2004年7月21日(水)「しんぶん赤旗」
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休日に職務とまったく関係ない場所で「赤旗」号外などを配布した社会保険庁職員・堀越明男さんが「国家公務員法、人事院規則違反」として不当逮捕・起訴された事件の初公判が二十日、東京地裁(中谷雄二郎裁判長)で開かれました。弁護側は違法捜査にもとづく、公務との関連で違法性のない差別的な起訴であるとして公訴棄却を強く求めました。
この事件は、堀越さんが昨年の総選挙において休日に職務と関係ない場所で、一市民としておこなった「しんぶん赤旗」号外配布にたいし、選挙から四カ月もたったことし三月、警視庁公安部が自宅や日本共産党千代田地区委員会など六カ所を家宅捜索。その二日後に東京地検が起訴したもの。
初公判では検察側の起訴状朗読に続き、堀越さんが「市民としての当然の権利を行使したことを犯罪とするものであり、憲法に違反する不当なもの。直ちに起訴を取り下げるべきだ」と意見陳述しました。
弁護団は約三時間にわたって起訴状に対する意見(別項)を陳述しました。
弁護団は、国家公務員法を無限定に適用し、政治的意思表明の自由を全面的に奪うことは、集会・結社・表現の自由を定めた憲法二一条に反し、具体的理由のない表現の自由の規制を全面的に禁止した国際人権規約にも反するものだ――と強調しました。
さらに、「国家公務員であるがゆえに政治的意思表明を全面的に禁じるような、それも刑事罰をもって禁じるような野蛮な制度が、憲法をはじめとする近代人権法制の下で許されるのか」と強く批判しました。
そのうえで、(1)張り込み、尾行、ビデオを使った撮影など警察の異常な違法捜査にもとづいた起訴である(2)ビラ配布は公務との関連で実質的な違法性がなく起訴価値のない事件だ(3)「官庁のぐるみ選挙」は野放しにしながら、日本共産党を支持する国家公務員の「行為」をねらった差別的起訴である(4)国家公務員法や人事院規則が禁止する「政治的行為」かどうかは職員の所属長の判断が優先されるが、今回は公安警察と検察庁が独断で判断し、訴訟条件を欠いている――と詳細に論述。公訴の棄却を求めました。
弁護団は公判で、堀越さんのビラ配布を隠し撮りしたビデオテープやその解析結果報告書などの全面開示を請求。裁判長は一部の開示を命じる決定をしました。また、堀越さんの「東京民報」号外の配布が人事院規則で定めた「政治的目的」のどの罰条に違反するのか、釈明を求めたものの、検察側は次回公判で答えるとして、その場で回答できませんでした。初公判に先立ち、「国公法弾圧を許さず、言論・表現の自由を守る会」の会員百二十人が東京地裁前で公訴棄却をもとめ宣伝行動をしました。
「国公法弾圧を許さず、言論表現の自由を守る会」は、国公法弾圧事件の初公判を終えた二十日夜、「平和と労働センター」(東京・千代田区)で報告集会を開き、百三十人が参加しました。
記者会見後、弁護団とともに会場に到着した堀越明男さんは、「公安警察による、憲法に対する弾圧事件を絶対に許すことはできない。このたくらみと正面からたたかい、無罪を勝ち取るまで、みなさんとともにたたかい抜きたい」と決意を表明。参加者から大きな拍手を受けました。
弁護団の石崎和彦主任弁護士が公判での意見陳述の内容を報告。「この事件が有罪とされるなら、公安警察が容疑もないのに、国民を監視することが合法とされてしまう。どれだけ多くの国民に知らせるかに、裁判の将来がかかっています」と訴えました。
堀越氏の兄・道男さん(党茨城県水海道市議)も出席し、「この弾圧事件を突破することなくして、新しい社会をつくることはできません。いつでも裁判にかけつけ、弟とともに歩みたい」と訴え。公判を傍聴した日本国民救援会の山田善二郎会長、日本共産党千代田地区委員会の加藤勝義さんの二人が、「迫力のある弁論で胸が躍るような気持ちになった」、「正義の論陣は絶対に勝利すると確信しました」と感想と決意をのべました。
事件の舞台となった東京・中央区や社会保険庁職員OBをはじめ、各地の「守る会」が、運動の経験を報告。九月の第二回公判にむけ、運動をさらに広げることを確認しました。