2004年7月27日(火)「しんぶん赤旗」
【ベルリン=片岡正明】ドイツの自動車大手ダイムラークライスラー社の経費削減計画に関する労使交渉で二十三日に妥結した合意は、一部の職場では労働時間延長を許容しながらもドイツ金属産業の週三十五時間労働制を守り、解雇計画などを断念させる内容となりました。
金属産業労組(IGメタル)のフーバー副委員長は「この結果は労働時間を一律に延長しようとした人たちに打撃を与えた」と評価しています。
会社側が要求していたのはメルセデス生産部門の経費削減策として「賃金調整なし週四十時間への労働時間延長」やバーデンビュルテンベルク州の工場で三十年来実施されている勤務時間一時間ごとに五分間の休憩時間の廃止など。経営者側は経費削減ができない場合、同州ジンデルフィンゲン工場の三万人の労働者中六千人を解雇すると脅迫してきました。
これに対し、労働者代表組織のダイムラークライスラー総事業所評議会やIGメタルが反対に立ち上がりました。十五日には全国で六万人が時限ストを実施。十七日にはジンデルフィンゲンなど二工場で一万三千五百人が時間外労働を拒否しました。
合意内容は、(1)二〇一二年まで八年間の職場保障(2)二〇〇六年の2・8%の賃上げの中止(3)技術者・研究部門の労働者二万人の週三十時間から週四十時間の柔軟な労働時間制導入(4)非生産部門労働者の週三十九時間労働(5)一時間ごとの五分間休憩時間を年二日間の休暇に代える(6)経営陣の給与10%カットと職制三千人の給与一部削減(7)派遣労働者の数を二千五百人までに限定する―など。
労働者側の予定の賃上げをあきらめるなどの条項もありますが、一律の週四十時間労働などの経営者側の要求が否定されたのが特徴です。
ドイツでは六月下旬に電気機械大手のシーメンス社の二携帯電話工場で雇用確保のため週四十時間労働を受け入れたことをきっかけに、企業側から労働時間延長の攻撃が活発化。フォルクスワーゲン社、デパートのカーシュタット社、食品産業のネスレ社などで労働時間延長問題が浮上しています。