2004年8月7日(土)「しんぶん赤旗」
広島の平和記念式典での小泉純一郎首相のあいさつは二〇〇一年以来、四回目ですが、回を追うごとに短くなっています。しかも今年のあいさつは、昨年のあいさつの段落を入れ替えただけ。被爆地に足を運びながら、とりわけ被爆者にいったい何を訴えたいのか、まるで誠意の感じられないものになりました。
その内容も事実にまったく反しています。
首相は今年も、「被爆者の方々に対しては、これまで…総合的な援護施策を充実させてまいりました」「被爆者の実状を的確に反映させながら、援護施策の推進に誠心誠意努力してまいります」などとのべました。
それでは原爆症認定集団訴訟が相次いでいるのはなぜでしょうか。あまりにきびしい認定に対し、被爆者がやむなく裁判に立ち上がり、度重なる判決で政府の機械的対応が裁かれながら改めようとせず、高齢化が進む被爆者の願いを踏みにじっているのは、政府ではありませんか。
首相は「核兵器の廃絶に全力で取り組んでまいります」とものべました。毎年繰り返すこの言明こそ、全世界をあざむくものです。
来年の被爆六十周年を前に、核兵器保有国が二〇〇〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で確認された核兵器廃絶の「明確な約束」をどう果たすかが、国際的な課題となっています。
そのときに日本政府は、核兵器使用も辞さないとするブッシュ米政権の「先制攻撃」戦略を支持し、小型核兵器など「使える核兵器」の研究・開発を容認しています。国連総会では「明確な約束」の実施を迫る決議に棄権するなど、およそ「唯一の被爆国」の名にそぐわない姿勢をとりつづけています。
さらに首相は「今後とも、平和憲法を順守する」とものべました。これほどの大ウソもありません。自民党結党五十周年の二〇〇五年の改憲案とりまとめを党に指示し、しかも「集団的自衛権の行使ができるように憲法を改定すべきだ」と明言するなど、「順守する」どころか、平和憲法の根幹ともいうべき九条改定をめざしているのが小泉首相です。
式典では、日本政府に憲法擁護を迫り、核兵器廃絶を訴えた秋葉忠利市長の「平和宣言」や、被爆の悲惨さや平和の尊さを世界に伝えていきたいという小学生の「平和への誓い」には、参列者から大きな拍手が送られました。
ところが首相あいさつへの拍手はまばら。被爆地の市民からも、世界の核兵器廃絶の流れからも孤立した小泉首相の姿があらためて示されました。
山崎伸治記者