「教育の目的」に「国を愛する」ことを明記していますが、愛国心とは本来、国民一人ひとりの見識や社会の自主性にゆだねられるべき問題であり、特定の内容をおしつけることによって、国民の内心の自由の侵害につながりかねないことであります。

 これらに共通しているのは、憲法二六条が保障する国民が主人公となった教育の権利を否定し、それを国家による「教育権」に置き換えようという時代逆行の立場であります。

 多くの国民がいま、心を痛めている今日の教育をめぐる諸問題は、教育基本法に問題があるのでなく、その民主的理念を実行してこなかった、歴代自民党の教育行政にこそ責任があります。国民のなかで、教育の危機を打開する対話と運動を広げながら、教育基本法改悪の策動を許さないたたかいを、急速に強めることをよびかけるものであります。

(2)二つの反動政治をくいとめるために、国民多数派を結集する壮大なたたかいを

 つぎに消費税増税と憲法改悪に反対するたたかいについて報告します。

 「二大政党」が共通の旗印にしている、増税と改憲という二つの反動政治をくいとめることは、わが党が総力を傾けてとりくむべき、当面する最大の政治課題であります。これらは、どちらも戦後の日本のあり方の根本からの変更を迫るものであり、それだけに相手側と国民との矛盾は深く大きなものがあります。国民の多数派を結集する壮大なたたかいを広げる条件と可能性は存在しています。まさにわが党の真価が問われるたたかいであります。

消費税増税に反対するたたかい――国民意識の二つの側面をふまえて

 まず、消費税増税に反対するたたかいについてのべます。

 選挙後の与党や民主党の動きをみても、二〇〇七年度の増税実施にむけて、今年から来年にかけて与野党間で協議をすすめ、「合意」をはかり、再来年には増税法案を成立させるというシナリオが現実の危険となっています。たたかいは待ったなしの緊急の課題であります。

 重大なのは、今回の増税計画が、日本の税制のあり方を根本から変えてしまうものになっていることであります。昨年の政府税調の中期答申や、日本経団連の提言にみられるように、いま狙われているのは「消費税率の二ケタ化」であります。かりに10%の消費税になった場合には、国税収入の約四割が消費税収となり、消費税収は法人税収の約二倍、所得税収の約一・五倍と、文字どおり消費税が日本の税制の中心にすわることになります。逆進性という致命的欠陥をもった最悪の不公平税制を日本の税制の中心にすえてしまっていいのか。このことが、いま問われているということを、広く国民に訴えていくことが大切であります。

 消費税をめぐる国民意識には、二つの側面があることをよく見て、それをふまえてたたかいの発展をはかることが大切です。

 一つは、増税派の熱心なキャンペーンにもかかわらず、なお国民世論の多数が消費税増税に反対しているという事実であります。選挙後にNHKがおこなった世論調査でも、「年金の財源のためだとしても消費税増税に反対」と答えた人が52%と過半数をしめました。これは、国民の多数が、日々の生活をつうじて、この税金の悪税ぶりをいわば肌身をつうじて実感していることのあらわれであります。だからこそ参議院選挙でも、自民、公明、民主の各党は、消費税増税を方針にしつつも、公然と増税への支持を訴えることができなかったのであります。この国民世論の動向に確信をもって、文字どおり国民多数派を結集するたたかいを築いていくことが、大切だということを、まず強調したいと思います。

 いま一つは、消費税導入から十五年がたつもとで、国民のなかでその「悪税ぶり」にたいする認識に変化がおきていること、とくに「福祉のためには増税もやむなし」論がかなりの人々のなかに浸透していることをリアルにみて、それらの国民意識にそくした訴えをおこなうことであります。この点では、選挙中も訴えてきた論点――消費税は最悪の福祉破壊税であること、増税は「福祉のため」でなく大企業の負担軽減が目的であること、消費税に頼らなくても社会保障の財源はまかなうことができることなどを、事実にそくしてさらに説得的に訴えていく努力をはかりたいと思います。「やむなし」論にたっている人々は、できるならば上げてほしくないわけです。消費税に頼らない別の現実的な選択肢があるとわかれば、反対論にかわりうる人々であります。こうした人々もふくめて、圧倒的多数の国民のなかで増税反対の世論と運動が広がるように、力をつくそうではありませんか。

憲法改悪に反対するたたかい――危険性とともに、阻止する可能性と条件に目をむける

 つぎに、憲法改悪に反対する壮大な国民的共同を築くたたかいについてのべます。

 いま憲法――とくに第九条をめぐる状況が、戦後史のなかでももっとも危険なものとなっていることは、疑いありません。小泉首相の「集団的自衛権を行使できるように憲法を改正すべきだ」という発言、民主党の岡田代表の「憲法を改正して、国連決議があれば、海外で武力行使ができるようにすべき」との発言、米国のパウエル国務長官やアーミテージ国務副長官による「憲法を見直すべき」という内政干渉の発言、日本経団連による「国の基本問題検討委員会」の設置と改憲提言への動きなど、日米の反動勢力と、自民、公明、民主など国会の多数勢力が、公然と改憲の大合唱をはじめています。この危険を直視し、それに正面からたちむかうことは、まさに急務となっています。

 そのさい、国民のたたかいによっては、こうした改憲の流れをくいとめる可能性と条件がおおいに存在することにしっかりと目をむけ、憲法を擁護する運動を励まし、展望をしめしていくことは、わが党の重要な役割であります。この点でとくに三つの点を強調したいと思います。

 第一に、何よりも憲法九条についていえば、どんな世論調査をみても、これを守るべきだという国民が六割前後と多数であります。憲法改定一般に賛成か反対かを問えば、改定論が多数になる場合でも、九条については改定論は少数であります。これはおびただしい戦争の犠牲をへて打ち立てた九条にたいして、日本国民の多くが貴い価値を見いだし、誇りをもっていることをしめすものであります。

 改憲勢力が、憲法改定を実現しようとすれば、まず具体的な憲法改定案をとりまとめ、それを国会の衆参両院の三分の二の賛成をえて発議したうえで、国民投票で過半数の支持をえなければなりません。国民の多数が、九条を守るべきだとする意思をもっていることは、改憲勢力が、これらの一連の段階をすすむうえで、最大の圧力として働いています。

 国民の多数が九条を守る立場を揺るがずにつらぬき、力をあわせれば、憲法改悪はできない――あたりまえのことですが、このことを強調することは、「護憲論にたつ共産党、社民党は、国会勢力でわずかになり、いよいよ先がなくなった」式の議論を、改憲勢力がさかんにふりまいているだけにきわめて大切であります。

 第二に、改憲論のもっている深刻な矛盾という問題であります。改憲論のねらいは、「米国の海外での戦争に、武力行使をもって参戦する国づくり」にあります。米国の戦争とは、イラク・中東などでおこなわれている戦争です。しかも国連憲章を踏みにじった無法な戦争です。すなわち九条改定の本質は、米国の地球的規模での無法な戦争に参戦する国家づくりにほかなりません。

 ところが改憲派は、九条改定の理由を語るときに、この本質を正直に国民に語ることはできません。彼らが語るのは、とりわけ「日本防衛のため」ということと結びつけた議論であります。たとえば小泉首相は、選挙中の記者会見で、「集団的自衛権の行使のために憲法改正をすべきだ」とのべましたけれども、首相はそれを主張したさいに、「日本を守るために活動している米軍の行動に協力できないのはおかしい」などと、「日本防衛のため」という議論と結びつけて、のべざるをえませんでした。

 つまり、議論は「日本防衛のため」だが、現実はそれとはまったく無縁なイラク・中東など地球的規模での無法な戦争への参戦――ここに改憲派の議論の大きな矛盾があり、弱点があります。このごまかしを正面から突き、九条改憲の本質を広く国民の共通の認識にすれば、改憲派を大きく孤立させていくことは可能であります。

 第三に、世界とアジアの流れも、改憲派にけっして味方をしません。イラク戦争に世界の圧倒的多数の国々が反対したように、二十一世紀の世界の大勢は、国連憲章の平和のルールを尊重した「戦争のない世界」を志向しています。憲法九条は、この流れのさきがけとしての人類的価値をもつものであるということが、世界から注目されています。

 アジアでも、こうした平和の流れが、大きく強まりつつあります。とくに東アジア地域をみるならば、東南アジアではASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に平和の大きな流れが広がり、北東アジアでも朝鮮問題を平和的な話し合いで解決しようとする努力がつづけられています。九条を改定し、日本が「戦争をする国」になることが、世界とアジア諸国民のだれからも歓迎されない逆流であることは明らかであります。

 いま「九条の会」をはじめ、立場の違いをこえ、日本国民の平和への願いと良識を結集した運動が、さまざまな広がりをみせていることは重要です。

 わが党は、戦前・戦後、ひとすじに戦争反対をつらぬいてきた党として、憲法改悪に反対する一点での広い国民的共同を築き、改憲勢力を孤立させ、そのたくらみを打ち砕くために、総力をあげてたたかうものです。その決意をこの場でも固めあおうではありませんか。(拍手)

三、国政選挙での新たな前進、党を語る大運動、強大な党建設のとりくみ

 つぎに国政選挙での新たな前進、党を語る大運動、強大な党建設のとりくみについて報告します。

(1)国政選挙での新たな前進をめざすとりくみについて

 まず、きたるべき国政選挙での新たな前進をめざすとりくみについてのべます。

 つぎの国政選挙を展望しますと、衆議院の任期満了は二〇〇七年十一月ですが、解散・総選挙が、それまでの時期にいつあっても対応できるように、総選挙の準備をすすめる必要があります。同時に、時期の決まっている二〇〇七年七月の次期参議院選挙、二〇〇七年四月のいっせい地方選挙での前進にむけて、必要なとりくみをすすめなければなりません。

 きたるべき国政選挙では、「二大政党づくり」の動きに対抗する確固とした政治的地歩を国会に築くことを、たたかいの政治的構えとして堅持して奮闘します。また、三回の国政選挙での比例代表の得票で四百万票台、得票率で8%弱という状況を前向きに打開して、国政選挙における党の新たな上げ潮をつくる選挙となるように力をつくします。そのために、衆議院のすべての比例代表ブロックで議席を獲得し、増やすことをはじめ、衆議院選挙でも参議院選挙でも、議席と得票の前進をめざして奮闘します。

 その基本方針は、比例代表選挙を、選挙戦はもとより、党のあらゆる活動の軸にすえ、比例での日本共産党の支持を増やし、蓄積していく活動に、日常不断に執念をもってとりくむことであります。そのさい、その時々の熱い政治問題での政策的立場、わが党の「日本改革」の方針、党の全体像についておおいに語るとともに、今回の参院選の教訓にたって、「『二大政党づくり』の動きとのかかわりでの党のおしだし」に日常不断にとりくむことが重要であります。

 衆参の国会議員・予定候補者は、有権者と日常的に結びつく努力を重ねるとともに、比例代表選挙での前進のけん引車として、積極的な役割をはたすようにします。選挙区でも、日常的に候補者をもって活動することが重要であります。すでに候補者を決定している選挙区をはじめ、条件のあるところでは候補者を早く決め、系統的な日常活動で、有権者との結びつきを強め、要求にこたえる活動に積極的にとりくみ、党の支持を拡大し、積みあげていくようにしたいと思います。

 わが党が国政選挙で新たな前進に転じるうえでも、それぞれの地方自治体の住民の要求実現のうえでも、一つひとつの中間地方選挙で確実に勝利・前進することは、きわめて重要な意義をもちます。とりわけ、来年六月の東京都議会議員選挙を、全国的意義をもつ政治戦として位置づけ、前進をかちとるために全力をあげてたたかいます。

(2)“生きた言葉・生の声”で党を語る大運動に全党がとりくもう

 つぎに、新しい綱領と党大会決定を学び、“生きた言葉・生の声”で党を語る大運動に、全党的にとりくむことを提案します。

 国民中心の新しい政治の軸をつくり発展させるうえで、わが党にとっての最大の指針となるのは、新しい党綱領であります。それは綱領改定についての大会報告がのべたように、「二一世紀に日本と世界が直面するであろうあらゆる問題に対し、正面から立ち向かえる立場」をあたえるものであります。

 新しい綱領と党大会決定を指針に、各階層にわたるすべての人々――政党支持や無党派などの区別なしに、すべての人々とのあいだで対話と交流の活動を広げ、党自身の力で、党の姿を広く国民のなかに明らかにしていく活動に、力をそそぐことがもとめられています。

 そのために、党員が、“生きた言葉・生の声”で、「日本共産党はどういう党なのか」「日本共産党はどういう日本をめざしているのか」など、日本共産党を語る大きな運動をおこしていきたいと思います。そのさい党の路線・歴史・理念などの全体像を語り、偏見や誤解をときほぐす努力とともに、「『二大政党づくり』の動きとのかかわりでの党のおしだし」を重視し、今日の情勢のもとで、わが党が前進していくことの国民的意味を明らかにしていくことが重要であります。

 すべての支部で、党を語る支部主催の懇話会、懇談会などを開こうではありませんか。そのために後援会の協力もおおいに得ていこうではありませんか。都道府県委員会や地区委員会の段階での講演会も積極的に開催していこうではありませんか。また、各分野、各層ごとに、党についての対話と懇談の場をもつことも、大切なことであります。この運動をおこし発展させるために、党中央と国会議員も、全国に足をはこんで、ともに語りあう先頭にたちたいと思います。こうした運動を、選挙のときだけでなく、日常不断の活動として、全国すみずみでとりくみ、定着させていこうではありませんか。

 このとりくみをすすめるうえでも、新しい党綱領と党大会決定の内容を、すべての党員が身につける学習に力をそそぐことが大切です。その基本は、大会ハイライトビデオも活用して、決定を読了することにありますが、同時に、機関幹部を中心に講師陣をつくり、「党綱領を学ぶ会」を無数に開いていくことが重要です。そのためにも、講師資格試験が秋に予定されていますが、これに積極的にとりくむことを訴えるものです。

 党員の学習を三つの分野――(1)新しい党綱領をはじめ、党の路線と歴史をしっかりと身につけること、(2)党の当面の政策、方針の学習、(3)科学的社会主義の理論そのものの学習――で強めることを、あらためて強調したいと思います。学習運動をすすめるさいの文献としては、これまで「学習指定文献」をもうけてきました。これは一人ひとりの党員が独習をすすめる手引きとして、学ぶ気風を高めるうえで大きな役割をはたしてきましたが、情勢と理論が不断に発展するもとで、固定した「指定文献」という方式は、実情にあわなくなってきています。そこで学習に役立つ文献については、適切な時々に、さまざまな形で、全党に紹介することにします。

 日本共産党員は、生まれ育った環境、世代、党員としての歩みと活動は、さまざまですが、かけがえのない人生を、社会進歩の事業とともに歩もうという共通の志で結ばれています。“生きた言葉・生の声”で語るとは、党員としての初心、党員としての生きがい、自らの党への思いを語ることであり、党員はだれでも、みんながとりくめる活動であります。このとりくみを、全国津々浦々でおこそうではありませんか。

(3)情勢を主導的にきりひらく強く大きな党を――五つの目標の具体化を

 つぎに、情勢を自らの力できりひらく強く大きな党をつくるとりくみについて報告します。

 私たちは、党大会決定で、「二一世紀をたたかう党をつくるうえで、党の歴史のなかでも、いまが党建設に思い切って力を入れるべき歴史的時期」だということを明記し、その構えで、強く大きな党をつくるとりくみをすすめてきました。

 党建設を前進させるための基本方針は、第二十二回党大会決定と第二十三回党大会決定で、詳細に明らかにされています。そこでは党建設の国民的意義、「党建設の根幹」としての党員拡大の推進、「しんぶん赤旗」中心の党活動、党の質的水準の向上、若い世代のなかでの活動の抜本的強化などがのべられていますが、基本方針は明確であります。

 しかし、昨年、今年と、重大な選挙が連続するなかで、この大会決定にてらしてみますと、私たちの手が十分にとどいていない問題も数多くあります。この点で、今年から二〇〇七年までの時期は、解散・総選挙が流動的であることをつねに念頭において準備をすすめなければなりませんが、じっくりと腰をすえて、党大会決定にもとづく党づくりにとりくむことができる時期となります。

 そこで、今年から来年いっぱいを期限にして、「支部を主役」に「政策と計画」をもち、とくにつぎの五つの目標を具体化し、強く大きな党をつくる仕事にとりくむことを提案するものです。

第一。支部と党員がまわりの人々と日常的に広く深く結びつく

 第一は、支部と党員がまわりの人々と日常的に広く深く結びつくことです。一人ひとりの党員が多面的な国民との結びつきをもっていることに光をあて、それを支部の貴重な財産にすること、また近所づきあいや職場の仲間づきあいなど、身近な人々との日常的なつきあいを重視する支部活動にしていくことが大切です。支部と党員が、まわりの人々といかに溶け込み、広く深く結びつくかということは、あれこれの党活動の手段ではなく、それ自体が党の活力の根本にかかわる問題であり、党の基本的なありかたにかかわる問題として、重視されなければなりません。

第二。すべての支部が、地域、職場、学園での要求をとりあげ、実現に力をつくす

 第二は、すべての支部が、地域、職場、学園での要求をとりあげ、実現に力をつくすことです。すべての党支部が、「国民の悩みや苦難のあるところ日本共産党あり」の原点にたった活動にとりくむようにします。全国的課題とともに、草の根での多面的な要求にもとづくたたかい、生活相談、労働相談、子育てや教育相談の活動など、日々の国民生活の大地にしっかり足をつけた日常的な活動が大切であります。全国四十万人の党員、二万数千の支部が、このとりくみをおこなえば、その総和はどの党にもまねのできない、わが党ならではの値打ちをきわだたせることになります。

 かつて一九九八年の第二十一回党大会三中総で、支部がどんな要求運動にとりくんでいるかのアンケートも中央によせてもらって、この運動に全党的にとりくんだ経験もありますが、そのときの経験や教訓も生かし、今日的に発展させるようにしたいと思います。

第三。総選挙時比三割増の目標を堅持して「しんぶん赤旗」読者拡大にとりくむ

 第三は、総選挙時比三割増の目標を堅持して「しんぶん赤旗」読者拡大にとりくむことであります。

 大会決定が提起した、参議院選挙にむけた総選挙時比三割増の読者拡大という方針は、過去の国政選挙の「最大の痛苦の教訓」をふまえ、またこれまでの「選挙戦の鉄則」として提起したものでありました。これにもとづいて不屈のとりくみが開始されたことの意義を確認しつつ、また今回の参議院選挙にむけてとりくまれた党勢拡大運動の積極的な成果をすべて発展的に生かしつつ、つぎの国政選挙――衆議院選挙・参議院選挙では、じっさいに三割増の読者拡大の達成をして、選挙戦をたたかうようにしようではありませんか。

 そのさい「しんぶん赤旗」中心の党活動を豊かに具体化する努力をはかりたいと思います。持続的拡大への努力とともに、後援会員や支持者の力も借りて、配達・集金の体制を強めるとともに、読者を党にとってもっとも身近な友人として大切にすること――つねにその要望・意見をよく聞き、日常的な対話を活発にし、読者とよく知り合い、人間的な結びつきを強めるとりくみを重視することが、とりわけ大切であります。

 「二大政党づくり」の動きの最大の支えの一つになっているのはマスメディアであります。マスメディアのわが党へのいわば“沈黙”作戦のもとで、自らの力で新しい政治の軸をつくりあげていくうえで、「しんぶん赤旗」の読者を広げることは決定的な意義をもちます。この仕事に新たな大志と決意をもってとりくむことを、心からよびかけるものであります。

第四。「二〇〇五年までに五〇万の党」の建設という仕事に正面から挑む

 第四は、「二〇〇五年までに五〇万の党」の建設という仕事に正面から挑むということです。

 この目標は、二〇〇〇年の第二十二回党大会で決定したものですが、以後、四万三千七百人の入党者をむかえ、現在、党員は四十万四千人となっています。今年と来年で、五十万の党という目標を達成することは、党のあらゆる活動の将来的発展を展望しても、またつぎの国政選挙の前進のためにも、巨大な意義をもつ大きな仕事であります。

 党員拡大をすすめるにあたっては、第二十三回党大会決定が、「継続的に党員拡大を前進させるためには、新しい同志の学習を援助し、日常的な党活動に参加してもらうところまで、党が責任を持つことが不可欠である。『党員を増やし、学習を援助し、支部活動に結集する』――この全体を『党建設の根幹』としての党員拡大のとりくみに位置づけ、前進をはかる」とのべていることに、注意をうながしたいと思います。この提起にかかわって、新入党員にたいする未教育を大量に残している状況を、すみやかに打開することが重要となっていることも、とくに強調するものです。すべての党員を支部活動に結集する努力と、党員拡大を一体のものとしてとりくむことの重要性は、「すすんだ支部の経験を聞く会」でも、共通した教訓として報告されたことでした。

 このとりくみのなかで、わが党の世代的継承を着実にかちとるという見地から、全党の力を集中して、とくにつぎの二つの分野での前進をはかります。

 ――一つは青年・学生の分野です。平和や雇用などの切実な要求をかかげた運動の発展を励ますとともに、新しい綱領の理論的魅力をおおいに語ることが、若い世代を結集し、その成長をすすめるカギであります。青年党員の拡大と青年支部づくり、民青同盟の地区委員会再建への援助などに本腰を入れてとりくみます。

 学生分野での後退を打開できていないことは、若い世代の活動のなかでの最大の弱点となっています。中央を先頭にして党機関は、学生を党に迎え入れることの戦略的位置づけを明確にして、学生の切実な要求、知的関心、進路と生き方の模索にこたえるとりくみを強め、学生支部の前進と再建をはかることに、とりわけ力をそそぎたいと思います。

 若い世代のなかでの活動を発展させるためには、党のあらゆる分野でのとりくみの強化がもとめられます。ですから党機関はそれぞれの条件におうじて、この分野の戦略的重要性にふさわしい体制をつくり、計画的・系統的なとりくみをおこなうことが大切であります。

 ――いま一つは、職場支部の活動です。今日の職場支部の現状は、一部に積極的なとりくみがあるものの、このまま推移しますと、困難ななかで営々として築きあげ、守りぬいてきた職場の党の陣地が、つぎの世代に継承されないで空白になりかねない職場が少なくないことを、直視しなければなりません。いま思い切って職場での党員拡大を前進させ、新しい世代へのバトンタッチを必ずはかることに、機関も支部も力をそそぐことが必要であります。

 そのさい、大企業がリストラ競争をすすめるもとで、正規雇用から不安定雇用への急速な置き換えが進行し、従来の資本による職場支配のシステムが、労働条件の面でも、思想支配の面でも、大きく崩れつつあり、労働者のなかで日本共産党が前進する新しい条件が深いところで広がっていることに目をむけ、わが党が労働者の生活と権利を守る「たたかいの組織者」としての役割をはたしながら、党建設の前進を探求することがもとめられています。


第五。すべての党員が「しんぶん赤旗」の日刊紙を読むようにする

 第五に、すべての党員が「しんぶん赤旗」の日刊紙を読むようにする――これを意識的に追求したいと思います。

 党員が「しんぶん赤旗」の日刊紙を読むことは、日々生起するさまざまな内外の諸問題をどうみるか、党員としてどう対応していくべきかについて、自信をもって生活していくうえで、欠くことのできない知的糧をえることになります。それを欠いては、今日のマスメディアの状況のなかでは、真実をゆがめる有害な情報に、無防備でさらされることにもなります。

 日刊紙を読んでいない党員を、それぞれの実情にそくして、ていねいに援助し、すべての党員が日刊紙を購読し、読むようにすることを、党建設上の重大な課題として重視してとりくもうではありませんか。

むすびとして――新しい綱領を指針に、不屈の精神で情勢をきりひらこう

 報告では、参議院選挙での党中央の活動の弱点にも自己分析のメスを入れながら、「二大政党づくり」の動きに対抗して、国民中心の新しい政治の軸をつくる課題にどうとりくむかについての方向を明らかにしました。この仕事は、困難ではありますが、前向きに突破するなら、私たちの「日本改革」の事業の実現にむけて、大きな新しい展望が開けてくる、“やりがいのある大事業”であります。

 七月二十一日におこなわれた党創立記念講演会では、八十二年の党史をつらぬく「不屈性」をいまこそ発揮しようというよびかけに、多くの共感の声がよせられました。世界と日本が文字どおりの激動のさなかにあるとき、新しい綱領を指針にして、わが党の不屈の力をいまこそ発揮し、この“やりがいのある大事業”をみんなの力でやりとげようではないかということを最後によびかけて、報告といたします。(拍手)


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