2004年8月17日(火)「しんぶん赤旗」
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「ジャパニメーション」と呼ばれ、世界に名高い日本製のアニメーション。ところが、アニメ産業を支えるアニメ労働者は長時間労働と低賃金、無権利状態におかれています。映画・演劇人でつくる映演総連(全労連オブザーバー加盟)が、アニメ労働者の労働条件向上や権利擁護へ奮闘しています。
「日本にいるアニメ労働者の数さえ、正確にはわからないんですよ」。こういうのは、映演総連の梯(かけはし)俊明事務局長です。毎週約八十本の新作アニメが放送されていることから、四千―六千人と推計されているだけ。「そのほとんどが若者です」と指摘します。
アニメの主人公たちが動いてみえるように一コマ一コマを描くセル画の作業は、完全出来高賃金で、一枚の単価はわずか二百円―三百円です。一日十時間近くセル画に没頭しても、描けるのはせいぜい十枚程度。一日働いて二千円から三千円で、一カ月間休まずに働いても、収入は十万円未満です。
夢を抱いて専門学校を卒業し、アニメーターになっても生活ができず、一、二年で辞めていく労働者が八割という現実。他方、絵を描く作業の九割は韓国やフィリピンなど、低賃金のアジア諸国に発注されています。
「アニメーターが育たなければ才能あるアニメスタッフも生まれない。このままでは、世界に誇る日本のアニメーションは空洞化しかねない」。心あるアニメ産業関係者の共通の思いです。
映演総連は、個人加盟の労働組合「映演総連フリーユニオン」を発足させ、リーフレットを配布し、加入をすすめています。梯さんは「アニメ労働者の労働条件の劣悪さは、日本のアニメ産業にきちんとした組合がないことが大きな原因」といいます。
組合員が二十数人という映演総連フリーユニオン。この間、要求の実現へねばり強くとりくみ、前進させています。映画会社や撮影所と交渉し、撮影所のアルバイトの時間給を八百円から八百五十円に引き上げ、一時金を三万円から五万円に上積みさせ、契約社員の雇い止めを撤回させました。
映演総連の要請と日本共産党国会議員団の追及もあり、国も重い腰を上げ、今年初めてアニメ労働者の実態調査が実施されることになりました。
映演総連は、自民・公明、民主党が競い合う憲法改悪を許さない運動にも力を入れています。
「映画や演劇は戦前、国民を軍国主義に駆り立てる手段とされた痛苦の経験があります。憲法で表現の自由を得て、多くの才能が花開きました。暗い時代への逆行を許さず、憲法改悪反対に全力をあげたい」と高橋邦夫委員長は語ります。
映演総連は、憲法九条を守ろうとの「九条の会」のよびかけに呼応し、「平和憲法を守る映画人会議(仮称)」準備会の事務局を担って、活動をすすめています。