2004年8月27日(金)「しんぶん赤旗」
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国営諫早湾土地改良事業(諫早湾干拓事業)が有明海の環境悪化をもたらし漁業被害を与えたとして、その工事の中止を求めた「よみがえれ有明訴訟」で二十六日、佐賀地裁(榎下義康裁判長)は、因果関係を認め、「農水省は工事を続けてはならない」との仮処分決定をくだしました。
榎下裁判長は、同事業が潮受け堤防閉め切りなどによって有明海の環境悪化、漁業被害の発生に寄与していることを認め、漁業被害の程度も深刻だと判断し、損害を避けるためには事業全体を再検討し、必要に応じた修正を施すことが肝要だとのべ、工事の差し止めを命じました。
弁護団は、大型公共事業について裁判所が工事差し止めの判断をしたのは全国で初めてとのべ、「諫干が、それだけひどい事業で漁業被害が深刻だと裁判所が認めたことにほかならない」と指摘しました。「ギロチン」とよばれ全国に衝撃を与えた一九九七年の諫早湾閉め切りから七年、二〇〇〇年のノリ大凶作から四年。漁民は「ついに止まった」と歓声をあげました。
同仮処分は有明海の漁業者百六人が求めていたもので、漁民と市民八百五十七人が同時に提訴した裁判は審理が継続しています。
弁護団は決定を受け取った後、漁民、市民といっしょに佐賀市内で報告集会を開き、「漁民、住民を無視してきた農水省は断罪された」「農水省は、工事を止めるだけではすまない。ただちに開門せよ、被害の回復にただちに着手せよ」の声を高らかにあげました。
集会では、弁護団の一員の仁比聡平参院議員があいさつしました。
国営諫早湾干拓事業 農水省が長崎県諫早湾を閉め切って、農地造成や防災を名目におこなっている土地改良事業。いずれも目的を失っていることが明らかになっています。一九九七年に潮受け堤防で諫早湾は閉め切られました。潮受け堤防は全長七キロ。その内側に、約六百ヘクタールの中央干拓地や約二千六百ヘクタールの調整池をつくる計画です。 |