2004年8月28日(土)「しんぶん赤旗」
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「話をきくと、びっくりすることだらけ。トラックが道路の右側を走ってるみたいな法律違反が、平気でやられてるんですから」。全日本金属情報機器労働組合(JMIU)東京北部地域支部執行委員長の岡崎巌さん(65)は、多くの青年労働者の相談にのってきた実感をこう語ります。
北部地域支部は、この一年に七十三回の駅頭宣伝を行い、一万三千枚のビラを配布。そのビラや、月一回とりくんできた街頭での労働相談をきっかけに組合加入が相次ぎ、三年前には五人だった組合員が十倍以上に増えました。「高校生だってバイトしていれば労働者。私たちはすべての人を対象に宣伝しています。熱意が伝われば、チラシを取って読んでくれます」。執行委員の舛谷光昭さん(64)はいいます。
この一年で加入した人の四割は、二十代、三十代前半の若者です。「結果的にそうなった。若者の多いターミナル駅で宣伝し、相談がうまく解決したのが口コミで広がった」と岡崎さんはいいます。
六月に相談、七月に加入した鈴木真奈さん(23)=仮名=もその一人です。都心の千代田区にオフィスがある社員二十人ほどの会社で、雑誌の画面制作オペレーターとして働いていました。毎日夜十時、十一時まで働きながら、残業代はつきません。「この業界はこんなもの」と初めは思っていました。
やがて、社長のやり方に疑問を覚えるようになりました。遅刻したら一分あたり十円カット、休んだら五万円カット。何かしらの名目で給料がどんどん引かれます。退職を申し出た社員には、退職の日まで希望通りの休みを取らせないなどの嫌がらせがありました。
鈴木さんもやりがいを感じられなくなり、退職を決意しました。そんなとき、父親のつてでJMIUを知りました。
鈴木さんは、職場で仲の良かった山村結衣さん(23)=仮名=も誘って話を聞きにいきました。山村さんは、退職を申し出たところ、社長から過去の交通費に過払いがあったとして数十万円を請求されていました。
「この業界では残業は当たり前といわれた」「仕事が未熟で会社のもうけに貢献できないうちは、残業代をもらうのはわがままなのか」――若い二人の疑問に、岡崎委員長は丁寧に答えてくれました。「健康な体あっての会社。会社には従業員が健康で働ける労働条件を整備する責任がある」など初めて聞く話。「私たちを守ってくれる法律があるんだ」「知らないってこわい」と感じた二人は、組合に加入しました。現在、他の仲間にも呼びかけ、未払い残業代の支払いを求めて、会社に交渉を申し入れています。
「会社を興して人を雇うときに労働基準法などについての研修があるわけじゃないから、ムチャクチャな経営者も結構いるんですよ。知識がない若者が被害にあっている」と岡崎さん。働くことがひときわ厳しくなっている若者にこそ、労働組合が必要になっていると感じています。
「『もうかるわけでもないのに、なぜここまで親身になってくれるの』っていわれるよね」と楽しそうに笑う岡崎さんと舛谷さん。「若者は怒りを持っていないわけじゃない。あきらめちゃいけないと自覚したときのエネルギーはすごいですよ」「そういう若者のために一生懸命やるおとながいるってことを見せたい」――二人の熱い期待が若者に注がれます。
(つづく)