2004年8月19日(木)「しんぶん赤旗」
ファミリーレストランで働く、千葉県野田市の鈴木由紀枝さん(52)は、今年の母親大会の全体会の構成劇で訴えます。「パートの悩みを聞いてください」と。
鈴木さんは、若いころからパートで働きながら子育てをしてきました。レストランは午前九時から午後五時が勤務時間。昼食時は三人で百食分をつくります。ただでさえ目が回るほどの忙しさ。ところが店側は、注文されたメニューを調理して料理をお客に提供するまでの時間は「八分間でやれ」と命令します。
店長以外は全員、女性パートです。パートたちが「子どもがいて、土日の仕事は無理だから働き方を考えてほしい」といっても、店側は受けつけてくれません。
賃金の低さも女性パートの不満になっています。何年働いても時間給はあがりません。「どうしたら、パート労働者の声が生かされて働きやすい職場にできるか。パートの待遇を改善するために話し合いたい」と鈴木さんはいいます。
男女ともに人間らしく働くにはどうしたらいいか―母親大会の大切なテーマです。
第一回大会から、「婦人の生活と権利を守るため」の分科会が設けられました。母親になっても安心して働ける職場を、男女の賃金差別や昇進・昇格差別をなくそうと話し合ってきました。
二〇〇二年十月に「女性が昇格できないのは能力の差」という女性差別を是正させ、課長職への昇格をかちとった東京・芝信用金庫の女性たち。十五年にわたる裁判をたたかった元原告団長の笹本美園さん(62)は「私たちが裁判に訴えようと決めたのは、職場では男女差別が当たり前と考えられていたときでした。女性はどんなに働いていても役付きにはなれませんでした」と話します。
原告らは、一九八七年の第三十三回大会から訴えてきました。さまざまな差別やいやがらせをしなやかにはね返している女性たちとの交流は、笹本さんたちに限りない勇気を与えました。
「差別を受けているのは私たちだけじゃない」「女性の権利を守るために頑張ろう」と元気をもらった、といいます。
リストラ「合理化」によって、フルタイム労働者から、パートや派遣、契約、アルバイトへの置き換えがすすみ、不安定雇用労働者が急増しています。国連・女性差別撤廃委員会は〇三年、女性の多くがパートや派遣などの非正規労働者になっていること、低賃金で働かされていることに懸念を示し、日本政府に改善するよう勧告しました。
女性差別をなくすうえで長時間・過密労働と低賃金におかれている男性の働き方を変えることも大きな課題です。今年の母親大会は雇用の拡大、パート・派遣などの均等待遇の実現、仕事と家庭の両立、女性の人権などについての分科会が開かれます。
分科会の助言者、今野久子弁護士は「労働は人間社会の基本です。子どもや若者が安心し生きていることを喜べるよう、いまの労働のあり方を変える知恵を出しあいましょう」と語っています。
(つづく)