2004年8月16日(月)「しんぶん赤旗」
大学、高校を卒業した人たちの就職率は依然、最悪です。暑い暑い今年の夏。求職活動に汗を流す青年たちは、いったいどんな思いでいるのでしょう。都市部と比べて厳しい地方の一つ、福島県を訪ねました。
坂井希記者、福島県・町田和史記者
「実はこの二カ月ほど、ハローワーク(公共職業安定所)に行っていないんです」。福島市内で両親とともに暮らす川本幸平さん(24)=仮名=は、少し肩をすくめます。
他県の大学で経済学を学んだ川本さん。出身地である福島での就職を希望し、就職活動をしました。しかし、どこにも決まらないまま、二〇〇二年三月に卒業しました。以来二年半、求職活動を続けていますが、仕事は見つかりません。
「何社か面接も受けました。でも、何回やっても受からない」。もともと人と話すことがあまり得意でないうえに、何度も落とされるうちに、川本さんは、企業に連絡をとるのがこわくなったといいます。「就職雑誌や折り込み求人広告を見ても、企業に電話する気になれない。ハローワークには五月に行ったきりです」
つらい思いを抱えているのは川本さんだけではありません。ハローワーク前で、来所した青年に声をかけてみました。
耳にピアスをした男性(18)は、「就職が決まらないまま高校を卒業し、今年の四月から週三回のペースでハローワークに来ている」といいます。「資格がないと応募もできない会社が結構ある。面接も五、六社受けたけど決まりません」。まわりの友だちはどうかと尋ねると、「自分みたいのがいっぱいいますよ。ハローワークで同窓会みたいになります」。気晴らしに遊んでみても「仕事がない不安がずーっとある」といいます。
市内に住む男性(26)は、簿記やビジネス検定の資格を生かしたくて仕事を辞め、派遣社員として働きながら正規の仕事を探しています。「三、四カ月前から定期的に通っているけど、なかなかないですね。予想はしていたけど本当にないです」。資格を持っていても難しいのかと聞くと、「『資格があっても実務経験がないとダメ』といわれるんですよ」。一つクリアしてもまた別のハードルが。若者にとっては、あまりに厳しい就職戦線です。
都市部と比較しての地方の厳しさが、福島でも現れています。
基幹産業だった農業は、生産額、農家戸数ともに減少の一途です。工業用地を造成したものの工場誘致に失敗。ぺんぺん草が生えている状況です。大型店はどんどん出店していますが、正社員の採用はほとんどありません。県外の学校を卒業しUターンしてきた若者の受け皿がなく、関係者は若者の雇用対策に苦慮しています。
月間有効求人倍率は、全国平均〇・六九倍に対し福島県は〇・五七倍です(二〇〇三年度)。
「企業は最近、即戦力を募集しています。若い人はなかなかそういう技術がないので、応募できないとか採用されないことがある。これはちょっとつらい部分ですね」。ハローワーク福島の五十嵐倫夫次長は、若者の就職が依然厳しい原因をこう語ります。求人数が前年を上回った状態で推移しているなど、景気回復の“兆し”は感じられるといいます。ただ、求人の約三割は派遣や請負など不安定雇用。手放しで喜べる状況ではありません。
現状を変えるカギはどこにあるのでしょうか。五十嵐さんは「求人の総量を増やすこと。また、企業も、正社員を採用し、人を中で育てるという考え方を持っていただくとありがたい。それが技術の継承にもなるわけですから」と指摘します。
「そういう声を、チラホラの『チラ』くらいはきくようになってきた」と五十嵐さん。「若者に仕事を」「正社員として人間らしく働きたい」という若者の声を大きくひろげていくことは、日本の経済や社会のまともな発展にもつながっているのです。
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4日(水)
久しぶりにハローワークに行ってみた。検索機で探してみたけど、派遣の仕事が多い。「経験者のみ」「短期雇用」が条件の求人も目につく。やっぱり厳しいや。
6日(金)
今日も特に何もせずにいたら、父に「お前、早く何とかしろ」といわれた。
7日(土)
昨日父にいわれたので、バイトでも募集していないか、自転車で近所のコンビニを回ってみた。募集しているところは結構あったけど、面接を受ける場面を想像するとどうしても踏み出せない。ため息ついて帰った。
8日(日)
夜、誘われて飲み会に参加。気晴らしになったけど、就職に苦労していると話すと「どんな仕事がしたいの」。「これといってない」と正直にいうと「まずは何でもやってみることだね」。わかってるんだけどね…。
10日(火)
床屋に行ったほかは、家の手伝いをしたくらい。こんなふうに毎日が過ぎていく。親からは「甘えてる」といわれるし、自分でもあと一歩の勇気が大事というのはわかってるんだけど…。前に進めたらいいな。
Q パートで働いて八年。会社の事情で、勤務時間が六時間から四時間に短縮され、月五、六万円しか収入がなく、暮らせません。もともとは正職員でしたが、体調をこわしたことからパートに。労組に相談したもののだめ。生活できる勤務時間と正職員に戻してほしいのですが…。
(民男。26歳。埼玉県)
A 民男さんが労組へ相談に行き、本紙に相談の投稿をしてくれたことを私は大いに評価しています。なぜなら、いまの青年の労働実態を生の声で伝えてくれているからです。新聞を見ても、民男さんのように「生活できる賃金をもらえない」という実態について、あまり書かれていません。実際はアルバイトやパートの多くが労働条件の改善や正職員になることを強く望んでいると思います。
私は商売をやっていますが、銀行の貸し渋りや消費税改悪などで苦しんでいます。しかし、私も商売仲間も「つぶされてたまるか」と周囲の人たちに実態を伝え、政治に対して自分たちの声を上げています。この行動が現状を変えていくと信じています。
自分から行動を起こさなければ、現状は何も変わりません。職場に労組があるのなら、ねばり強く何度も話に行きましょう。労組は、労働者の権利を守るためにつくられた組織なのですから。
しかし、一人ではまた受け入れてもらえないかもしれません。職場に同じ境遇の人、理解ある人はいませんか。同じ要求を持った仲間を集め、声を大きくしていけば、労組も話を聞かざるを得なくなると思います。まずは周りの人たちに自分の要求を話してみましょう。それは、ほんの少しの勇気があればできることです。
東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。