日本共産党

2004年7月26日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

路面電車生かし街づくり


歴史ある港町の観光スポットに

富山 JR線を路面電車化 市民参加“生活の足守って”

 創立八十周年を迎える富山市のJR富山港線。全国ではじめての試みともいわれる鉄道からの路面電車化がすすんでいます。市民の期待とともに、いくつかの課題も。路面電車化の動きを追ってみました。

 富山港線は、JR富山駅から北へ約八キロメートル、富山湾に面する岩瀬地域に向かってまっすぐにのびています。岩瀬地域は、江戸時代後半には日本海側有数の北前船(バイ船)の港町として栄えました。一九二〇年代(大正末〜昭和初期)、この岩瀬の人たちが中心になり最初は貨物として富山港線の前身・富岩鉄道を開業。戦中に国有化されました。国鉄の分割・民営化で存続問題が浮上したときも、住民が運動し、富山港線を守ってきた歴史があります。沿線住民にとり「富山港線は生活に欠かせない路線」です。

 富山市は〇三年、〇六年度に向けた富山港線の路面電車化を発表。新幹線建設計画にあわせたもので、将来的には高架化されたJR駅の下をくぐり、既存の市内電車とつなぐとしています。

住民アンケート

 発表当初、運営計画は白紙に近い状態でした。「北陸線・ローカル線の存続と公共交通をよくする富山の会(略称・公共交通をよくする富山の会)」は、富山港線の探訪や沿線住民などにアンケート調査を実施。昨年のつどいでは、「路面電車を利用して、富山市の南部、西部等の地域からもこの北部地域に足を運んでもらえるような、歴史と文化を活用したにぎわいのある町づくりが必要」「いまの私たちはマイカーで生活することに慣れきっていて、路面電車にしたから利用が増えるというわけではないと思う」「高齢化がすすみ、低床化が必要」などの意見が出されました。

 同会は、路面電車化に向けて、経営問題では、JR西日本が運営主体に参加しない場合、路線の施設・車両など運行にかかわるいっさいを無償譲度するよう求めることを要求。富山市がJRと交渉し、敷地・線路などが実質無償譲渡されることになるなど、いくつかの提案が取り入れられています。また、市民のくらしにしっかりと根づくものにするために、「市民委員会」の立ち上げや、地元新聞紙上での意見交換など積極的な市民参加の場をつくることも提案しています。沿線地域では、住民の運動体が結成された校区もあり、学習会なども開いています。

 富山市は、ことし四月に路面電車を運営する第三セクターの新会社「富山ライトレール株式会社」を設立。「公設民営」方式で、富山市が施設整備を行います。市民から寄付を募ったり、愛称公募も計画。沿線にある国指定重要文化財の岩瀬の森家(旧回船問屋)や中島閘門(こうもん)などの文化施設の魅力を高め、全体を観光資源にして地域の活性化をはかりたいとしています。

利用者から意見

 一方、計画を急ぎすぎることから、ルートを新設しようとする地域の住民の反発を招く事態も。

 公共交通をよくする富山の会の世話人・酒井久雄さんは、「行政側は、公共交通重視をいいながら、道路交通に対する遠慮があるように思える」と指摘。「行政がもっと住民の声を聞き、住民のほうからも声を伝えていくことが大事だと思う。また、将来的に市内電車と接続するまで、乗り換えの不便さの解消や、統一した運賃体系を利用者の立場から考えていかなければならない」などと話しています。富山県・中本明子記者


人に優しい低床車導入

鹿児島 同一料金で乗換え自由 “路線延長を”の声うけ検討も

 鹿児島市を走る路面電車は市営。走り始めたのは一九一二年、私電を二八年に市が買収したもので、全国で数少ない公営です。料金は百八十円、乗り換えても追加なし。年間一千万人近くが利用し、市民に親しまれています。

 今、路線延長も検討されています。谷山線約五百メートル延伸でも補償費を除き三十六億円と見込まれています。国の助成制度は都市開発誘導が主眼のためか路線延長で経費の大きな部分を占める用地取得や補償への助成はありません。

 電車の利用者は六三年の年間約四千四百六十七万人を最高に、以後減少。経営は悪化し、“電車は交通の邪魔者”キャンペーンもあり、日本共産党や関係住民の反対にもかかわらず十九・三キロあった線路の清水町線と伊敷町線を廃止し、十三・一キロ、谷山線と郡元線だけになり、利用者はさらに減りました。

 桜島の爆発による降灰がひどかった時期は夏の車内は「蒸しぶろ」となり、いよいよ人気が落ちましたが、日本共産党市議団が調査もし、冷房化を提起し、いまは快適です。市街地で空を見上げると網の目のように架線が張られていたのもセンターポール方式で街の景観もすっきり。古い電車の更新では、障害者や高齢者が苦労せず乗り降りできる低床電車も導入、今年で五十四両中九両が低床に。経営もいまでは広告収入の約一億円がそのまま黒字で市バスの赤字を補っています。

 敬老パスの継続を求める連絡会代表の山中光一さんは言います。「環境にやさしく、車の増加を抑え交通混雑緩和にも大きな効果が見込まれます。国・県・市はこんなことにこそ力を入れてほしい」鹿児島県・尾上輝海記者


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