日本共産党

2004年8月5日(木)「しんぶん赤旗」

参院本会議質問、議院運営から小会派排除

“良識の府”で何が

国会法に基づく比例配分こそ


 参院選を受けて開かれた臨時国会で、参院では、日本共産党や社民党が本会議で質疑ができなかったり、議会運営への参加で大きな制約を受ける事態が起こっています。“良識の府”といわれる参院でいったい何が――。


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扇千景参院議長(右端)に申し入れる(右2人目から)吉川春子参院議員団長、又市征治社民党幹事長、井上哲士参院国対委員長=4日、国会内

 参院選後初めての論戦となった三日の参院本会議。小泉首相をただす場として重要な機会でしたが、質問に立ったのは自民党と民主党だけ。わずか一時間で終了しました。共産党、社民党も含めて四党が質問に立った衆院と比べ、あまりに対照的でした。

 議院全般の運営について協議し決定する重要な役割をになう議院運営委員会も、今国会では自民、民主、公明の委員だけとなりました。

 予算委員会でも、今国会では運営を協議する理事会への出席(オブザーバー参加)について認められていません。

 日本共産党は参院選で四百三十六万の比例票を獲得、社民党は二百九十九万の比例票を獲得しています。共産、社民両党の意思を本会議や委員会の運営に反映させないことは、両党に託された民意を結果として切り捨てることです。国民主権と議会制民主主義の原則からみても問題です。

議運委員

 もともと、委員会の委員配分は、国会法四六条で「各会派の所属議員数の比率により、これを各会派に割り当て選任する」とされています。同規定は一般に、「委員会の構成は議院内の各会派の勢力の比例的縮図であることが要請される」(有斐閣『法律学全集』五巻)、「少数会派に対しても各委員会に参加し得る地位を保障することになる」(ぎょうせい『現代行政法学全集』十一巻)といわれるように、民主的な委員会構成の基本となります。

 この規定どおりに、議運委員二十五人を各会派の議員数に応じて比例配分すれば、共産党、社民党にも委員が割り当てられます。

 ところが参院では、「議院運営委員については、所属議員十人未満の会派には割り当てない」とした一九五三年三月の議運委員会の「決定」があるとして、共産、社民両党に委員を割り当てないとしています。実に五十年以上も前の「決定」が持ち出されています。

参院改革

 しかし、参院ではこの間、参院改革として、小会派の議会運営の関与や質疑権の保障について全会派が議論を積み重ねてきました。そのなかでは、「小会派に配慮する等柔軟な委員会運営がなされるように努めるべきである」(一九九六年十二月)ことが全会派の合意となっていることも事実です。

 今回問題となっているような小会派の活動を制約する議会運営は、こうした参院改革をめぐる各党協議の積み重ねからみても、真っ先に検討すべき課題です。

 持ち出されている五三年の「決定」も、同年三月の「バカヤロー解散」の際、暫定予算を審議するために開かれた参院緊急集会の最終日に多数で与党が押し切ったものです。「小会派において不利になるということが、むざむざわかる立場でこういうことを多数をもって押し切って決めることには反対である」などの強い反対意見が表明されました。

 このような五十年以上も前の「決定」にこだわるよりも、参院の民主的な改革をより進める立場に立つことがいま求められます。

本会議質疑

 本会議質疑についても、議運委員をもたない会派には、通常国会での施政方針演説と決算報告に対するもの以外には本会議質疑を認めないという運営が行われてきました。

 三日の参院本会議で共産、社民両党に質疑時間が保障されなかったのも、この運営を理由にしたものでした。衆院では議員活動にたいするこの種の制約はありません。

 与党側は、小会派排除の理由に議会運営の「効率化」を挙げています。しかし、小会派を議院の運営から排除することは、特定政党による議会運営の独占にもつながり、国会法と議会制民主主義の精神からみて問題をはらんでいます。

予算委理事会

 参院予算委員会で、小会派に理事会出席を認めないのは、「理事の割当のない交渉会派の委員については、委員長がその都度許可して出席及び発言を認める例である」とした一九六五年一月の理事会「決定」があるためとされます。十人未満の会派は、委員であっても理事会に出席し、発言するなどのオブザーバー参加を認めない運営がされてきました。

 しかし、理事は、各委員会で所属会派の代表として、委員会運営を協議する重要な役割を担っており、理事会から小会派を排除するのでは委員会の民主的運営は保障されません。他の委員会では、十人未満会派の委員が理事会にオブザーバーとして出席、発言することが認められています。予算委員会は、国の予算や国政の重要問題について審議する場であり、このような運営の予算委員会のあり方はとりわけ問題です。

 本会議質疑の問題も、予算委員会の問題も、いずれも参院改革の流れをふまえて、この際、よく検討することが求められます。

 日本共産党はこれらの問題を一貫して批判し、これまでも是正を求めてきました(別項)。今回も、社民党とともに、扇千景参院議長や溝手顕正議運委員長、中曽根弘文予算委員長などに申し入れています。議会制民主主義を発展させる立場で参院改革をすすめることが強く求められます。


 国会法第四六条〔委員の各派割当選任〕 常任委員及び特別委員は、各会派の所属議員数の比率により、これを各会派に割り当て選任する。


民放番組でも「いいのか?」

 3日放映のテレビ朝日系「報道ステーション」で、コメンテーターの加藤千洋朝日新聞編集委員は「国会論戦といっても、参議院選挙で10議席とれなかった野党の共産党と社民党は、参議院は本会議で質問できない。両党で比例票を合わせると700万票以上とっている。民意の反映ということからいうと、これでいいのかなという感じがする」と指摘しました。

共産党、是正へ努力

 日本共産党は、小会派の議会活動を制約する動きを一貫して批判し、是正のために取り組んできました。一九六八年には、いま問題となっている議運委員の配分問題をはじめ、参院の民主的運営を求めて議長と議運委員長に申し入れています。

 最近では三年前の参院選後、自由党、社民党などが十人未満会派の問題で運営の見直しを求めたときも、先送りではなく議運委員会でただちに見直すよう求めました。

 参院改革協議会では、二〇〇二年十一月二十日、(1)議運委員算出方法につき、十人未満の会派への足切り要件を撤廃する(2)予算委員理事懇談会へのオブザーバー出席、討論ができるようにする(3)重要案件について本会議で発言できるようにする―と主張しています。




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