2004年8月21日(土)「しんぶん赤旗」
「財界は、細川政権以来の漂流船が二大政党制という港にようやくたどり着いた、という喜びに包まれている」。長年、財界取材をしているジャーナリストはこう指摘します。
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財界が主導した「二大政党」の流れは、昨年の総選挙を契機に本格的に始まりました。総選挙をにらんで自由党と民主党が合併大会を開いたのは昨年十月五日のことでした。
合併のおぜん立てをしたのは稲盛和夫京セラ名誉会長でした。
合併大会の三カ月前の七月一日、都内のホテルで開かれた「民主党大躍進パーティー」で「民主党が政権交代可能な健全野党への成長することを願っている。日本国のために自由党と大同団結を」と合併を呼びかけていました。
自由党と合併した民主党は、消費税増税、憲法改悪など日本国民の暮らしと平和にかかわる重大問題で、自民党政治と同じ流れの中にあります。「財界にとって、自民党幹事長を経験した小沢一郎氏が民主党に入ることで大きな安心感になった」と先のジャーナリストは語ります。
今年一月の新年恒例の財界共同の記者会見では、日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の三首脳が「二大政党制」への動きを歓迎しました。
夏の参院選挙の結果を受け日本経団連の奥田碩会長は、「数からいけば(自民党と民主党は)きっこうしてきた。二大政党制の芽は見えてきた」と、その強い期待を表明しました。
実は、「二大政党制」の構想は、二年前の経済同友会の夏季セミナーですでに描かれていました。
茂木友三郎副代表幹事(当時)が「真の政権交代を可能にするシステム、すなわち『単純小選挙区制』の導入」を提起。「改革の突破口が必要で、党のマニフェスト(政権公約)があって、小泉さんが改革を進めるのが本旨である。今は、そうなっていない。ただし、単純小選挙区制ができればそれも進むだろう」とのべていました。そして、衆院の比例区を廃止する「完全小選挙区制の導入」を求める提言を二〇〇二年十月に発表したのです。
日本経団連は、企業献金というカネの力で二大政党を育成し、競わせる政界買収作戦に打って出ました。今年一月には、企業献金の指標となる政党“通信簿”を発表。そこには、大企業の利益に直結する政策項目に対する自民と民主の五段階評価が並んでいました。奥田会長は両党を点数で「自民八十五点、民主は五十点以下」と採点しました。
完全小選挙区制と政治献金――。財界の意のままに動く保守「二大政党制」の舞台装置です。国民に痛みを押し付けつつ大企業本位の「構造改革」をすすめる自民党が危機に陥ったときにでも、財界が安心できる受け皿をつくることが必要なのです。しかも、二つの政党に財界本位の政策を競わせることで、「改革」をスピードアップすることができます。
そのために、衆院の比例代表を廃止し、小選挙区一本にすることを求めているのです。日本共産党など、財界の野望の実現のために障害となる政党を国政の場から排除することが狙いです。
しかし、自民、民主が憲法改定と消費税増税を当面する共通の旗印としているため、国民の利益と願いとは根本的に矛盾せざるをえません。今後、財界が描く「保守二大政党」の狙いが国民的体験を通じてより明らかになっていくことでしょう。
(おわり)