2004年8月24日(火)「しんぶん赤旗」
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「三十社回っても内定が出ない」「残業続きで休日は寝るだけ」――若者の就職・雇用は、厳しい現状が続いています。そのなかで、若者の間に「就職できないのは自分のせい」など、“「自己責任論」の若者雇用版”とでもいうべきものがひろがっています。どう立ち向かっているのか。若者たちの模索を追いました。坂井希記者
「苦しいのに苦しくないフリをする。それがもどかしくて」。渡名喜(となき)まゆ子さん(26)は、就職・雇用アンケートを青年から集めたときの感想をこう語ります。
渡名喜さんは、青年の要求実現を目指す日本民主青年同盟のメンバー。活動地域は、中央官庁が集中する東京・千代田区です。昼休みの公園などでこつこつアンケートにとりくみ、二週間で二十代の若者三十人から回答を得ました。
回答した半数は公務員でした。公務員は待遇もよく、定時で帰れるというイメージがありますが、実際は長時間・過密労働がまん延しています。「タクシー代は出ないので、いつも終電か泊まるか」「もう何年も友人と飲みに行ってない」などの声が寄せられました。
しかし、「大変ですね」というと、「首は切られないのでいい」「日曜出勤している同僚に比べれば自分はまし」などの声が返ってきました。
就職活動中の学生の声を聞こうと、上智大、明治大などのキャンパスにも足を運びました。そこでも、就職が決まらず苦労しているのに「スタートが遅かったから」「やりたいことがしぼれていないから」など、自分の努力や意識を問題にし、自分を責めている人が少なくありませんでした。
「無理に自分を納得させようとしていて、みんなかたくなでした」と渡名喜さんはいいます。
渡名喜さんは、ある中央省庁でアルバイトをした経験があります。国家II種の公務員たちの働く様子は、見ていてもまったく楽しそうではありませんでした。聞こえてくるのは「早く帰りたい」「早く辞めたい」という声ばかり。ほとんどが五年以内に辞めていきました。仲が良かった女性職員もうつ病になり、「電車が来たら飛び込みたくなる」ともらしました。
「公務の職場では、どんどん契約社員やアルバイトに切り替えられ、職員が減っています。時間外労働を月二百時間やって手当がつくのは四十時間など、サービス残業もあります」と渡名喜さん。
対話した学生のなかで、公務員を目指している人が四人いました。過労による自殺やうつの多さ、離婚率の高さ、上司が帰るまで帰れない“つきあい残業”など、公務の職場の実態を話しました。しかし、返ってきたのは「それでも公務員になりたい。首にならないから」という返事でした。ある学生は「公務員になれただけで人生勝ち組ですよ」と断言。おかしいとわかっていても他よりましなら仕方がない、とりあえず自分が勝ち残るのが大事――そうした価値観に学生たちが追い込まれていることに、渡名喜さんはがくぜんとしました。
「若者が働きたくても受け皿がなく、あっても過酷というこの社会はおかしい。そう気づくだけでも、ずいぶん楽になると思うんですけれど」
(つづく)
国家公務員は採用試験時から、大卒程度のI・II種と高卒程度のIII種に分かれます。I種採用のキャリア組が本省庁幹部の大半を占め、II・III種は給与、昇格など待遇の面で劣ります。