日本共産党

2004年8月16日(月)「しんぶん赤旗」

農業おこす

自治体と農家が協力

つくり手安心 消費者も安全


 安全な食料の国内生産は国民共通の願いです。中小農家を切り捨てる国の農業政策に対して、農家と協力して自治体が創意工夫をこらして農業振興に努力しています。


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みのりを前に稲の手入れに余念のない吉川さん=びわ町

「環境こだわり米」に助成

生産者の意欲を下支え

滋賀・びわ町

 滋賀県びわ町が今年からスタートさせた環境こだわり農産物奨励助成制度のコメづくりが、実りの秋を迎えようとしています。消費者に安全、安心の農産物を届け、琵琶湖の環境保全にも役立てようというとりくみです。

 化学肥料・農薬の量を半減させる環境にやさしい農業の推進で県は昨年、「県環境こだわり農業推進条例」を策定。今年から実施農家に反当たり五千円を助成する制度を始めました。

県助成金に上乗せして

 びわ町は県制度に加え土壌の改良、遅植え、除草剤も使わないなど、「さらに環境にこだわった農産物づくり」に県助成金の半額を上乗せする制度を県内で初めて実施しました。当面は稲作だけ。将来は他の農産物にも広げたい考えです。

 びわ町では、県の制度に七十九人の農業者がとりくみ、耕作面積は百十九ヘクタール。うち五十三人が七十七ヘクタールで町制度に挑戦しています。とりくむ人は町内の水稲農家の約二割に相当し、意欲の強さを裏付けています。

 稲穂が下がり始めた田の手入れに余念のない吉川三雄さん(54)もその一人です。「除草剤をやめて手で草刈り、土壌改良剤も入れ、化学肥料・農薬も半分以下にすると手間は二倍、三倍になる。お金で見ればプラスにはならんが、人の口に入るコメだから」と意気ごみを語ります。

 びわ町は日本共産党員町長の町。昨年末の町長選で橋本健町長が、住民の支持を得て二期目に入り、財政難のなかでも、「活力と創造性のあるまちづくりを」と環境こだわり農業をスタートさせました。

 制度の実現は、それまで数年間、町内の農業経営者会、コメづくり研究会が環境にやさしく、安全・安心の農産物を求める消費者の願いに応え、無農薬、有機米生産の実践をすすめていたことが背景にあります。

 吉川さんも十年前に会社を辞め、有機米生産と研究をすすめてきた一人です。「産直や学校給食で、『おいしかった。甘みがあるよ』という声を励みにね。でも経済の裏付けがないと、やって行けない。町はそれを下支えしてくれた」と話します。「生産者の努力を消費者に受けとめてもらったら、農業は未来がある」。輸入米の野放しで米価下落などの問題をあげながらも、吉川さんはそういいます。

明るく咲く「びわの華」

 町の環境こだわり米の愛称は、公募で「びわの華(はな)」に決まりました。「農業が厳しいといわれる今日ではあるが、環境こだわり農業に取り組むことによって、びわ町の農業が明るく華咲くことの希望と、秋に稔(みの)る田んぼ一面を埋め尽くす黄金色の華をイメージして」というのが選考の理由です。

 今年は天候に恵まれ、生育が早く、八月末から九月始めには、稲刈りも始まります。

  滋賀県・黄野瀬和夫記者


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メロン栽培農家・斉藤純孝さんと収穫を喜びあう小嶋さん(左)=聖籠町

町が全額価格保障

ニンジンからスタート 輸入ものに対抗

新潟・聖籠町

 新潟県聖籠(せいろう)町(人口一万三千人)では、昨年四月から町独自の農産物の価格保障制度を創設し、昨年、今年度とも五百万円の予算を計上。補助を受けた農家からは喜びの声が上がっています。

生産者価格割っている

 「聖籠のニンジンは色もよく、甘味も強くて品質がよい。でも不作のときは輸入ものが多く出回るし、豊作だとスーパーのいいなりの値段に買いたたかれる。何年も再生産価格を切っており、それを補うためにも助かっている」。こう話すのは、同町でニンジン、ナガイモなどを栽培する専業農家の藤井達博さん(54)です。

 同じく新保昇英さん(47)も「価格保障制度があるために安心して作れる。助かっている。でも制度に頼らないでやっていける農業に発展させなければ」と語ります。

 同町は新潟市から北に車で四十分ほどの、米や果樹、砂丘地園芸が盛んなところです。輸入農産物の急増による価格下落で農家経営が圧迫されていることから、園芸作物の維持拡大と安全・安心な農産物を供給するために制度を創設。とりあえず輸入ものが多いニンジンを対象に始めました。

 背景には、県の価格保障制度は市場平均価格の六割を下回って暴落した場合、六割以下の価格分は補てんされないことがあります。町の制度は六割以下でも実際の下落した販売価格との差額を全額保障。県の制度でも保障の上限が市場平均価格の九割までになっているうえ、六割以上の差額分のさらに80%の保障で、20%分が保障されないため、この部分も町が補います。

 聖籠町の価格保障制度は、基金の拠出では農家負担がなく、全額町負担です。県内で制度がある市町村は十市町村ですが、全額自治体負担のところはごくわずかしかありません。

党とともに農民連要求

 価格保障制度を強く働きかけてきたのは県農民連聖籠支部です。同支部員で県農民連副会長の小嶋忠一郎さん(82)は、三年がかりで毎年予算要求で日本共産党支部とともに実施を要求。党議員団も議会で要求したこともあり、昨年度から実現したものです。

 小嶋さん自身は、サクランボやモモ、ナシなど果樹畑を栽培する農家。以前、農民連と新婦人が共同する産直にイチゴを出荷したこともあり、毎年小嶋さんの畑で産直のサクランボ狩りが行われています。「サクランボの収穫の終わりころは、いつも輸入ものの影響で価格が下がるので価格保障制度の必要性を実感していた」といいます。

 町産業観光課の肥田野繁晴課長は「どう町の砂丘地園芸を推進・発展させるかが課題であり、今後は他の品目にも制度を広げていくことを検討しなければならない」と話しています。

 小嶋さんは「国の大規模農家切り捨て、輸入拡大政策のもと、町の重要産業である農業を守り、後継者をつくっていくためにも、この制度を充実させていきたい」と語っています。

 新潟県・村上雲雄記者



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