2004年8月17日(火)「しんぶん赤旗」
イギリスでは、消費税を払わなくても暮らしていけると聞きました。本当ですか? 日本でも軽減税率を導入すれば、消費税が増税されてもいいんじゃないですか?
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イギリスでは消費税を払わなくても暮らしていける―。意外ですが、本当です。
イギリスの付加価値税(消費税)の標準税率は、17・5%と日本の三倍以上です。しかし、低所得者ほど重い負担を課せられるという消費税の特徴(逆進性)を緩和するために、生活必需品には消費税の軽減税率が課せられています。
まず、食料品、居住用建物の建築など食住にかかわるものの税率は0%、そのほか、家庭用上下水道や交通費、書籍、新聞なども0%とゼロ税率です。
さらに、医療や社会福祉、教育、郵便などは非課税になっています。
つまりイギリスでは、ぜいたくをしなければ、消費税を払わなくても生活できるようになっています。
こうした状況のもとで、付加価値税の標準税率が17・5%と高税率のもとでも、税と社会保険料収入全体に占める消費税の割合は、18・3%にすぎません。
ぜいたく品課税的要素が強いのが、イギリスの付加価値税です。
これほど徹底した生活必需品非課税が講じられているのならば、なぜ付加価値税を導入する必要があったのでしょうか。イギリスが付加価値税を導入したのは一九七三年。EC(現在のEU)に加盟するための条件として、付加価値税の導入が義務づけられていたからです。
では、軽減税率が導入されれば、日本でも消費税率は引き上げられてもいいのでしょうか。
答えは「いいえ」です。
政府税調の石弘光会長は昨年八月の記者会見で「軽減税率は標準税率の半分くらいが適当だが、標準税率が15%に上がっても食料品は5%のままということもあり得る」と発言。たとえ軽減税率が導入されたとしても、イギリスのゼロ税率のように、税率を現在の5%より引き下げる考えのないことを示しました。
軽減税率の導入は、単純に全体の税率を引き上げるのに比べると、増税による増収効果が抑制されます。消費税増税によって税収の大幅増を狙っている政府や財界にとって、「(消費税の税率構造は)極力単一税率が望ましい」(政府税調の「中期答申」、二〇〇三年六月)が本音です。
もし、イギリスのように、生活必需品非課税を徹底した軽減税率を「検討」しようというのであれば、消費税にこだわる理由はまったくありません。日本の場合は、EU加入の義務として消費税を導入したイギリスとは違います。日本では、ぜいたく品課税の強化などですむはずです。
軽減税率導入まで持ち出してあくまでも消費税増税に固執する。そこには、大企業の税と社会保険料負担を軽減するために、国民に肩がわりさせようとする財界と政府の思惑が透けて見えます。
ゼロ税率 小売業者の売上額から仕入れ額を引いた金額に課税しないだけでなく、仕入れ部分にも課税しません。仕入れ部分にかかった税金は税務当局から還付されるため、小売業者は税額ゼロの商品を販売することができます。 非課税 仕入れ部分には課税されます。日本の消費税の非課税品目など。 |