2004年8月20日(金)「しんぶん赤旗」
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「サービス残業(ただ働き)は我慢できない」。二十―三十代の若い社員で結成されたばかりの労働組合が、今春闘で自らの要求とともに、パート社員の要求を掲げて運動し、要求も組織も大きく前進させています。
この組合は全労連・全国一般埼玉地方本部イビサ支部。今年二月に結成されました。
イビサは、埼玉県南部の川口市に本社と工場を持つ女性用のハンドバッグ製造販売の企業で、売上高が全国二位です。正社員約百人と準社員とよばれるパート社員約二百人が働いています。
組合を結成するきっかけは、サービス残業の横行でした。会社は、時間給のパート社員は定時の午後五時で退社させる一方、正社員は定時の午後六時を超え、連日午後八、九時まで残業させました。しかし残業代をまともに支払わず「週五日、午後十―十一時まで残業しても、残業代は月四時間分、五千円ぐらい」という労働者も。
「何とかしたい。そうでなければ会社をやめる」。三人の労働者が相談し、インターネットで調べると、埼労連(埼玉県労働組合連合会、全労連加盟)のホームページが現れました。「労働者の利益を守る」「みんなで決め、みんなでたたかう」という紹介文が目に飛び込んできました。
「なんかすっごく新鮮な感じ」で、さっそく埼労連の労働相談に電話しました。昨年十二月のことでした。サービス残業が法違反の犯罪だと知りました。全労連・全国一般埼玉地本と川口地区労の援助も受け、正社員十三人で今年二月に労働組合を結成しました。
ドキドキしながら会社に結成を通告しました。要求書を提出した翌日、会社は朝礼で「これからはサービス残業はなくします」とのべました。
初めての春闘で、三年間賃上げがなかったものを、平均六千二百円もの賃上げを実現しました。午後十時になろうが十一時になろうが、社員全員が退社するまで居残りして施錠し、翌朝は午前八時までにカギを開ける日直制度もやめさせました。
「組合をつくってよかった」と青年たち。同時にパート社員の労働条件が気になりました。
イビサでは、正社員が皮の裁断や営業、総務、開発を担当し、女性のパート社員が縫製作業を行います。熟練を要し、パート社員でも勤続十年、二十年のベテランが多くいます。
「不満は準社員も一緒。みんなの労働条件が良くならなきゃおかしいんじゃないか」。一人の声にみんなが納得し、要求を聞き、組合への加入をよびかけました。
四月の団体交渉は、組合員とともにパート社員二十人が参加。パート社員は口々に不満を訴え、会社側を圧倒しました。不満の第一は、時間給が人によってばらばらで、何年も賃金が上がらないこと。三年間働いても時給七百八十円のままで、新入社員が上回るというケースもありました。
交渉のなかで、パート社員が六十歳の定年後に嘱託社員になると、時給七百八十円に切り下げられていたものを八百円に戻させました。サービス残業代も、過去二年間分を支払わせる方向で交渉しています。
現在、正社員十七人、パート社員八十人が組合に加入しています。
パート社員で組合員のAさん(43)は「組合ができて随分よくなりました。不満を何でも相談できるようになったのがうれしい」とにっこり。
支部長の山田賢太さん(38)は「団結するってすごいですね。一人で会社に訴えても『へ理屈いうな』と全然とりあってもらえなかった。組合をつくって交渉したら、労働条件がいくつも改善できた」といいます。
副支部長の高見沢信さん(31)も「労働組合は自分たちの意見を堂々と言え、気持ちよく働ける職場にしていくためにも欠かせない。勉強になった」と話しました。
原田浩一朗記者