日本共産党

2004年8月2日(月)「しんぶん赤旗」

「被爆の語り部」若い世代に

“平和の案内人”にと研修やシンポ


 一九四五年八月。六日に広島の街、九日に長崎の街が米軍機の投下した原爆の熱線、爆風、放射線で破壊されました。被爆者が、この惨状を語り伝え、「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ」を訴えてきました。いま、語り部の継承が課題になっています。被爆地から、その取り組みを報告します。


二・三世から広く

汗ぬぐいフィールドワーク 広島市

 夕やみの迫る広島市中区の平和記念公園。七月二十八日、碑や遺跡を前に、その意味や被爆者から学んだ体験談などを織り交ぜ、熱心に説明して歩く一団がありました。

 流れる汗をぬぐいながら交互に語り、お互いの説明を補うのは大中伸一さん(54)と徳永聖(さとし)さん(44)。ともに被爆二世、語り部としての活動はそれぞれ二十年、十年を超えます。

 碑めぐりの案内人「ピースナビゲーター」を養成する講座のフィールドワークです。三年前、被爆体験の継承を重点課題に結成された広島県被爆二・三世の会(尾野進会長)が今年四月から取り組んでいるものです。

 この日は、原水爆禁止二〇〇四年世界大会「動く分科会」の碑めぐりで初めて講師をつとめる青年(29)が受講し、碑と遺跡を九カ所、約八十分かけて説明のポイントを学びました。毎晩二時間、説明のための資料づくりに励む青年に、大中さんは「資料を見ながらでいい、思いを込めて話をすればいいんだよ」とアドバイスしました。

 広島県被団協(金子一士理事長)は昨年度、訪れる修学旅行生の激減で半減したものの約二万三千人に語り継ぎました。派遣した講師は、のべ五百二十九人。しかし、語り部の被爆者は病と高齢化が深まり、担い手の養成は急務の課題です。

 「被爆体験のない世代が追体験として譲り渡す運動を草の根から展開していきたい」と抱負を語る大中さん。語り部として十八年になる金子理事長(78)は「被爆者はいつの日にかいなくなる。困難はあろうとも、平和な社会を展望し語り継いでほしい。二十一世紀の未来は君たちのものです」と期待を寄せています。

 日本共産党の広島市議で二期目になる村上あつ子さん(49)も今夏、初めて碑めぐりの講師に踏み出します。小学五年のとき、父がポツリと被爆者であることを明かし「原爆と平和は私の原点」と歩んできた村上市議。昨年来、議会の合間をぬってフィールドワークを重ね準備してきました。

 前出の青年は「語り部を被爆者や二・三世に任せているだけでは平和への声は広がらない。多くの人にヒロシマを知ってもらい、平和について学ぶきっかけになってくれれば」と話しています。中国四国総局 酒井慎太郎記者

 語り部の問い合わせ先・広島県被団協082(296)0040


講座募集に3倍の人

インターネット、外国語でも 原爆の恐ろしさ継承へ 長崎市

 長崎市の被爆者の平均年齢は七十一・七歳。被爆の実相を語り続けている被爆の語り部の平均年齢は七十三歳です。核兵器廃絶まで、世代を超えて求められる被爆の実相を語り伝える運動はいま、「継承」という課題に直面しています。

 「あなたも被爆の実相を伝える平和案内人になりませんか」―。長崎市の外郭団体・長崎平和推進協会が四月に呼びかけた「ボランティアガイド育成講座」には、一回目にもかかわらず定員の三倍、十九歳から八十四歳までの市民九十一人が応募しました。

 五カ月間かけて、原爆被害の概要や原爆後障害、被爆建造物・碑めぐりのポイントを学び、実習などをして、ガイドや語り部として活動してもらおうというもの。長崎市が、これを支えています。

 また新しい試みとして、修学旅行で長崎にこられない県外の小・中学生や離島の人たちを対象に、インターネット会議システムを使い、被爆体験を映像を通して聞きながら対話する「ピースネット」や、外国語で平和を語る講座も具体化されています。

 同協会の永田博光事務局次長は、「原爆被害の事実をねばり強く知らせ、それを伝えるボランティアをたくさん育てることが、継承運動を広げる」といいます。被爆の継承を支える、しっかりした体制づくりとして期待されています。

 長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長は、「核実験が繰り返され、小型核兵器開発が問題になるようなときだからこそ、原爆の怖ろしさを語り継ぐことが求められている。被爆者が歩んできた道、国の対応など原点にかえって考えるとき」と継承の重要性を認め、被爆者団体の運動としても語り部の研修や、若者らを対象にシンポジウムなどを計画しています。

 五十二年間被爆体験を語り続けてきた内田保信さん(76)の話 被爆体験を語るとき、「願いは運動を引き継いでもらうこと」と必ず話します。若者たちは「はい」と応えてくれ励まされます。自治体も被爆者団体も、若い世代を育てる対策や組織化に、もっと力をいれてほしい。二世や三世の語り部が仲間を誘い、私たち被爆者と話し合いをもつことが残された道だと思います。長崎県 田中康記者


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