2004年8月20日(金)「しんぶん赤旗」
「これだけを目標にしてやってきた。人生の中で一番ハッピーです」
百メートルに続き、二冠を達成した北島は落ち着いた口調で語った。
だれよりも大きな泳ぎで、二百メートルでは他を圧倒した。この強さはもちろん北島の力によるところが大きい。しかし、ライバルの存在が、それを「アシスト」してくれた側面も見逃せない。
北島とハンセン。この二人は三年前から互いに記録を破り合う、ライバル同士だ。
北島は今年に入りずっと精彩を欠いていた。しかし五輪を前に、自分を駆り立てる力となったのは、七月のハンセンの世界新記録だったと思う。
その時、北島は「彼の出した世界新は素晴らしい記録。五輪でたたかえることを楽しみにしている」と語っていた。
気持ちの強い選手だけに、それが調子を取り戻すバネとなった面は強い。実際、記録もそこからぐんと上がっていった。
ハンセンも常々、北島のことを「彼は僕の闘争心を燃えさせる」と語っている。ハンセンの心の中にいつも北島がいるし、おそらく北島もそうだろう。
北島二十一歳、ハンセン二十三歳。今回の五輪は北島に軍配が上がったが、決してこのままでは終わらないだろう。
互いに認め合い、高め合う。そんな若い二人のたたかいと、記録への“共同作業”は続く。
和泉民郎記者